不登校の経験もとに動画制作
「私が学校に行かなくなって1年が経った。本当に辛かった時期もあった。でも、今は…」
誰もいない白黒の教室の寂しさと、きらめく波打ち際の楽しそうな様子を対称的に見せた1本の動画。
最後には学校に居場所のなかった子どもが仲間のもとに駆け寄っていくシーンが映し出されている。
これは、長岡市のフリースクール「あうるの森」に通う生徒たちが不登校生動画選手権に応募するため、動画投稿アプリ「TikTok」に投稿した動画だ。
この動画制作の中心となったのが中学1年生のひなたさん(13)。「みんなで編集とかした。自分は監督とか編集を手伝ったりという感じで、みんなで作った動画」
ひなたさんは、小学4年生のころから人間関係に悩み、約1年半学校に通えず、不登校になった経験がある。
今は、同じく不登校の経験がある小学5年生から中学3年生までの子どもたちとともにフリースクールに通っている。
フリースクールに通う日々について、ひなたさんは「みんな仲良いし、楽しいし、ゲームもできるし、もう一つの家という感じで自分は思っている」と話す。
ひなたさんが、もう一つの家と話すフリースクール。ただ、当初は「ちゃんと通えるかが不安だった」と言う。「男女の差別とかもあんまり分かれていなくて、みんなで仲良くしゃべったり、勉強もできたり、そこが良かった。勉強もちゃんと追いつけるようになった」
男女や学年による隔たりはなく、仲間と交流ができるフリースクールで、ひなたさんは自分の居場所を見つけることができた。
「フリースクールに通う」という新たな一歩を踏み出して、居場所を見つけることができたからこそ、ひなたさんは動画で「『学校以外の居場所があるよ』というのを伝えたかった」とその思いを語る。
学校だけが全ての場所ではない
ひなたさんが伝えたかった「学校以外の居場所があること」。
それを1人でも多くの人に知ってもらいたい気持ちは、動画選手権への挑戦を子どもたちに提案したフリースクールの代表・山田竹紘さんも同じだ。「あうるの森の子どもたちはとても元気。それは、あうるの森に来て友達ができて、勉強ができて、居場所ができたということなので、今いる学校だけが全ての場所ではなくて、環境を変えれば、あなたにもきっと居場所があるということを伝えたい」
一方、動画選手権に参加しようと、この動画をTikTokに投稿した時には、「私は頑張って通っているのにずるい」「不登校なんて怠けているだけ」と心無い誹謗中傷のコメントもいくつか届いたそうだ。
山田さんは「学校に行くことが全てではないという考え方が、少しずつ浸透してきたとは思っている。ただ、やっぱり不登校に対する偏見とかもあるのは事実。でも、不登校の子は、学校に行かない分、自分に必要な能力は何だろうと考えて、自分でその能力を磨くように努力していかないといけないので、本当に全然簡単じゃないし、全然楽じゃないと思っている」
夏休み明けは、学校に行きたくなくなる子どもが増える傾向にあるが、つらい時は「フリースクール」という存在もあることを知ってほしいと、山田さんは話す。
そして、ひなたさんたちが手がけた動画の最後はこんな言葉で締めくくられている。「環境を変えればきっと居場所はある。一歩を踏み出す勇気を」