多くの人に愛されるレトロ自販機
燕市の国道116号沿いにあるホテル公楽園。
1階にはテーブルとイスのある飲食スペースが設けられていて、その奥には年季を感じるレトロな自販機が並んでいる。
中でも最も古いのが約45年前に導入したトーストサンドの自販機だ。
公楽園を運営する山修商店の山田修英代表取締役は「自販機目当てに来られる方は、ほとんどこの機械を目当てに来る。トーストサンドはうちの看板の販売機」と太鼓判を押す。
ラインナップは、ハムサンドとチーズサンドの2種類で価格はどちらも300円。
ボタンを押すと調理が始まり、1分弱待つと素手で持ち続けるのが難しいほど熱々のトースターがアルミホイルに包まれて提供される。
取材をしたこの日も焼きたてのトーストを求めて客が訪れていた。
「配送業をしているが、公楽園の前の道路を通るときは必ず寄って、コーヒーとトーストを買うのが恒例。たまに食べたくなる味」
現在の両替機は1000円札・500円玉のみ対応
少し色あせ、その見た目からも年季が入っていることが感じられる自販機は、昔は10円玉や50円玉も使うことができたが、硬貨を選別する機械が壊れてしまい、今は100円玉硬貨しか使うことができない。
併設されているゲームコーナーのゲームも対応しているのは100円玉ばかり。
そのため、もし紙幣しか持っていなかった場合は近くに設置されている両替機で1000円札を100円玉に両替する。
ただ、両替機が対応しているのは1000円札と500円玉のみだ。
以前の両替機は1万円札や5000円札といった高額紙幣にも対応していたが、4年前に故障してしまった。
山田代表取締役は、「新型コロナウイルスが流行し始めたころで先行きが不透明だったため、1000円札と500円玉にのみ対応している安価な中古の両替機を購入した」と当時を振り返る。
そのため、高額紙幣はフロントにいる従業員が1000円札に両替して対応している。
新紙幣対応の両替機 費用は数百万円
そんな中、あと1カ月を切った新紙幣の発行。
偽造防止の強化や、文字が大きく誰もが利用しやすいユニバーサルデザインの導入が目的だが、山田取締役は「導入するメリットは分からない。われわれ中小零細企業が負担に思うようなことばっかりで、どうしてそういうことになってしまうのかなと。食券でやっている飲食店も負担が大きい」と不満を漏らす。
新紙幣対応の両替機にかかる費用は数百万円と試算されていて、新型コロナ以降、売り上げが3分の1ほどに落ち込んだという公楽園にとっては大きな負担となる。
新両替機の導入見送り“スタッフ”が交換対応
そのため、公楽園では現在の高額紙幣の対応と同じように、新紙幣を旧紙幣に交換し、両替機を使用してもらう対応を取る。
店側にしてみれば、紙幣を交換する手間がかかる上に、旧紙幣を多くストックしなければならない。
山田取締役は「どのくらいで新紙幣が流通するのか分からないが、今後どうなるか分からないため、新紙幣対応の両替機の導入は見送りたい」と話す。
その一方で、「こういう業態の店舗がどんどん減っているので、やれるうちは続けていきたいという気持ちでいっぱい」と強調した山田取締役。
新紙幣への対応が迫られる中、民間への負担が重くのしかかっている。