

2025年10月、116人の野球選手がプロ野球NPBのドラフト会議で指名された。その一方で、ドラフト指名されずに「プロ野球選手」という幼いころからの夢を諦めた選手もいる。17年前にNPB入りを断念した松坂大輔さんの弟・松坂恭平さんと今季でNPB入りを断念し、退団を決めたオイシックス新潟アルビレックスBCの藤原大智選手に話を聞いた。(この特集は2回シリーズの後編です)

2025年のプロ野球NPBのドラフト会議で、3人が指名されたオイシックス新潟アルビレックスBC。イースタンリーグ参入2年目で成果が表れた一方、NPB入りへの夢を断念し、退団する決断をしたのが、藤原大智選手(26)だ。年齢を考えての決断だった。
一方で、平成の怪物こと松坂大輔さんを兄に持つ松坂恭平さん(43)も藤原選手と同じ25歳でNPB入りを断念する決断をしたという。
「僕も独立リーグでショートのレギュラーで出ていた。正直、経験があるので、上手な高卒選手が入団しても負けなかった。ただ、僕がいるとその若い選手が試合に出場できない。仮に25歳で育成指名されても、NPBの球団にとってメリットはないと思った。そう考えると、ポジションを開けてあげないと、若い選手の芽を摘んでしまうと考えた」

後輩育成と自身の夢との狭間での葛藤があったことを明かす。そんな松坂さんが引退する決断をしたのは、兄の一言だったという。
「いろんな人に相談すると「ちょっとずつ上手くなっているんだから続けた方がいい」という意見が99%だった。最後に兄に相談したら「辞めろ」と言ってきた。「NPBに入ってきて1年2年で退団することになって、今何をしているかわからない人は俺の周りにもいっぱいいる。戻れるところがあるなら復職して一生懸命働いた方がいい」と言われて決断した」

実際に、2025年のドラフト会議では116人が指名されたが、ドラフト会議時に25歳以上だった人は本指名で3人、育成指名を入れても5人しかいなかった。
25歳という年齢が一つの大きなポイントとなりそうだが、松坂さんは「もう1年やってもトータルで考えたらあまり関係ないと今は思う」と話す。
それでも、藤原選手は「もう少しこうしておけばというのはあるが、辞めるときにそれはみんな思うので、みんなに言ってもらえて辞められるのは前向きに捉えている」と自らを納得させるように話した。

将来は指導者になることも視野に入れている藤原選手は、退団後に社会人野球入りを目指すという。その狙いについても話してくれた。
「プロになる夢は諦める形になりましたが、体はまだ動くし、野球は好きなので、プロに指名される以外のカテゴリーは全部経験したい。社会人野球をやったことがないので、そこをやりたい」
一方で、松坂さんは現在、自身で起業してスポーツメーカーの社長として活躍している。それでも「野球以上に情熱を燃やせるものはない」と強調する。
「プロ野球選手になりたかった。野球をやっているときは24時間365日ずっと野球がうまくなりたいという情熱があったが、それに代わるものはなかった。ただ、起業してそれに近い感じはある。プレーヤーではなく、起業して勝負している。2歳上に兄がいて、野球では勝てなかったが、違うフィールドで勝てると思ってやっている」

夢を追い続けた2人。
「自ら考えて自分のやり方を見つけ、プロセスを考えることができた」と話す藤原選手に対し、松坂さんは「夢を追い続ける方が楽だなと思った。むしろ諦める方がつらかった。勝ちに不思議の勝ちがあって、負けに不思議な負けがないのと一緒で、藤原さんは指導者になったときに、プロ野球選手になりたいという子に自身の経験を話すことができる」と次のステージに向けてエールを送った。
夢を諦めることへの葛藤の先で戦い続ける松坂さんの言葉を受け、藤原選手も新たな夢に向かって走り出す決意を新たにしていた。
最終更新日:Thu, 04 Dec 2025 12:34:43 +0900



