娘の救出に人生捧げた滋さん 死去から3年
2003年、拉致被害者・横田めぐみさんの父・滋さんは、幼い日の娘の写真に目を細め、その存在がどれほど愛おしいものだったかを語っていた。
横田滋さん(2003年):
太って目が細かったから御所人形みたいだとか、金太郎さんみたいだとか…。女の子の褒め言葉にはならないんだけど…
1997年に北朝鮮による拉致が明らかになり、家族会の代表に就任して以降、被害者救出の先頭に立ち続けた滋さんがこの世を去り、2023年6月5日で丸3年となった。
妻の早紀江さんは、命日に先立って行われた会見で、夫への思いを語った。
横田早紀江さん:
とにかく真面目な人だから「やり遂げるまでは、命がなくなるまでは頑張るぞ」と思っていた。だから、本人もそんなに悔いていないと思う。全身全霊やり遂げましたから、本当に感謝しています
救出活動に人生を捧げた滋さんは、最愛の娘を再び抱きしめることができないままこの世を去った。
帰国を果たせていない拉致被害者の親世代は、有本恵子さんの父・明弘さん(94)と早紀江さん(87)の2人のみに。
親子の再会まで、残された時間は、日一日と少なっている。
事実、早紀江さんは2023年3月、自宅で倒れ入院。会見で、そのときの様子と心境を細かに語った。
横田早紀江さん:
朝ごはんを食べて立ち上がったとたんに、視界が真っ白になっちゃった。そうしたら息ができない感じになった。死んでしまうってこういう瞬間なんだなと思った。もう、これで終わりなんだって…。だけど、「これでは困ります。神様お願いです。2年だけでも命をください。まだ頑張れる力をください」と祈っていた
親子の再会の実現へ。2023年5月27日に開かれた国民大集会で、岸田首相は日朝交渉について、これまでよりも一歩踏み込んだ発言をした。
岸田首相:
首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を行って参りたい
その2日後には、北朝鮮外務次官の「日本が過去にとらわれず、関係改善を模索しようとするなら、両国が会えない理由はない」という談話を北朝鮮メディアが報じた。
北朝鮮側は「拉致問題は解決済み」というスタンスを崩していないが、交渉の可能性を感じさせる発言に早紀江さんも大きな期待を寄せている。
横田早紀江さん:
向こうの上の方が否定的でないコメントをなさったのは初めて
金正恩委員長に訴える「親としての心」
先の国民大集会で、横田めぐみさんの弟で家族会代表の拓也さんは、金正恩委員長に向けて「親としての心」を訴えた。
拉致被害者家族会 横田拓也 代表:
金正恩委員長、あなたの横に座るあなたの娘さんの映像を私たちが目にするとき、あなたも親として愛する子どもが大切である気持ちを持っていることを感じ取っています。その同じ気持ちを拉致被害者家族の親世代も持っていることを忘れないでほしい
パレードやミサイル発射場に娘のジュエ氏を同行させている金正恩委員長。
若者を拉致してその将来を奪い、親子の時間をも奪い去った拉致のむごさを感じないはずはない。
タイミングを逃さず解決の糸口を
早紀江さんは「北朝鮮は交渉が難しい国」としながらも、「国のトップ同士が目を見て心を通わせる会談をしてほしい」と祈り続けている。
深刻な食糧難も伝えられる中、日朝交渉への態度を軟化させているようにも見える北朝鮮。
日本政府は、拉致により引き裂かれた親子の再会を果たすため、このタイミングを逃すことなく解決につながる糸口をつかまなくてはならない。