気象災害の最前線を描く水10ドラマ「ブルーモーメント」 SDMは実在する?気象予報士に聞いた気象庁の裏側

4月から始まった水10ドラマ「ブルーモーメント」。甚大な気象災害によって脅かされる人命を守るべく、知恵と知識を駆使して現場の最前線で、命がけで救助に立ち向かうSDM(特別災害対策本部)メンバーの奮闘物語だ。出演者である山下智久さんが演じるのは、気象庁気象研究所の研究官であり報道番組のお天気コーナーに出演する晴原柑九朗(はるはら・かんくろう)。そこで、ドラマ内で描かれる気象現象などを、NST News タッチの石黒菖気象予報士に伺いながら天気や気象に関わる知識を深めていきたい。

NST News タッチの石黒菖気象予報士

SDM(特別災害対策本部)は実在する?

Q ドラマではSDMのメンバーが奮闘するが、これは実在する組織なのか

A 名前は異なりますが、似た組織が実在しています。

2018年5月に、気象庁の職員で形成されたJETT《気象庁防災対策支援チーム》(JMA Emergency Task Team)が設立されました。国土交通省の緊急災害対策派遣隊(TEC―FORCE)の気象担当になります。

JETTのメンバーは大規模な災害が発生した際、または予想された場合に、都道府県や市町村などの災害対策本部等に派遣されています。派遣された場所では現場のニーズや各機関の活動状況を踏まえて、気象に関する解説を行うことで防災対応を支援しています。

Q ドラマでもSDMメンバーは実際に現地に行っている

A  JETTも現地に行って気象情報を提供しているので、よく似ています。

JETTの役割としては実際に現地に行くことで、気象状況をリアルタイムで把握し、災害発生状況を即時共有・発表することができるという点があります。

 

Q 災害時、実際に現地に来てくれるのは心強い。新潟県内に派遣されたこともあるのか

A 新潟県内では、2023年9月6日の大雨や2022年12月17日からの大雪など、記録的な気象災害が発生した際にJETTが派遣されました。

2023年9月6日は、前線の影響で最大10分間降水量が、新潟県新発田市赤谷で20.5ミリ、新潟県長岡市で20ミリ、新潟県上越市で19ミリと観測史上1位を記録するほどの大雨に。2022年12月17日は、JPCZ《日本海寒帯気団収束帯》(Japan sea Polar air mass Convergence Zone)が発生して、記録的な大雪になったほか、長岡市や柏崎市で1800台の車が立ち往生するなど、災害が発生した際にJETTが派遣されました。

 

Q 新潟県内でもJETTのメンバーが奮闘してくれていた

A 新潟県であれば新潟地方気象台の予報官などが派遣されますが、場合によっては他の気象台の職員が派遣されることもあります。

 

Q 石黒さんのように普段天気予報を伝えてくれる気象予報士の方との違いは

A JETTのメンバーは普段気象庁で働いていて、日々の天気の観測や予報をしているのでその点は私と大きく変わらないと思います。

ブルーモーメントは気象現象?

Q ドラマ内では気象現象の話題が多いが、タイトルになっている「ブルーモーメント」も気象現象なのか

A 初回に加えて3話でもきれいなブルーモーメントが出てきましたね。ブルーモーメントは、空が日中よりも深い青色に包まれる現象で、日の出30分前と日の入り30分後の限られた時間しか見ることができないんです。

 

Q どのような仕組みで起こる現象なのか

A 太陽の光が重要です。太陽の光は、赤・オレンジ・黄・緑・青・藍・紫の7色で出来ているのですが、この色がすべて見えている状態だと虹が見えるんです。実は、この太陽の光は私たちの目に届く前に、空気中の小さい分子にぶつかって四方八方に散乱しています。そしてこの7色の光の中でも一番散乱するのが青色なので、晴れた日は空が青く見えるんです。この「青色が一番散乱する」というのがポイントです!

 

Q ブルーモーメントが見られる時間帯は、太陽が見えないと思うが

A 実際に太陽は見えない時間帯です。ただ、太陽自体が見えなくても太陽は光を発しています。日中は7色の光が散乱して私たちの目に届いていますが、太陽が沈んだ後は散乱している光は私たちの目にほとんど届きません。ここで、「青色が一番散乱する」というポイントを思い出してほしいのですが、私たちの目には散乱した青色の光しか届かないので、日中よりも深く濃い青色「ブルーモーメント」が見られるという訳なんです。

 

Q この現象が見られる条件はあるのか

A 「晴れている日」これだけです。理想としては雲一つない快晴がベストで、季節は問いませんが空気がより澄んだ秋~冬にかけてはよりきれいに見えます。

 

Q 新潟県内でも見ることが出来そう

A 実は4月~5月にかけては新潟県内も晴れた日が多く、3日連続でブルーモーメントがきれいに見えた日もあったんです。

 

気象現象はさまざま・・・

Q ドラマでは今後も様々な気象現象が取り上げられそうですが、石黒さんの好きな気象現象は

A 私は「しぐれ虹」と「風花」が好きです。

しぐれ虹は、冬型の気圧配置の時に見られる虹です。

冬型の気圧配置の時は1日の中で雪がふったり晴れたりを交互に繰り返す天気になりやすく、これを「しぐれる」といいます。雪がやんで青空が見えると虹が見えることがあり、それを「しぐれ虹」といいます。新潟県の冬の代表的な現象なので気に入っています。

 

もう一つの「風花」も冬の現象です。

標高の高い山に積もった雪が、強い風にのって雪が舞う様子をいいます。

個人的なエピソードですが、平地ではほとんど雪が降らない静岡県に住んでいた時に雪が恋しい雪ロスになっていました。その時に富士山からの雪が舞う姿を見て「やっぱり雪はいいな」と感じましたね。これも新潟県でも見ることができますよ。

 

次はどんな気象現象が・・・

天気についての知識を得ると、いつもの天気予報も違った見え方をしてくる。

次、晴れた日には太陽が沈んだ後に空を見上げてぜひブルーモーメントを見てみたい。

そして、ドラマ「ブルーモーメント」は第4話に。SDMメンバーが次はどのような気象現象に立ち向かっていくのか。ドラマの行方からも目が離せない。