引退するベテラン県議の票の行方は?
長岡市三島郡選挙区は今回、自民党からは現職・新人合わせて4人が、公明党からは現職が出馬。
一方、野党は、立憲民主党の元職、共産党の現職、社民党推薦の無所属新人の合わせて3人が立候補。
定数6に対し、8人が議席を争う激戦となった。
中でも、注目されていたのが、旧長岡市を地盤として県議を12期・45年務めた星野伊佐夫氏の動向だ。
星野伊佐夫 新潟県議会議員(2022年9月):
私は、県議選には出馬しないことになろうかと思います
泉田裕彦衆院議員に裏金問題を告発された星野伊佐夫県議は2022年9月、今期限りで引退することを表明。
これを受け、自民党長岡支部は、ともに長岡市議の深見太朗氏と荒木法子氏の新人2人を擁立することを決めた。
その結果、現職が3人だった自民党からは4人が出馬することに。星野氏不在の選挙戦で、星野氏の票の行方が注目された。
星野氏が支援 新人・深見候補の戦い
3月31日、新潟県長岡市のホテルで開かれた、深見太朗氏の出陣式。
深見氏の選対の中心は地盤である長岡市の宮本・大積地区の支援者だが…
星野伊佐夫 県議:
(長岡が発展する)この基盤を、これから私の後を受けて、太朗君からやってもらいたい
星野氏がみずからの後継として応援。星野氏の後援会も強力に支援し、県議選を初めて戦う深見陣営を支えた。
出陣式のあとには、さっそく星野氏からげきが飛んだ。
星野伊佐夫 県議:
ここはもう短時間にして、すぐ、ふるさとに行けよ
深見太朗 氏:
分かりました
「長岡市の拠点化に向け、都市インフラの整備が必要」と訴えた深見氏。
深見太朗 氏:
絶対的に必要になってくるのは、フェニックス大橋の4車線化。これは県道なので、県として絶対にやらなければならない事業
中越高校・野球部出身の甲子園メンバーで、体力には自信があったはずの深見氏だが、選挙戦の中盤には疲れを口にする場面も。
深見太朗 氏:
体中が張ってきている感じがある。なぜか背中が痛い
新人候補として、課題も改めて感じていた。
深見太朗 氏:
とにかく、まだまだ知名度が足りない。顔と名前をまだまだ広げられていない
このころ、深見陣営では、「後援会の入会カードが少ない」「若者へのアピールがなかなかできない」など不安をいくつも抱えていた。
それでも深見氏は、街頭演説や個人演説会、その合間に企業を回り、支持拡大に奔走。
そして、裏金問題を告発され、自民党を離党してもなお大きな影響力を誇る星野氏も個人演説会に駆けつけた。
星野伊佐夫 県議:
私は、この人の伸び代、将来性にものすごくほれている。こういうタイプがいい、議員というのは
深見太朗 氏:
星野県議から、色々ご指導いただいているし、お力を借りている部分もあるので、支援としては大きいと思っている
もう1人の新人・荒木候補は差別化に注力
一方、星野氏と一線を画したのが、荒木法子氏。
第一声では、長岡市議として、年間約230件の市民の声を聞き、行政に届けてきた経験を強調した。
荒木法子 氏:
チラシ・リーフレット、全てのものに入れた言葉は「声を力に」。声を力にしっかりと長岡、新潟を盛り上げていきたい
荒木氏は自身のセールスポイントを訴え、差別化を図る戦略を描いていた。
荒木法子 氏:
私は保守系の議員の中で、唯一の長岡市の川東のまちなか出身。唯一、現役の子育て世代。そういった自分の特長をしっかりと打ち出していく
そんな荒木氏の支えは家族。
荒木法子 氏:
また夜、会おうね。バイバイだね
声のかれた荒木氏を2人の子どもが見送った。
そして、当選への強い決意を抱く理由も家族にあった。
荒木法子 氏:
「うちのお母さんがお世話になりました」と話してきたよ
声をかけたのは、車いすに乗った母。前々回、2015年の県議選で、約370票差で敗れた松川キヌヨ元県議だ。
荒木法子 氏:
地域の方に母は支えていただいた。その、支えていただいた恩返しをしたいという気持ちはすごくある
“保守票の取りすぎ”を警戒する声も
新人が奮闘する一方で、旧長岡市の自民関係者から聞かれたのは、「前回、トップ当選した柄沢さんが票を取りすぎるのではないか」という懸念の声。
8期目の当選を目指す柄沢正三氏が今回、「暗黙の紳士協定がなくなった」と、星野氏が地盤としていた旧長岡市内でも積極的に活動したからだ。
柄沢正三 氏:
今までは私と星野先生の間に、「お互いのもともとの選挙区は遠慮しよう」という暗黙の紳士協定みたいなことがあったが、それはもうなくなって、私も旧長岡市で思い切って挨拶回りをさせてもらっている
現選挙区となった2007年の選挙以降、過去最多4人の候補を擁立した自民党で身内同士も票の奪い合いを展開する中、存在感を示したのが、衆議院の新潟4区で新たに支部長となった鷲尾英一郎衆院議員だ。
自民党4人の候補、全員の応援にそれぞれ複数回入り、支持を呼びかけた。
鷲尾英一郎 衆院議員:
仲間を1人でも多く当選させようと思っているので、全力で選挙に取り組みたい
一方、新4区から出馬する意向を示している泉田裕彦衆院議員だが、今回の県議選で目立った活動は見られなかった。
激戦の末の当落 新人2人の思いは
様々な思いが交錯した県議選も最終日。2人の新人は「最後の訴え」に声をからした。
深見太朗 氏:
本音を言わせていただくと、勝ちたい。恩をしっかり返していきたい
荒木法子 氏:
選挙が本当に厳しい。本当に厳しい。皆さん、ぜひお力を貸していただきたい
そして、投開票日の4月9日夜。2人の陣営にバンザイの声が高らかに響いた。
深見氏は3位、荒木氏は4位でともに初当選。現職2人も当選し、この選挙区では過去最多となる4議席を自民党が占めた。
荒木法子 氏:
働いている女性、子育てをしている男性も女性も、子育てのしやすい環境をつくっていくのが私の役割だと思っている
深見太朗 氏:
長岡の、この地域からの県議なので、当然、地元・長岡の発展というところに力を入れていきたい
裏金問題で揺れた長岡市。有権者の信頼と付託に応える活動が求められる。