明確な治療法見つからず…国指定の難病ALS
3月9日のデンカビッグスワンスタジアム。アルビレックス新潟のホーム開幕戦を特別な思いで迎えた家族がいる。
「10月とか肌寒くなってきて一切外出していなかったので、本当に4~5カ月ぶり?」
こう話すのは、新潟市東区に住む米田実花さん。夫の誉史さんとともにスタジアムを訪れた。
「(夫は)ALSになって初めてアルビの試合を見るので、とても楽しみに興奮している」
9年前にALS・筋萎縮性側索硬化症を発症した誉史さん。
ALSは全身の筋肉が次第に動かなくなる国指定の難病で、明確な治療法は見つかっていない。
新幹線を貸し切り家族旅行へ!
米田さん家族と出会ったのは2022年11月。新幹線を貸し切って夢を叶えた家族旅行に密着したのが始まりだ。
運転士:
大きくなったら一緒に運転しようね
この時の家族旅行で夢を叶えたのは新幹線の運転士を目指す諒祐くんと琉晟くんの兄弟。
思い出の日から約1年半…家には当時の思い出が書かれた絵が飾ってあった。
なつかしのあさひ号での出来事は今でも色褪せない家族の思い出だ。
過酷な闘病生活も「家族を置いていけない」
この日、誉史さんの家を訪れたのは永井博子医師。月に一度、定期的に診察に訪れている。
「この病気の方は呼吸器の機能が落ちてくるのが一番心配なので、胸に異常がないかとかもね…」
ALSの患者は一人一人症状や進行の早さが違うため必要な処置も異なり、誉史さんの場合、呼吸器が常に必要な訳ではないが、栄養はお腹から人工的に取り入れている。
「まず、胃ろうを作ってまでも生きるかどうかということを本人が選択しないといけないし、呼吸状態も悪くなるから、呼吸器をつけて生きていくかどうかの選択も迫られる。過酷と言えば過酷な病気」と永井医師は語る。
過酷な闘病生活でも誉史さんが頑張れる理由は24時間体制で見守るヘルパーや医師、そして家族の存在だ。
実花さんは「(家族がいなければ)延命の選択はしていないと言っていた。奥さんがいて、子どもがいて、置いていけないというかって」と誉史さんの言葉を代弁した。
12年ぶりのスタジアム観戦に笑顔
そんな誉史さんは毎年、叶えたい夢を決めている。その一つがアルビのホーム開幕戦を見るという夢だったと実花さんは話す。
「毎年私にメールを送ってくる。今年はこれをしたいというのを2~3つ送ってくるんですけど、アルビレックスの開幕戦を見るというのが一番に挙げられていた」
子どもの頃からアルビファンだったという誉史さん。
しかし、病気を発症してからはビッグスワンで観戦することが出来ず…この日、12年ぶりに訪れ、自然と笑みがこぼれていた。
久しぶりのビッグスワンで大好きなアルビの熱狂ぶりを感じることができたようだ。
「良かったね、また行こうねとずっと言っていた」と実花さんは笑う。
諒祐くんの卒園式迎え…「これからも夢を応援していきたい」
一つの夢が叶った日から2週間…この日もまた一つ、家族にとって大切な思い出が増える日。
「いってきます!」と諒祐くん。お父さんからの返事をじっと待ち、「いってらっしゃい」との言葉をもらって、こども園の卒園式に向かった。
お母さんが見守る中、大きな返事で卒園証書を受け取る諒祐くん。
小学生になったら「勉強を頑張りたい」と宣言。理由はもちろん、新幹線の運転士になる夢を叶えるためだ。
実花さんは「よくここまで大きくなったなって思って。友達をいっぱいつくって、元気よく毎日学校に行ってくれたらそれだけで」と話す。
卒園式を終えた諒祐くんは、真っ先にお父さんに卒園を報告した。
誉史さんも嬉しそうな表情を浮かべ…
米田誉史さん:
ありがとう。卒園本当におめでとう
お父さんは卒園式を見届けることができなかったが、諒祐くんの成長を感じ、家族の大切な思い出となったことに間違いない。
米田誉史さん:
子どもたちが新幹線の運転士になりたいという夢を持っているので、これからも家族で色々経験して夢を応援していきたい
子どもたち2人の夢が叶うまで…応援し続けることが誉史さんと実花さんの夢だ。