収穫目前に枯れた稲
新潟市北区の阿賀野川沿いに向かってみると…色づき始めた田園風景が広がる一方で、川岸には稲が枯れ果てた茶色い田んぼが広がっていた。収穫を前に一体なぜ…
「塩害だと思う。50年やっているけど初めて」こう話すのは、川沿いでコシヒカリを育てている五十嵐作雄さんだ。
稲が枯れた理由は「塩害」。新潟市では7月から雨がほとんど降らず、阿賀野川では川の水位が下がったことで海水が逆流し、農業用水に塩水が混ざったとみられている。
五十嵐さんは猛暑の続いた8月11日、稲を枯らせないようにと川から取水している農業用水を田んぼに流した。すると翌日、その思いとは裏腹に稲が枯れていたと言う。
五十嵐さんは「(他の農家と)“水が何か変だな”なんて言ってなめたら、ものすごくしょっぱい。恐らく食べられない」と収穫を目前にした塩害に肩を落としていた。
土壌からは約7倍の塩分
被害を受けて、実態解明に向けた調査も進められている。
「長い海岸線があって、すぐそばに水田が広がっているので、新潟というのは塩害に注意していかなければいけない」こう話すのは、新潟大学農学部の三ツ井敏明教授だ。
暑さや塩害に強いコメの研究をしていて、8月25日に北区の塩害現場を調査した。
現場で採取したコメを食べてみると…確かにしょっぱい。コメもすぐに崩れてしまった。
三ツ井教授は「ちゃんとデンプンが固まって結晶化していないので、粉質みたいになっている」とその原因を説明する。
そして、採取した土壌からは通常の約7倍の塩分も検出された。
三ツ井教授は採取したものを分析して塩害対策の研究を進めるほか、今回被害に遭った田んぼの塩分濃度が今後どう推移するか調査を続ける考えだ。
「そのまま塩分が残っていたら稲作はできない。そういう意味でも、その情報を農家さんにお渡ししようとは思っている。恐らく塩分は抜けるとは思う」
塩害はどこまで広がるのか…農家にとって厳しい環境が続く。