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凶悪な犯人と対峙するため「厳しい指導も必要」
朝から学生の大きな声が響き渡っていたのは、新潟市西区の県警察学校。
この日は、朝から「教練」が行われていた。
警察手帳や手錠といった装備品の確認を行う動作を通し、規律を守る意識を学ぶ警察官には欠かせない訓練だ。
そこに威厳を漂わせながら登場したのは、このクラスの正担当教官を務める小林大輔教官。
県警察学校 小林大輔 教官:
犯罪行為を行う凶悪な犯人もいる中で、そういったものと対峙するためには強い心が必要だと思う。厳しい指導も必要ではないかなというふうに思う
“実際にあった事件”を題材に授業
県警察学校の教室、「教場」では1クラス25人ほどの学生を正担当教官1人と副担当教官3人が受け持ち、警察官になるための基礎を叩き込んでいく。
4月の入学から10カ月間で警察官として必要な知識・体力を身につける必要がある学生たち。それぞれに決意を持って警察官への道を歩んでいる。
初任科 渡邊花子 巡査:
私自身、子どもが1人いる。これから大きくなっていく子どもや地域住民一人ひとりを守ることに自分も貢献していけたらと思って警察官を目指した
子どもが生まれたことをきっかけに警察官を志したという渡邊花子巡査。この日は刑事訴訟法の授業に真剣な表情で臨んでいた。
担当するのは、刑事としての経験が豊富な小野大樹教官。
自動販売機の売上金を狙った窃盗犯が居合わせた目撃者に暴行を加え、ケガを負わせたという実際にあった事件を題材に授業が進められた。
県警察学校 小野大樹 学生校長補佐:
自販機の中のものを盗む窃盗目的。ただ、それをたまたま見つかったことで、捕まえられないようにバールではたきつけた
窃盗の手口から犯人と思われる人物を割り出したあと、逮捕を急がなければいけないのかどうかを検討した。
県警察学校 小野大樹 学生校長補佐:
住居、この人ある?
初任科 渡邊花子 巡査:
あります
県警察学校 小野大樹 学生校長補佐:
逃亡、または家出中?
初任科 渡邊花子 巡査:
…ではないです
このケースでは、犯人と思われる人物に住所があり、逃亡の恐れもなかったことから、令状を請求してから逮捕に至る「通常逮捕」を選択した。
県警察学校 小野大樹 教官:
なんで分からないかというと、やったことがないので想像がつかない。想像しやすいように、実体験をもとに話している
刑事訴訟法の授業が終われば、休む間もなく交通の授業へ。担当は交通事故係として現場勤務の長かった瀬藤栄一教官だ。
県警察学校 瀬藤栄一 教官:
大きい動作で笛を吹くなら、大きい音で安全に止めるというのが大事になる
教官のレクチャーを受け、実際に検問の練習を始めるが…
学生:
新潟県警察で飲酒検問などの検問しておりまして、ご協力をお願いしたいのですが
運転手役の教官:
飲んでないから大丈夫
学生:
無免許でないかとか確認を…
運転手役の教官の迫力に、おそるおそる対応する学生。
学生:
「この車両を検問しました」という報告を忘れてしまって、時間がかかった
県警察学校 瀬藤栄一 教官:
青木、ひかれそうだった
学生: 笛と棒の振りが甘かった
反省を生かし、次は単独事故が起こったことを想定し、交通規制や事故の対応に挑戦。
渡邊巡査もさっそく現場へ。
初任科 渡邊花子 巡査:
ケガはありませんか
次は誰が聞く?と言わんばかりに顔を見合わせる3人。
学生:
免許証と自賠責と車険証の確認をしたいんですけど…
なんとか事故処理に必要な免許証などを受け取るが、何を確認すればいいのか分からず。
学生:
これかな?あれ違う?
心配になった運転手役の教官が思わず助け舟を出す場面も。
教官:
傷とか見なくて大丈夫ですか
学生:
…
教官:
この番号はこれじゃないかな?違うかな?
学生:
…すみません
現場に出れば全てが本番。助け舟を出す教官もいない。
県警察学校 瀬藤栄一 教官:
警察官自身の安全確保ができないと、その現場で当事者の安全確保ができない。まずは自分の安全を守った上で、当事者や県民の安全を守る業務をするというのを一番伝えさせてもらった
悩みを把握するため…教官と“交換日記”!?
新たな知識・技術の吸収に追われる学校生活。警察官になるための厳しい日々は多くの支えをもとに乗り越えている。
この日の授業が終わり、渡邊巡査は子どもと電話をしていた。
初任科 渡邊花子 巡査:
夜ごはんは何食べたの?卵焼き?お好み焼き?いいね~
初任科 渡邊花子 巡査:
声聞くだけで私もかなりパワーになるので良いなと思う
子どもとの電話で力をもらったと話す渡邊巡査。
初任科 渡邊花子 巡査:
子どもだったり、色んな方が支えて応援してくれているので、力をもらって頑張っていうような状態
その支えの一つとなっているのは、厳しい指導で学生を導く担当教官だ。教官室で鉛筆を走らせていた勝見俊介教官。
県警察学校 勝見俊介 教官:
毎日学生が書いてくるので、それを確認してコメントを書いている
学生から毎日提出される「随想」という交換日記のようなやり取りを通して、学生の悩みなどを把握しているという。
県警察学校 勝見俊介 教官:
学生の気持ちというのは、授業とか普段の気持ちだけでは分からないが、随想だと内に秘めた感情や何を感じているのかが非常によく分かる。私たちも普段伝えられないようなことを伝えられるので非常に良いツール
いずれは同じ現場に立つ可能性もある教官と学生が絆を育みながら過ごす10カ月。
県警察学校 小林大輔 教官:
県民の皆さんに信頼していただけるような、誠実で優しい警察官になってもらいたいと思っている
警察学校には、思いを伝える教官と訓練に励む学生の声が響き渡る。