【混浴問題】父親と男湯に入った女児へのわいせつ事件も…子どもの混浴は何歳まで?9府県で混浴年齢の条例なし

日ごとに寒さが増すこの季節に恋しくなる“温泉”。小さな子どもは、異性の親と一緒に温泉に入ることもあるが、そこではトラブルも懸念される。新潟市では25年8月、父親と男湯に入っていた13歳未満の女児が、知らない男に体を触られるわいせつ事件があった。子どもの混浴年齢について、現状として新潟県には明確な規定がない。子どもを守り、誰もが快適に温泉を利用するために、規定は必要なのだろうか。
NST新潟総合テレビ

日ごとに寒さが増すこの季節に恋しくなる“温泉”。小さな子どもは、異性の親と一緒に温泉に入ることもあるが、そこではトラブルも懸念される。新潟市では25年8月、父親と男湯に入っていた13歳未満の女児が、知らない男に体を触られるわいせつ事件があった。子どもの混浴年齢について、現状として新潟県には明確な規定がない。子どもを守り、誰もが快適に温泉を利用するために、規定は必要なのだろうか。

■「子どもの混浴は何歳まで?」

湯沢町

数多くの温泉宿が建ち並び平日でも多くの観光客でにぎわう新潟県湯沢町の越後湯沢温泉街。

ここで「子どもの混浴年齢は何歳までか」を聞いてみた。

「1人だと危ないから8歳くらいまで」
「小学生くらいだと男の子はお父さんと入ってくれたほうがいい…」

このほか、小学校中学年が適当だとする意見があったほか、2歳の娘をもつ父親は「ママのほうがいいと言うと思うし、女の子なので一緒に男湯に入るのは幼稚園まで」と回答。

「男湯に女の子がいたら目をそらす。見ちゃいけないものかなと思って」

こう話す男性は、もし自分が娘の父親の立場なら周囲の男性の目線が気になるとして、男湯に女の子がいる時には、特に気を遣っていると話した。

また、中には温泉でこんな経験をした人も…

「小学校6年生くらいの男の子が女湯に入ってきて、私たちもびっくりしたけど、男の子もすごく戸惑っていて、『どうしていいかわからない』みたいな感じがかわいそうだった」

その場に父親がいないなど、何かしら事情があると思いつつも驚かずにはいられなかったこの経験。

異性の浴場に入る子ども自身の心も守るため、子どもの混浴年齢は定めるべきだと述べた。

■公衆浴場での年齢制限規定がないのは9府県

NST新潟総合テレビ

厚生労働省によると、2021年1月1日時点で、公衆浴場での年齢制限を条例で定めているのは、全国で38都道府県。

7歳から12歳まで年齢に違いはあれど、多くの県が年齢の上限を設けている一方で、「新潟県・福島県・千葉県・大阪府・奈良県・島根県・広島県・山口県・佐賀県」の9府県には規定がない。

■湯沢町議会“7歳以上の混浴禁止”を県に求める

湯沢町議会が新潟県に提出した意見書

そのような状況で動いたのが、湯沢町の議会だった。

2023年12月、湯沢町議会は、7歳以上の混浴を禁止する県条例の制定を求める決議を全会一致で可決。県に意見書を提出した。

発議した湯沢町議会の岸野雅人議員は「町で年齢を制限する条例を定めようと思ったが、条例を定められるのは県や政令市など保健所を有する市だった」と当時を振り返る。

町で定められないならばと作成した意見書では、原則7歳以上の混浴を禁じ、要介助者などについては各管理者の判断に委ねることを提案。

年齢制限があれば、温浴施設に分かりやすく掲示ができるうえに、原則があるからこそ例外を示せるとして、県へ意見書を出すに至った。

■老舗温泉宿の経験「思わずハッとした」

雪國の宿・高半 高橋五輪夫さん

この発議に至った背景には、900年以上の歴史を誇る温泉宿『雪國の宿・高半』の存在があった。

天然の源泉からわき出る掛け流しの温泉を求め、連日多くの客が訪れる中で、ある時こんな声が高半に寄せられた。

「女湯に男の子が入ってきた。小学生だと思うが、わりと身長も大きくていい気持ちはしなかった…」

女性の利用客から寄せられた不安の声に「思わずハッとした」と話すのは、雪國の宿高半・第37代湯守りの高橋五輪夫さんだ。

スキー客を中心にインバウンドが急増している湯沢町では、海外の観光客からも混浴年齢について戸惑いの声があがったという。

これを受け、高半では厚労省の管理要領を参考に、『混浴は小学校入学前まで』とするルールを独自に定めている。

利用客のモラルに一任せず、明確なルールを示したい温浴施設に対し、湯沢町の要望を受けた県の見解は…

■県「男女の混浴は禁止が基本」

県生活衛生課 中林ゆうこ 課長補佐

「公衆浴場法の立法の趣旨を踏まえて、男女の混浴禁止を基本としている」

県生活衛生課の中林ゆうこ課長補佐は、新潟県における公衆浴場での年齢についてこのように述べた。

県の条例ではそもそも混浴の概念がないため、年齢制限の規定はないと説明。そのため、現在は各事業者に対し、厚労省の要領に基づいて個別に判断・対応するよう求めている。

湯沢町議会の意見書にあるように、基準の年齢を決めたうえで例外を設けて運用ができないかという問いに対しては「子どもの発育状況は人によって様々なので、一律に何歳と制限するのは難しい」と回答。

また、制限するとして、妥当な年齢は何歳になるのか。また、障がい者の介助者にも制限を設定するのかどうかなど、線引きは決して簡単ではないと話した。

■湯沢町と県すれ違いも共通する思い

NST新潟総合テレビ

ルールづくりを求める湯沢町と、そもそも混浴は禁止されているため、年齢を規定することは前提に矛盾すると主張する県。

一見すれ違っているようにも見える議論だが、その根底には共通する思いがあった。

「利用者の方が安心して気持ちよく利用できる環境づくりが一番大事だと思っている」として、日々大きく変化する社会情勢や利用者ニーズに合わせて、関係者と連携して快適な入浴環境の確保に努めると話す中林課長補佐。

「日本に来るお客様も、日本のお客様も一緒に裸で入る気持ちよさはあるが、それはある程度一定のルールがあってこそ気持ちよく入れると思う。ルールをつくってみんなで気持ちよく過ごしてほしい」と話す高半の高橋さん。

県も温浴施設も最終的に目指しているのは、すべての人が快適に温泉を利用できること。

その実現のために今、モラルとルールの在り方が問われている。

最終更新日:Mon, 08 Dec 2025 05:00:00 +0900