「魂の殺人…」性被害者が語った悲痛な思い 泥酔した同僚女性に淫らな行為・盗撮 元新潟県警幹部に“懲役7年”求刑

去年、新潟市内で酒に酔った同僚の女性警察官に対し、同意を得ずに淫らな行為をした罪などに問われている元新潟県警幹部の男の裁判が2月6日、新潟地裁で開かれた。裁判では被害者代理人から被害者の言葉として「結婚に向けた顔合わせが白紙になった」「毎日歯がゆくて悔しい気持ち」など悲痛な訴えが読み上げられた。

泥酔した同僚女性に淫らな行為・盗撮…

不同意わいせつ、不同意性交等、性的姿態等撮影の3つの罪に問われているのは、元新潟県警本部組織犯罪対策課の次長で、現在無職の梅川稔被告(56)だ。

梅川被告(2023年10月送検時)

起訴状などによると、梅川被告は去年10月6日午後10時20分すぎ、県警内部の飲み会後に新潟市内を走っていたタクシーの車内で、泥酔して抵抗できない20代の同僚女性に対し、同意を得ずにわいせつな行為に及んだ上、そのまま女性の自宅に行き、玄関先で淫らな行為を行い、その様子の一部を撮影した罪に問われている。

梅川被告(2023年10月送検時)

1月11日に開かれた初公判では、起訴事実について認めていた梅川被告だが、「ここ10年で一番酔っていた。また、普段から酒を飲んでも顔に出ないとか、本当に酔っていたの?とよく言われていた。今回もどれくらい飲んだのかわからないくらい大量の飲酒をしていたのでかなり酔っていた」と話し、犯行時の記憶はほとんどないと話していた。

性犯罪の被害者支援も担当していた被告

被告人質問と意見陳述が行われた2月6日の裁判では…

被害者代理人:
被告人は被害者支援の業務を5年間やっており、性犯罪の被害者が被害後、どんな心境になるか分かるはず。被害者はどんな状態になってしまう?

梅川被告:
平凡な生活を取り戻すのに非常に時間がかかる。食事・睡眠も普通にとれなくなり、男性不信に陥ってしまうこともある

被害者代理人:
特に性行為を撮影された被害者の多くは、映像が残ることに苦しんでいなかったか?

梅川被告:
直接、そういった方からは話を聞いたことはなかったが、精神的なショックは大きいと想像できる

被害者代理人:
供述調書で犯行後の翌朝、「とんでもないことをした」と激しく後悔したとあったが、その日はどのように過ごした?

梅川被告:
ずっとモヤモヤを抱えたまま、不安な気持ちで過ごしていた

被害者代理人:
初公判では、3連休明けの火曜日に事件について自分から話すつもりだったと言っていたが、どうするつもりだった?

梅川被告:
幹部の人に相談するつもりだった

被害者代理人:
取り調べ当初は被害者の自宅にいたのは1~2分ほどと話していたが、実際にはもっと長い時間いた。正直に話すつもりだったと言っていたが、正直には言っていなかった?

梅川被告:
はい、逮捕前までは話していませんでした。記憶もあいまいでどれが本当の記憶か私もわからなかったので

代読された“被害者の言葉”

その後、被害者代理人からの意見陳述が行われ、被害後も苦しむ日々を送っている被害者の言葉が代読された。

被害者の言葉(代理人代読):
事件があった10月5日の飲み会は私より階級が上の方ばかりで、私が一番下の立場にありました。所属も違い、ほとんど関わったことのない方たちでもありました。飲み会に参加するにあたって『コップが空になっていたらお注ぎしにいかなければならないし、お酒を注いでもらうときはコップを空にしてお注ぎしてもらわないと失礼だよ』と以前にそれが礼儀だと教わったことから、必死にそうした対応をとっていました。

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一次会が終わる頃、テーブルをはさんで座っていた犯人から『二次会に1時間だけ付き合え』と言われ、なぜ私が誘われたのか全く理由がわかりませんでした。私は次の日も仕事で立場上断れなかったことから、他の先輩から犯人に行きたくないことを伝えてもらおうとしても、伝えることをやんわり断られ、私がトイレから帰ってくると先輩方は帰ったことから、二次会に行くしかありませんでした。

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一次会でも相当飲んでいたので、二次会ではほとんど記憶がなく、次に記憶があるのが自宅アパートの居間で寝ていたところでした。
しかし、犯人からキスをされタクシーを止めて降りたこと、コンビニエンスストアで泣きながら『止めてください』と言い続けていたことはうっすら記憶にあり、キスされた感触もリアルだったことから夢ではないと思いました。

警察を続けていく以上、上司に申告すれば県警内部で噂されると思いましたが、今後、犯人には会いたくないと思い、キスされたことを上司に報告しました。上司からは「こういった事件の場合、キス以上のことをされていると覚悟した方がいい」と言われ、覚悟はしていましたが、覚悟以上のことをされていました。

被害の実態が分かってくるにつれ、強い吐き気に襲われました。性犯罪は女性を性のはけ口として道具のように扱うことから、『魂の殺人だ』と教えられてきました。当時そのことを指導してくれたのは犯人でした。犯罪の被害に遭われた弱い立場の人を守りたいと思い、刑事を目指して刑事になれましたが、今は周りの目が怖くて、県警の大半の人が知っていると思うと仕事に行けません。捜査の過程で大勢の人が犯人が撮影した動画などを見ていると考えるとそういった方に会いたくないと思うし、相手も気まずいと思います。また、私が酒を飲みすぎたのが悪い、非があると思われていると考えるのも辛いです。

