サッカーアルビレックス新潟は11月14日、中野幸夫社長の来年1月末での退任を発表しました。後任には元アルビレックス新潟の守護神で現在、営業本部長を務める野澤洋輔さんが就任します。14日に開かれた会見の全文を紹介します。
「この痛みがクラブをもう一度強くする」
この度、本日の取締役会で承認を受けまして、来年の2月1日より代表取締役社長に就任いたします野澤洋輔です。よろしくお願いいたします。
まず初めに、今シーズンの結果をもちまして、J2降格という厳しい現実を迎えたこと、応援してくださったサポーターの皆様、パートナー企業の皆様、そして地域の皆様に心よりお詫びを申し上げます。この悔しさを私はクラブの一員として深く痛みを持って受け止めております。
しかし同時に、この痛みこそがこのクラブをもう一度強くすると信じております。アルビレックスは新潟の誇りとしてこの街と共に歩んできたクラブです。その原点に立ち返り、もう一度みんなでJ1への挑戦、そしてさらにその先に進んでいければと思います。
クラブの歴史、サポーターとの絆、そして支えてくださる皆様への感謝、変わらないその思いを私たちは変わる覚悟を持って進めてまいります。失敗もあると思います。それでも嘘のないクラブでありたい。誠実に向き合う姿勢がクラブのアルビの強さになると信じ、やっていきたいと思っております。今後とも変わらぬご支援をよろしくお願いいたします。
最後になりますが、長きにわたりクラブを支え、積み重ねて形を作ってこられた中野さんに心より敬意を申し上げます。これまでクラブを導いてくださった長い年月と情熱に深く感謝しております。まだシーズンは終わっていませんので、残り2試合は中野さんと一緒に戦っていきたいと思います。
社長就任の率直な思いや来季の構想
Q社長に就任されるとなった今の率直な気持ちは
素直にプレッシャーにも感じていますし、身が引き締まる思いでおります。ただ、選手からフロントに入り、選手時代もサポーターの皆さんに何か恩返しができることはないかと思い、様々なことに取り組んでおります。今回このような立場をいただきましたので、違った立場からサポーターに、そして新潟に恩返しができる機会をいただけたことは非常にワクワクしております。
Q社長になられて一番やらなければいけないと感じていることは何でしょうか。
課題はあると思いますが、これから自分の中でよく考えていろいろなところに取り組んでまいります。やはりクラブとサポーター、そしてパートナーの皆様のつながり、関係性をより強くしていくために、より良い発信、より良いコミュニケーションを取っていきたいと思います。
Q残り2試合ありますが、来シーズンに向けた構想や体制について
来シーズンについては、関係するメンバーと今年の反省も含めた協議をしている。まだ新しいことは何も決まっておりませんので申し上げられませんが、まずは今シーズンの2試合をしっかり戦うことと、それと同時に来シーズンに向けた準備をいろんなメンバーと話し合っていきたいと思います。
Q社長に就任する話はいつ頃からあったのでしょうか。
中野さんの辞任の申し出があったのが10月25日のJ2降格が決まった時だと思いますが、その後にその話をいただいた記憶があります。ただ、その前にもいろいろ協議をしていましたので、記憶が曖昧な部分もあります。
Q野澤さんがフロント入りされてから5年以上経っていると思いますが、当時からいずれ経営に携わりたいという思いはありましたか。
今年で6年目になります。引退して会社に入れてもらって6年目になります。選手の時からイメージしているところは、アルビレックスの社長はなんとなくイメージしておりました。最大のサポーターへの恩返しができるのは社長だと思っていましたので、タイミング自体は考えておらず、まさかこのタイミングになるとは思っていませんでしたが、ただ指名をいただいたときは責任を持って今がタイミングだと思ってやらせていただこうと思っています。
Q経営のビジョンは今後示される予定でしょうか
改めてそういったお話ができればと思いますが、まずはクラブの内部を中身を変えたいと思っています。これまでフロントスタッフは育成などで様々なメンバーが情熱を持ってやってきました。ただ、その情熱だけでは持続性が続きません。その情熱や人の思いを行動に変える仕組みを作りたいと思っています。何事も大事なのは人の思いだと思いますし、それを実行に移すのは人だと思います。今いるメンバーがそれぞれ主役だと思って、ひとりひとりが最大限力を発揮できるような環境づくりを自分でできたらと思っています。
