市の中心部を“巨大マシン”が掘削!?大雨から守る「巨大トンネル」 着工を前に内部公開

全国各地で大雨による被害が後を絶たない中、新潟駅の周辺地域を浸水から守るため、雨水を流す地下トンネルの工事が始まった。県都の都市機能を維持するための大規模工事。その主役は、まるで“巨大なモグラ”のような掘削機だ。

巨大トンネルで大雨から街を守る!

「3・2・1…発進!」

7月6日、司会者のかけ声で、式典に参加した地元住民などが一斉に手元のボタンを押すと、巨大な筒状の掘削機「シールドマシン」がゆっくりと回転し始めた。

2020年3月に着手された「鳥屋野・万代・下所島配水区雨水バイパス管下水道工事」は、いよいよ地中のトンネルを掘る作業に取りかかる。

地下トンネルは、信濃川に近い新潟市中央区幸西4丁目のかつて地方気象台があった位置から、新潟駅南の鐙西1丁目までの道路に沿って、地下20mに建設される。全長は2.5kmだ。

トンネルに雨水が集められ、新潟駅を中心に約5万人が生活するエリアの浸水被害を軽減させる計画で、1時間に50ミリの激しい雨にも対応する能力を持つ。

今回の工事区域に該当する「鳥屋野・万代・下所島」の新潟駅周辺地域は、1998年8月の大雨で1時間に最大97ミリの豪雨に見舞われ、床上浸水が299件・床下浸水が1659件発生した過去がある。

新潟市東部地域下水道事務所 山口貴史 所長:
気候変動で全国的にも災害が多発している中で、新潟市も海抜0m地帯が非常に多い。新潟駅周辺という都市機能が集積している地域の安心安全な暮らしを守るため、しっかりと事業を進めていきたい

都市機能の安全確保のため、トンネル工事の主役となるのが掘削機のシールドマシンだ。

巨大なマシンは、約2年半をかけて地下20mまで掘り進めた縦穴の底にあった。

縦穴

真っ白な筒状のシールドマシンは、高さ4.1m、長さ7.4m。内径3.5mのトンネルを一日に約10m掘り進める。“巨大なモグラ”をイメージしてもいいだろう。

シールドマシン前方

進行方向に付いているたくさんの刃を回転させながら地中を掘削し、後方ではリング状に輪切りしたコンクリートのパーツで壁を組み立てていく。

シールドマシン後方

中央の少しへこんだ部分は、いわば関節のような役割を果たし、曲がることもできる。

シールドマシン中央

シールドマシンを使ったこの工法は、地上への影響が少ないという大きな利点がある。

新潟市東部地域下水道事務所 山口貴史 所長:
発進基地と到達基地という2カ所のみを地上から掘り、地下では長距離・急カーブのトンネルを工事する。地上での工事が限定的であるため、交通の影響などを最小限にするメリットがある

新潟市東部地域下水道事務所 山口貴史 所長

昼夜2交代制で行われる工事。1回の作業にあたる人員は5~10人だ。

トンネルの第1期工事は2025年までで、2035年にはトンネルを掘り始めた新潟市中央区幸西にポンプ場が建設され、雨水は信濃川に流されるようになる。

新潟市中央区幸西

最終的な完成はまだ先だが、出来上がった部分から順次、貯留施設として降水の受け皿となり、浸水被害軽減の効果を発揮していくという。

県都・新潟市の都市機能を大雨から守る大規模工事。ポンプ場の建設費を除く最終事業費は、118億円と見込まれている。