「心の支えになる1冊を」移住女子が“絵本の店”をオープン  本と人を結ぶ書店の物語

心の小さな支えになるような本を届けられたら…そんな願いを込めた絵本の店が新潟県三条市にオープンした。埼玉から移住してきた女性の思いに迫った。

“特別な一冊”が見つかる書店

絵本の店 omamori

新潟県三条市の商店街で2023年4月に開店した黄色が可愛らしい店。カフェのような店内には本が並んでいる。子どもを連れたお母さんが本を選んでいた。

お客さん:
お気に入りの絵本が1冊ある。本を買うタイプではないが、自分用に買ってみたり

特別な一冊が見つかるという書店だが、本棚に並ぶのは絵本や図鑑などが300冊ほど…品揃えは豊富とはいえない。

お客さん:
ここは1冊1冊店主の好きな本が置かれていて、普通に本屋行って自分で見ることとはまた違う見方ができて、すごく面白い

この「絵本の店 omamori」は三条市で地域おこし協力隊として活動する、まるのさきさんが開いた。

絵本の店 omamori まるのさき さん

まるのさんは「さみしい夜や、元気の出ない朝に、5分だけ絵本を読んでもらって、少しだけ心が楽になる、だれかの“お守り”になりそうだと想像がついた本だけを、ここに揃えている」と話す。

埼玉県出身で会社員をしていたまるのさん。

まるのさき さん:
三条市が、書店事業で街を活性化する地域おこし協力隊を募集していた。絵本を大切な人から誕生日にプレゼントされて、読んだときに心が救われた。そういう価値を、色々な人に届けたい

街を支えていく“仲間”

この日、まるのさんが商店街で訪れた店は、デザインや歴史の本などを集めた書店だ。

まるのさんにとって、困ったことがあったら助けてくれる存在だという。

まるのさんは、この書店を手伝いながら、店主・町田憲治さんに、経営の知識などをアドバイスしてもらった。

同じ商店街に書店が増える事を町田さんは?

SANJO PUBLISHING 町田憲治さん

SANJO PUBLISHING 町田憲治 さん:
ライバルとは思っていない。街に書店がいくつあっても、みんな個性が違えば、店を巡っていくので。街を支える仲間だと感じる。

開店前の朝、まるのさんがラーメンのどんぶりを使ってケーキを作っていた。

まるのさき さん:
この店を始めるときに、商店街の人から貰ったどんぶりで、ちょうどいいサイズ!

まるのさんは、ゆっくり本を選んでほしいという思いから、書店にカフェを併設。

店に置く300冊ほどの本は、全てまるのさんが厳選したものだ。

だからこそ、まるのさんが“お守り”となる、特別な一冊を見つける手伝いをしてくれる。

こちらの女性も、まるのさんとの会話から、大切な一冊に巡り会った。

お客さん:
悩み事があったときに、そういう気持ちをすっきりさせる本がないか聞いて、見つけた本がある。ここに来ていなかったら、手に取らなかった本だと思う。これからも、何回も読んでいきたい。

まるのさき さん:
うれしい。涙が出そう

『本は誰かの心の支えにもなる』まるのさんが、街に書店が必要と考える理由だ。

まるのさき さん:
インターネットでも同じ本が手に入るが、自分で検索しないと出てこない。書店は知らない本とたくさん出会える場所なので、書店をなくしたくない

まるのさんは三条市で本以外にも、元気を貰う場所がある。商店街にある町中華の老舗だ。まるのさんはこの店の『麻辣湯麺』が大好きなのだとか。

まるのさき さん:
これを食べると元気がでる!

実は、まるのさんがケーキを作るときに使っていたラーメンのドンブリは、この店の3代目八木裕之さんから貰ったものだ。

大黒亭 松屋小路店 八木裕之 さん:
新潟県や三条市の良いところに、県外の人が気付いてくれる。移住してもらって支えられている

大黒屋 松屋小路店 八木裕之さん

まるのさき さん:
1冊との出会いを大切に来てくださるお客さまがたくさんいるので、1人1人と向き合うことで、続けていく力になると感じている。

支えて支えられて…本と人を結ぶ優しい書店の物語は続く。