新ローカル航空会社“トキエア” 定着のカギは? ヒントはFDAの取り組みに「地域と一緒に栄えていく」

6月末、初めての就航が予定されていた新潟空港拠点の格安航空会社「トキエア」。しかし、国の審査に時間がかかっていることから延期となった。

トキエアが新潟県内初の航空会社として定着するために必要なこととは…16機の機体を保有し、地方の足としての役目を果たしている県外の航空会社を取材した。

新潟発「トキエア」 就航延期に…

新潟空港を拠点とする初めての格安航空会社「トキエア」。

格安航空会社「トキエア」

トキエア 長谷川政樹 社長:
新潟の会社で、当然、新潟の皆さんから乗ってもらうことを第一の目標につくった会社なので、目標を持って、ちゃんとお客様にお応えできるように準備を進めていきたい

6月末に予定されていた新潟と札幌丘珠空港を結ぶ路線の就航に向け、期待が高まっていた。

しかし…

トキエアからの発表:
現在実施している路線訓練等において、一層の習熟に時間を要すると判断し、就航予定日を8月10日に延期することといたしました

突如発表された就航予定日の延期。人の命を預かる航空運送事業に新規参入する難しさが露呈した。

FDA 楠瀬俊一 社長:
飛行機を飛ばし始めるというのは、どれだけ準備が大変かということだと思うし、そういう意味では、多少就航の日にちは後ろ倒しになったけど、やはり何とかここを乗り越えて、無事に就航していただくよう願っている

こう話すのは、FDA(フジドリームエアラインズ)の楠瀬俊一社長。

FDAも静岡空港が開港して間もない14年前、2機の機体で就航を始めた。

その後、機体を16機まで増やし、地方の足として欠かせない存在へと成長。16機の色鮮やかな機体には、それぞれの個性を持った地方と地方を結ぼうという思いが込められている。

FDA 楠瀬俊一 社長:
地方と地方、地域と地域をダイレクトに航空路線で結ぶことによって、「地域間の交流人口の増大と経済文化活動のお役に立つんだ」と。その理念をオーナーが素早く実現したということだと思う

厳しい航空業界…コストカットに力

FDAの親会社は静岡市に本社を置く物流企業「鈴与」。オーナー企業であり、追加の機体購入など素早い意思決定が急成長の一因に。

また、初めての就航から1年後、日本航空の経営破綻で不採算路線を引き継ぐなど、名古屋空港を拠点化したことも発展のきっかけとなった。

しかし、燃料費の高騰やウイルス禍によるビジネス客の減少で航空運送業界を取り巻く環境は厳しいまま。そうした中…

記者リポート:
先ほど、熊本空港から名古屋空港に着陸した緑の機体。機内清掃は、客室乗務員によって行われるということです

緑の機体に向かって歩く4人の客室乗務員。機内清掃と出発に向けた準備を手際よく行っていた。

客室乗務員:
保安業務を兼ね備えているので、忘れ物がないか、不審物がないかというのもスピードを保ちながら、いかに見落としがないようにするか心がけている

到着から出発まで時間がないときは30分ほど。ときにはパイロットも手伝い、コストの削減に努めている。

FDA 楠瀬俊一 社長:
「1円のコストも無駄にするな」とコストカットをしているが、人様の命をお預かりする仕事なので、安全に対するコストは絶対に惜しまない

一方で、トキエアが県内初の航空会社として定着するためには、空港がある地元との密接な関わりが重要となりそうだ。

秀清堂 渡邉勝利 店主:
こちらが2号機のライトブルー、こちらが3号機のピンク。FDAさんの初号機ということもあって、ドリームレッドが1番人気

FDAの色とりどりな航空機をモチーフにして作られたモナカ。FDAと名古屋空港近くに店を構える小さな菓子店とのコラボで生まれた。

秀清堂

秀清堂 渡邉勝利 店主:
豊山町自体、「飛行機の町」というのをアピールしているが、その中で飛行機をイメージする商品がなくて、ずっとやりたいなと思っていた

秀清堂 渡邉勝利 店主

地方と共に成長する存在へ。コラボモナカは全国の就航先の空港などで販売され、期間限定で機内の茶菓子としてもFDAに無償で提供されている。

また、就航先の自治体や企業などと機体の名前を付けることができるネーミングライツ契約を結ぶなど、地域の航空会社ならではの取り組みが目立つ。

秀清堂 渡邉勝利 店主:
FDAさんのPRもしたい。どんどん搭乗率も新型コロナ前のように戻ってもらって、元気になっていただいて。2023年は北海道につながったので、今度は沖縄につながれるようになってもらいたい

FDA 楠瀬俊一 社長:
地域の方と一緒に栄えていくという、やりがいがある。大手と違って、小さな小さな航空会社だから、「地域の方たちとお客さんとの距離の近さだけは、どこにも負けないぞ」という気概でやっている

トキエア 地域に根差した航空会社へ

トキエアが新潟に根差した航空会社になれるのか、様々なヒントがFDAの取り組みに隠されていた。

FDA 楠瀬俊一 社長:
東京から何かを取ってきてやろうとかそういう方向で見がちだが、それだけが本当に地方創生なのかと。地域に根差した航空会社ができて、それが地域と地域を結ぶ、地方間を結ぶという意義は大変大きなものがあると思う

トキエアが新たに発表した就航予定日は8月10日。新潟の空にどんな革命が起こるのだろうか?