場合によっては死亡のリスクもある性感染症の「梅毒」。2010年には約600件だった梅毒の報告数は2023年には1万4000件を超えるなど、全国的に急拡大している。新潟県内では去年、過去最高となる139件の届け出があり、県はコンドームを適切に使用するなど感染予防を呼びかけている。
■性交渉だけでなくキスでも感染
梅毒トレポネーマという病原菌によって感染する性感染症の梅毒。
この細菌は、主に性交渉中に感染部位と粘膜や皮膚が接触することにより人から人へと感染するもので、万が一梅毒に感染すると、初期には感染が起きた部分(陰部・口唇部・口腔内・肛門部等)にしこりができる。
梅毒の症状は4段階(初期~4期)に分かれ、2期では全身や特定の部位に赤い発しんが現れ、3期では全身の炎症が悪化。
4期では脳や心臓に病変が起こり、心不全や心臓発作、神経梅毒といったさまざまなリスクから最悪の場合には死に至るケースもある。
また、梅毒に感染している妊娠中の女性は、胎盤を通じて胎児に感染し、死産・早産・新生児死亡・奇形(先天梅毒)が起こることもあるという。
■背景にはマッチングアプリや性風俗店の利用増?
2010年当時、全国で610件だった梅毒の報告数は年々増加し、2017年には5820件で初めて5000件を超えた。
その後も梅毒の感染は急増し、2022年は1万3133件、2023年は過去最多の1万5061件となっていて、2024年は速報値で1万4846件と高止まりが続いている。
新潟県内では梅毒の報告数が2014年は15件(男11・女4)だったが、それ以降増加傾向にあり、2018年には65件(男44・女21)、2022年には139件(男102・女37)に。
2024年は2022年と同じく過去最高となる139件(男97・女42)となった。
国立感染症研究所によると、梅毒の報告数の傾向としては男性が20代から60代までと幅広く、女性は20代が突出して多くなっていて、新潟県も同様の傾向だという。
県は、感染が増加している要因については「はっきりとは分からない」としたうえで「背景には近年、マッチングアプリや性風俗店利用の増加により感染する機会が多くなっているのではないかという議論もされている」としている。
■最悪の場合には死亡するケースも
梅毒は診断の遅れによって脳や心臓に合併症を起こし、最悪の場合死に至るケースもあるが、早期の薬物治療で完治が可能となっている。
そのためには、陰部などにいつもと違う分泌物や傷、発しんなどが出現したときには、性交渉を控え、できるだけ早く医療機関を受診することが大切だ。
新潟県や新潟市の保健所では匿名かつ無料で梅毒の検査をすることができ、「感染したかも」と思われる行為をしてから通常検査の場合は1カ月、即日検査の場合は2カ月以上おいてからの検査を推奨している。
また、県は梅毒の感染を防ぐために「不特定多数の人と性行為をしないこと」「コンドームを使用すること」が重要だと呼びかけている。
自分の体を守るため、そして他人に感染を拡大させないために一人一人が正しい知識を持ち、予防・早期治療をすることが重要だ。
最終更新日:Sat, 18 Jan 2025 10:00:00 +0900