Qこのシーズンについて、運営の一員として今シーズンどのように見ていましたか
結果は真摯に重く受け止めています。ただ、チームも選手もスタッフも一生懸命取り組んでいる中で何とか目の前の試合を勝とうと毎日取り組んでいる中で結果が出ないことは非常にもどかしい気持ちで今シーズン見ていました。
Q選手としてJ1昇格に貢献した経験もありますが、来シーズン社長としてどのような思いがありますか。
このクラブは誰のものかと自分に問いただした時、答えは明確で、やはり新潟に生きる全ての人のクラブだと思っています。私が選手時代にいろんな経験をさせてもらい、育ててもらった、サポーターと共にこのクラブは育ってきたと思います。来年クラブは30周年を迎えて様々な環境は変わってきています。僕も成長しましたし、サポーターも成長していると思います。昔が良かったというだけでなく、今のサポーターや今のクラブにしっかり耳を傾け、もっと愛されるクラブにしていきたいと思います。
社長打診後に即決「その場ですぐに決断した」
Q野澤さんが社長をやると決めた一番の理由は
やると決めた理由は、アルビレックスの立ち位置はJ2ではない。J1にいるべきだと思ってますので、J1にいるために自分の力を注ぎたいと思いました。選手時代から最大の恩返しができるのは社長の立場だと思いましたので、話をいただいた際にはその場ですぐ決断しました。
Qサポーターへのメッセージをお願いします
J2降格という結果は非常に重く受け止めていますが、来シーズンが来る中で、いつまでも下を向いているわけにはいきません。来季に向けて速やかに良い準備をしていくことが一番だと思っています。すでに様々なメンバーと話をしていますので、良い準備をして来シーズンを迎えられるよう取り組んでいきたいと思いますので、来シーズンもぜひ一緒に戦ってもらえたら嬉しいです。
Q冒頭の「原点に立ち返る」という点で、このクラブで大事にしている原点を改めてお聞かせください。
このクラブは新潟という土地に生かされている、ファンとサポーターのクラブであることが原点だと思っています。皆様の応援があるから、力があるからこのクラブは成り立っている。それが原点だと思います。
Q現場のコミュニケーションや気持ちを経営にどう反映するか、ご自身の色をどのように出していきたいですか
社長という立場ではなく、営業という中でも意識してやってきた部分でもあるんですが、クラブが目標に向かっていくにはクラブが一つになった方がパワーが出ると思います。フロントスタッフだけで戦ってももちろんダメですし、チームだけで戦ってもダメだと思っています。選手上がりの自分が営業で外を走り回って営業している姿や、フロントスタッフになって選手では感じられなかった苦労や仕事を選手に伝えていけるのも自分が選手だったからこそ担える役割だと思っているので、選手とフロント、クラブをより一層強固なものにしてやっていきたいと思っています。
寺川強化部長は続投
Q来季の編成などに野澤さんの考えが反映されますか。
来季の強化部長は引き続き寺川に強化のトップを担ってもらい、強化部長としてチームを構築してもらいたいと考えています。ここの結論に至ったところですが、J2降格は、寺川自身も重く受け止めています。その点では、強化のトップとして責任の所在を明らかにするという声があることも承知しています。しかし、2020年10月に強化のトップとして寺川に就任してもらい、それまではいい部分は継続しながらポテンシャルを持つ選手の獲得や、彼らの可能性を信じて時には我慢強く育成してきた手腕は非常に評価しています。何より今季の反省を身を削りながら体感してきた寺川なので、その反省を生かして、またさらに新潟が成長するために寺川が担うことがベストだと判断しました。
その上で、最終的なジャッジやチーム編成は寺川強化部長に担当してもらいますが、最終ジャッジに至るまでの構想や方向性については私や経営陣など様々な意見を聞き、一番いい方向性にジャッジできるようよりコミュニケーションを取っていきたいと思います。
Q選手とのコミュニケーションについて、選手からどんな思いを受け止めていますか。