今後、性犯罪者支援をする際にはフラッシュバックするのではないかと思うと不安で、毎日歯がゆくて悔しい気持ちになります。被害を受けた後は、妊娠や性感染症のことについて悩まされ、頭痛や吐き気といった症状のほか、眠れない日もあります。眠れない日に目を閉じると犯人の顔やキスされた感触を思い出すこともありますし、コンビニエンスストアの看板を見ると吐き気や頭痛がします。

なぜ自分がこんな被害に遭わなければならなかったのか、毎日涙が止まりません。取り調べなどで犯人が犯行翌日も普通に家族と過ごし、変わった様子などがなかったと調書にあり、犯人は平然と生活していたことも聞いています。私は近い将来結婚を予定していた彼氏と両親との顔合わせも予定されていましたが、今回の事件を受けて白紙になりました。初公判の内容を代理人から聞きましたが、犯人は『酒に酔っていて覚えていない』とどこか他人事のように話しているというのも聞きました。

今回の事件を受けて犯人を絶対に許すことはできないし、できることなら一生刑務所に入って罪を受け止めてほしいと思います。

梅川被告は両手を膝の上に乗せ、うつむきながら目を閉じ、代読される言葉を聞いていた。

「非常に悪質…」 検察側の求刑は7年

検察は論告で事実関係はいずれも証明十分とした上で「被告人は自分より下の立場にある被害者が、抵抗困難な状態にあることを認識しながら、徐々に行為をエスカレートさせた。タクシー内でわいせつ行為にあっていることに気付いた被害者が泣きながら『この辺りで帰して』などと言っていたにもかかわらず、犯行をやめなかったばかりか、被害者を自宅に送った後には、酔って意識のない被害者に対して『大丈夫?』などと聞いて、あたかも介助するかのような状況を装いながら性交等に及び、動画撮影までしたというのであって、その犯行態様は執拗かつ、卑劣で醜悪である。立場を利用し、被害者を自分の性欲を満たすために蹂躙し、その性的尊厳を傷つけたものであり、態様は極めて悪質である」と情状関係について主張。

さらに「刑事事件捜査における女性警察官の重要性は周知の事実であり、職務上の地位が上位である男性警察官が将来のある若手女性警察官に対して行った本件犯行は、警察への信頼を裏切る行為ともいえ、新潟県警という組織に対しても相当の影響を与えたと考えられ、結果は重大であると言わざるを得ない。

被告人は性犯罪捜査にも関与した経験があり、性犯罪の被害者が被害後にどのような状況に陥るか熟知していたはずである。そのような被告人が自己の性欲を満たすために、犯行に及んだという点で、経緯動機にも酌量の余地は一切ない。被告人は公判において、酒に酔ったことが本件犯行の一因である旨の供述をしていたが、仮に酒に酔っていたとしても、長時間にわたり、執拗に被害者を弄んだその犯行態様からすれば、性欲を満たす目的及びそれを果たそうとする強固な犯意があったことは明らかであり、その意思決定についても強い非難に値する」と続けたほか、被告人質問においても「酒に酔って覚えていない」などと述べてあいまいな供述にとどまるなど真摯な反省があるかも疑わしいとして「再犯に及ぶ恐れは否定できない」と訴えた。

そして、検察側は梅川被告に対し、懲役7年を求刑した。

被害者代理人は「犯行が悪質かつ卑劣。被害者が『絶対に許せない』と話し、被告人からの謝罪もすべて断っていること、将来を踏みにじられた被害者感情の峻烈などを考えると可能な限り長期刑に処するのが相当」と述べた。

一方、弁護側は事実関係については争わないとした上で「被告人は捜査の期間中も公判請求されてからも、弁護士を通じて被害者への慰謝措置を講じようとしてきたが、慰謝措置を講じられないまま、今日に至っている。被害者は代理人を通じて損害賠償命令を申し立て、判決終了後、速やかにその手続きが進行する。被告人の資力には限界があり、被害者の満足する賠償金を支払えない可能性もあるが、できる限りの賠償を行う予定である。

また、自業自得とは言え、被告人は30年以上にわたって勤務してきた警察官を懲戒免職され、実名で繰り返し事件が報道されてきた。被告人は自己の犯行が被害者に肉体的にも精神的にも筆舌に尽くしがたい苦痛を与えたことを悔悟しており、その犯情の悪質さから実刑も覚悟している。弁護人としては、裁判所が被告人の汲むべき事情を適切に評価して、適切な量刑とするように切に希望する」と話した。

被告人が最後に語った言葉「気の緩みから…」

論告・弁論が終わり、小林謙介裁判官から何か言いたいことはあるかと問われた梅川被告は、謝罪の言葉を口にした。

梅川被告:
自分の気のゆるみから犯行に及び、被害者に深い傷を負わせて申し訳なく思っている。被害者の家族や関係者にもご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げる。また、県警の信頼を大きく傷つけた。組織犯罪対策課で、次長職につく私が突如休職することになり、本部長や課長、課員には迷惑をかけてしまった。重大な罪を犯し、職場から懲戒免職されたことで生活も一変した。損害賠償や家族の生活を支えるためにも一刻も早く新たな職に就きたいと考えている。この度は被害者の方、大勢の人に迷惑をかけて申し訳ありませんでした

判決は3月14日に言い渡される。