総工費325億円の再開発事業
3年前に閉店した新潟市中央区古町地区の象徴・新潟三越…その再開発計画が9月に発表された。
地下1階・地上37階建てで、商業施設に高機能オフィス・マンションなどが入る複合型タワーに生まれ変わる旧新潟三越。
かつてのようなにぎわいを取り戻すため、新たなタワーにはイベントスペースとしても活用できる立体階段広場などが整備される予定だ。
街の人は「にぎやかになっていいと思う。住宅と商業、いいと思う」「映画館などがあったら、結構若い人とかはにぎわってくると思う」と話す。
325億円と試算される総工費のうち、約40%にあたる136億円を国と市で負担するこの再開発事業。その多額の補助金は、行政の中心市街地活性化にかける期待の表れでもある。
新潟市まちづくり推進課の高島康憲課長は「商業施設においては、昼間人口が当然増える。住居部分については、夜間人口も増えることで、昼夜に人がにぎわうような形になると思う」と今後の展望を描く。
行き交う人の増加が地域の活性化につながるとして、市は道路や街頭の整備など側面的な支援も続ける方針だ。
民間にも動き… 日替わりカフェで活性化!
その一方で、新潟市議会の9月定例会では、市議から「にぎわいの核といわれているが、本当に核という形になっているのか」と疑問が呈される場面も見られた。
再開発ビルがにぎわいの核になるのか…新潟三越跡地の再開発計画に合わせるように民間からも活性化への動きが見られている。
新潟三越跡地で9月に始まったのは「み~つプロジェクト」。毎週木曜~日曜に休憩スペースを設置して、日替わりカフェを営業し、にぎわいづくりを目指す。
訪れた人も「こういう景色がたくさん生まれるのは、すごくうれしい」と口にしていた。
み~つを運営するのは、古町地区で街づくりを手がけてきた金澤李花子さん。金澤さんは「100年近く、ここは古町の中心地で、色々な方の思い出の詰まった場所。何かやれるということは、とても価値があると思っている。バトンを受け継いだと思って、期間限定でやろうと思っている」と話す。
古民家生かしインバウンド取り込みへ
にぎわいのバトンをつなごうと思っているのは金澤さんだけではない。
「古町が今のように少し静かになってきているのは、私としてもずっと歯がゆく思ってきた」
新潟市議を前にマイクを握って話すのは、誕生したばかりの地域まちづくり開発会社「ふるまち樽拳」の小田嶋壽信CEOだ。
ふるまち樽拳は今年6月、古町地区の活性化を目指して県内4つの企業が共同で立ち上げたまちづくり会社。小田嶋CEOは「樽拳というのはお座敷遊びの一つ。そういうにぎやかしさを街にもう一回取り戻したい」と社名に込めた思いを話す。
その活性化策として小田嶋CEOが挙げたのが、古町地区に残る古民家を改装した分散型ホテルの開業だ。「外国人旅行者の方々が一般的な旅行ではなく、日本の文化に触れながら宿泊をして、地場の文化を楽しむという風潮が最近見受けられる。古民家再生が一つの手段になるのではないか」
分散型ホテルは、複数の建物を客室やフロントとして利用するもので、愛媛県大洲市では、すでにこの取り組みが始まっていて、インバウンドも取り込むなど話題となっている。
町が一つのホテルになる分散型ホテル。
ふるまち樽拳は、花街エリアにある「美や古」をフロントにして、古くから残る街並みを生かした分散型ホテルをつくる考えで、2024年度の着工を目指している。
「古町の古民家も目星をつけているところがいっぱいある。皆様が最大公約数で望むその未来を創っていきたい」市議に向け、こう話した小田嶋CEO。
会議後には「思っていたよりすごくいい反応があった。皆さんすごく協力的だと思うし、今後に期待できるのでは」と議会の支援に期待を寄せた。
再開発ビルが完成する2029年度を見据え、官民一体の活性化策が加速しそうだ。