就航は2024年1月31日に
「札幌丘珠線の就航日は2024年1月31日。水曜日になるが、“ようやく”ということで定めさせていただいた」
新潟市東区の新潟空港で開かれた会見の冒頭、トキエアの長谷川政樹社長は、延期が続いていた就航日の予定を明らかにした。
トキエアにとって最初の路線となる札幌丘珠線。
当初は2022年度中の就航を目指していたが、国へ空港運送事業許可を申請する際に「2023年6月末」を就航予定時期として設定した。
しかし、国の審査の遅れなどを理由に就航は度々延期に。今年8月以降は、就航の見通しが立たない状況が続いていた。
こうした中、11月上旬には保有する2機の耐空検査を終え、残る審査となる整備規定の改定作業に力を注いできたトキエア。
その結果、「作業工数というか、進め方等々を詳細に確認をして、見通しが立った」と長谷川社長は整備規定の改定が年内に終わる見込みであることを明かした。
就航後は“毎日運航”も視野に
年明けごろから国による確認が始まる見込みで、こうした調整時間も考慮した結果、トキエアは就航日を来年1月末とする方針を固めた。
長谷川社長は「当然、夏とかに搭乗する想定で、旅行の計画を立てていた人もいると思う。“いつぐらい”と言っておきつつも、なかなかそれが達成できなかったというのは、非常にご迷惑をおかけして申し訳なく思っている。我々も、もう“これ以上変更はなく”というところで、今回、関係セクションとこの日にちを定めさせていただいた」と話す。
運航については、夏ダイヤと同じく、週4日・1日2往復を計画している。
一方、毎日運航したい考えもあり、詳細なダイヤについては、現在も国との調整が続いていると長谷川社長は話す。
「パイロットや整備のマンパワーもある。こういったところで最終的な体制の確認をしているというところ。デイリーで飛ばせれば、非常に我々としても、客にとっても非常に利便性は上がるんじゃないかと思う」
就航日決まり…知事も安堵の表情
ようやく定まった就航日。新潟県はトキエアへ11億円6000万円の融資をしていて、花角知事は11月29日に開かれた会見で、就航日の発表に対して明るい表情を見せた。
「ようやく就航日を確定できたのはよかった。何においても安全に運航できるようしっかり準備を進めてもらいたいと願っている。もちろん融資をしている者としては当然(経営状況を)見ていくが、トキエアとしてはしっかり自立してやっていけるという、見込み・自信を持っているのだと思う」
「さらなる変更はないか」疑問視する質問相次ぐ
これまで就航予定日の延期を繰り返してきたトキエア。
国の審査が終わっていない段階での就航日の発表に、会見ではさらなる変更・延期はないか質問が相次いだ。
記者:
この1月31日の日付が覆ることはないのか
トキエア 長谷川政樹 社長:
関係セクションとの調整の中での日程感なので、ここを就航日として対応していく
記者:
航空局の確認が年明けから。1月31日で間に合うのか
トキエア 長谷川政樹 社長:
間に合う想定で動いている
余裕を持って就航日を設定しているという長谷川社長だが、今後の懸念は審査の進捗だけではない。
1機体制でのスタートに
トキエアが現在保有する機体は2機。そのうち1号機は、整備のため11月20日から台湾へと飛び立ち、現在新潟にあるのは2号機だけだ。
1号機の整備は、来年1月20日ごろに終わり、新潟へと戻る予定だが、その後は入れ替わりで2号機が台湾へと飛び立つ。つまり、1月末の就航日には1機体制で臨まなければならないのだ。
1機体制は1週間~10日ほど続く見込みで、トキエアが目指す「毎日運航」が実現すれば、その負担は大きい。
また、トキエアによると1号機の整備作業は11月29日現在始まっておらず、終了日が数日ずれ込む可能性もあるという。
トキエアの安全統括管理者・宮崎邦夫取締役は「1日・2日、微調整が必要になるかもしれないが、今のところ大きくずれるということは考えていない。2月7日くらいから向こうの旧正月が始まって、整備作業が全部止まってしまったりするので、それに引っかからないように微調整をさせていただいている」と話す。
資金繰りを心配する声も
就航が延びていることを受けて、社外からは資金繰りについて心配する声もあがっている。
関係者によると、就航が1カ月延期するごとに、約1億円の経費がかかっており、1月末が先延ばしの限度だという。
こうした中、長谷川社長は資金については「問題ない」とした上で、黒字転換については当初計画していた2024年度から、2025年度に遅れるとした。
「当然だが、余裕があるわけではない。多少、余裕を持たせた形で資金調達をさせてもらったので、そういった中で、今対応をしているところ。このタイミングでご協力いただいた企業もあり、資金は大丈夫ということで就航に向けて調整をしている」
さらなる路線開設 信頼回復への展望は
もちろん黒字転換に向けては各所からの出資だけでなく、今後のさらなる路線開設も必要となる。
長谷川社長は、札幌丘珠線の就航から2カ月後を目処に仙台線の開設を。その後は神戸や中部、そして佐渡線の開設を2024年中に目指す考えを示した。
それでも、これまでの過程で失った信頼は決して小さくはない。
長谷川社長は「安全に日々運航していくことの積み上げ以上のものはないのかなと思っている。日程の変更もあったが、とにかく安全運航を重視して就航を目指しているので、安心感を持って搭乗いただきたい。全社一丸となって頑張っていければと思う」と不信感を払拭していく決意を述べた。
目指す搭乗率は7割。チケットの予約販売は、来年1月に始まる予定だ。