犯罪心理学者に聞いた騙される“メカニズム”と“対策” 特殊詐欺被害の防止へ「誰の電話でもお金の話は全て疑う」

全国で相次ぐ特殊詐欺の被害。新潟県内では2023年、75件・1億106万円(5月末現在)の被害が確認されている。一体、なぜ人はだまされてしまうのか…そのメカニズムと対策を犯罪心理学者に聞いた。

今年最大約6000万円の被害も…

「私たちが冷静な時に聞けば「それはおかしいだろう」と疑えるが、犯人はまず冷静さを失わせる。冷静でない時にそれを聞くと、人は騙されてしまうということ」

こう話すのは、犯罪心理に詳しい新潟青陵大学の碓井真史教授だ。

新潟青陵大学 碓井真史 教授

全国で相次いでいる特殊詐欺による被害。新潟県内では7月4日、上越市に住む60代女性が実在する通信事業者を名乗る電話で騙され、3カ月間にわたり80回計約6000万円を振り込んでいたことが分かった。

冷静に考えれば異変に気付くものの、なぜ特殊詐欺被害は後を絶たないのか…

新潟青陵大学 碓井真史 教授:
まずは、人は“信じることが基本”だということを覚えておきたい。騙されたという詐欺の報道を聞くと、なぜ騙されたんだと私たちは思うが、「新潟県警察の誰それです」とか電話がかかってきた時に、「あなたは本物ですか」という会話は普通しない。人間は信じることが基本。普段はそれでうまくいっている。ところが、その信じる心を悪用する人がいるんだということを忘れてはいけない

碓井教授は警察や行政職員など実在する事業者を名乗る相手から危機感をあおる電話がかかってきて、焦ったり、冷静さを欠いたりする状態に陥ると、人間は本能的に即座に行動を起こす傾向にあると言う。

新潟青陵大学 碓井真史 教授:
「警察」と聞いただけで多くの人はちょっと慌てる。そこで「事故」という言葉を聞くと、さらに冷静さを失っていく

新潟青陵大学 碓井真史 教授:
「きょう、すぐにお金を送らないと、子どもや孫が大変な目に合う」という、危機的な状況をつくり出し焦らせる。冷静さを失っている人は自分が冷静さを失っているとは分からない。焦っている時にすぐに行動してしまうというのも、実はこれも生物としては正しい行動。今すぐ300万円がなければとんでもないことになると思わせてしまえば、すぐにでも300万円を持ってこようとするのが人間なのだということ

そんな人間の心理を悪用して金をだましとる特殊詐欺。

誰からの電話でもお金の話が出たら絶対に疑う!

被害に遭わないために、碓井教授は実在する事業者でも警察などの行政機関からでも、誰からの電話でも「お金の話しが出たら、全て疑う」ことが一つの対策になると提唱する。

新潟青陵大学 碓井真史 教授:
「落ち着きましょう」と言うのもあまり意味がない。「怪しい人にはお金を送るな」というのもダメ。怪しいと思われないようにやるので。だから、怪しいと思わなくても「お金を送れ」と言われたら、全部ちょっと待つ。そして誰かに相談する。そう自動的に考えることが必要だと思う

大切な資産を守るためにも、家族や近所の人など身近な人と互いに相談しやすい環境をつくることも重要だ。

新潟青陵大学 碓井真史 教授:
電話が来て「こうで、こうなんだよね」という話をした時に、第三者が聞けば「ちょっと待って、それおかしくない?」と思える。世間話のような感じでいいので、色んなことを人に話すことができる、会話することができるという人間関係を保ち続けることが大事。詐欺に遭うような人は愚かな人だとみんなが考えてしまうと、話しづらくなってしまう。どんな賢い人でも被害に遭うことはある。だから、私たちは互いに助け合って、良い人間関係を築いていきましょうと考えることが大事