選手とはそこまで立場を意識した話をしたことはなく、OB、選手として彼らの気持ちはよくわかりますし、30人の選手の中で試合に出られるのは11人で、出られない選手は悔しい思いをしています。それでも歯を食いしばってチームのために、自分のために頑張っているので、余計なことは言う必要はなくて、苦しい状況だけど頑張っていこうという話をシーズン中もしてきました。来季のことはこれからなので、そういう話しは選手とはまだしていません。
「泥臭く体を張って走るサッカーがベース」
Qどんなサッカーにしていきたいですか。
具体的な戦術はこの場で申し上げられませんが、サポーターが見ていてワクワクするサッカー、たとえ負けても勝ち負け関係なく「やるだけやった」と思ってもらえるような。アルビはいつまでも挑戦者で、泥臭いサッカーをして体を張って走るサッカーがベースにあると思うので、そこをもう一度、強化部と認識を合わせた上で新体制に臨みたいと考えています。
Q理想の社長像は
ないですね。とにかく、みんなでやっていきたい。責任を逃れたりという意味合いではなく、チームの一人ひとりがパフォーマンスを発揮することで一つの強いチームになる。それが11人、30人といます。フロントスタッフも優秀なメンバーがいます。私は現場から育ったので、皆の思いや情熱を信じています。現場の力を生かし、皆の力を最大限生かせる社長になりたいと思います。
Q元選手でクラブの社長になった例は珍しいと思いますが、かつてのチームメイトやスタッフからの祝福やアドバイスはありましたか。
先ほど決まったばかりで、続々と連絡は来ています。まだ本当に少ししか見られてなくて、舞行龍から「おめでとう、頑張りましょう」といったメッセージをくれたりとか、寺川さんやアカデミーダイレクターの梅山さん、本間勲からも社長と呼ばせていただきますというメッセージをもらいました。一緒に戦ったメンバーがいるので、心強いですし、そういったメンバーだからこそアルビレックスに強い思いを持っていると思いますし、強くしたい良くしたいというメンバーが集まっているので、皆で一緒にやっていきたいと思います。
Q秋春制にどのように立ち向かっていくか。
日程や詳細はこれからになるので、詳しくは明言できませんが、冬の寒い時期に試合が行われる可能性があります。アウェイかもしれませんが、アウェイに応援へ行く際、今まで朝5時や6時に起きて出発していたサポーターは、もし雪が降っていたらまず雪かきをしてから出発になると思います。その前に起きないといけないし、そういったことを想像すると、非常に秋春制にする必要があったのかと思いますが、そういった思いをして応援してくれるサポーターがいることをしっかり受け止めて戦っていきたいと思います。
Q来季の編成や監督について
監督については一部報道も出ていますが、まだ現段階で申し上げることはできません。コミュニケーションをしっかり取ってこのチームをどうしたら強くできるか、そしてJ1に昇格できるかを話し合っていけたらと思います。その点に関しては、決まり次第お知らせしたいと思います。
Q株主や役員の今後の関わりについて。
中野さんについては、豊富な経験を持っており、地域のパートナーや関係各所との接点やアドバイスを今後もいただきたいと考えています。今後の予定はまだ決まっているわけではありません。
Q経営面で厳しい数字が予想されるが、トップセールスとして自ら営業もされますか
営業としてこれまで多くのパートナー企業に支えられてきましたし、選手から営業になったことでより支えられていることを実感しました。ここは、社長という立場に限らず、幅広くパートナー企業の皆様にアルビレックス新潟の支援と応援をお願いしていきたいと思います。トップ営業という言葉が当てはまるかもしれませんが、いろんなコミュニケーションを取りながら色んなパートナー企業の知見や意見を聞かせていただき、クラブ運営に生かしてよりもっとご支援を頂けるようにやっていきたいと思います。
Qクラブの中身を変えたい、情熱を行動に変える仕組みについて具体的なイメージはありますか
クラブとして継続して成長していきたいという思いがあります。そういった意味で、少数精鋭でやっているところもありますが、少し個人の能力で頑張ってきた部分があるので、個人の能力だけでなく会社全体でパワーが発揮できるように、経験やノウハウを見える化して誰が取り組んでも同じようなパフォーマンスを各部署で発揮できるような仕組み作りができたらと思います。








