水10ドラマ「ブルーモーメント」から学ぶ! 線状降水帯?台風?気象予報士にこれからの時期に注意すべき気象現象を聞く!

クライマックスを迎える水10ドラマ「ブルーモーメント」。
甚大な気象災害によって脅かされる人命を守るべく、知恵と知識を駆使して現場の最前線で、命がけで救助に立ち向かうSDM(特別災害対策本部)メンバーの奮闘物語だ。

最終回を控える中、ドラマでは観測史上最強クラスの台風が東日本に近づいていることが晴原柑九朗(山下智久)と雲田彩(出口夏希)の解析で判明する。では、実際これからの時期にはどのような気象現象に注意するべきなのか、NST Newsタッチの石黒菖気象予報士に伺った。

NST Newsタッチの石黒菖 気象予報士

NST Newsタッチの石黒菖 気象予報士

 

Q 石黒気象予報士はブルーモーメントを見ていますか?

毎回見ています!最近の水曜日の楽しみです!⛈

台風は遠くに離れていても雨雲の元となる暖かく湿った空気が流れ込みやすく、前線を活発化するなど、危険な存在です。最近だと2019年の台風19号の被害があります。この時も台風は関東地方を通過しましたが、上越地方を中心に記録的な大雨となり、県内に初めて大雨特別警報が発表されました。

ちなみにこの時もJETT(気象庁防災対応支援チーム)が派遣されています。ブルーモーメントでいうSDMですね。

一方で、台風の発生が遅いからといって台風の上陸数が少なくなるわけではありません。それどころか帳尻を合わせるようにハイペースでやってくる可能性も考えられます。

特に近年は地球温暖化などの影響で、海面水温が平年よりも高くなっています。

海面水温が高いと台風がより発達しやすく被害が大きくなる可能性があります。

また雨の影響がなくても台風は反時計周りに風が吹いているので、台風の東側で南風が強まることで、フェーン現象が発生し、記録的な高温になるおそれもあります。

去年は台風による雨の影響は少なかった一方、記録的な猛暑でしたよね。この一因には台風によるフェーン現象も入っています。

梅雨が明けても雨と暑さ、油断はできないですね。⛈

2019年10月10日の気象衛星画像

2019年10月10日の気象衛星画像

 

Q これからの時期、注意すべき気象現象を教えてください

まもなく梅雨がやってくるので大雨、そして暑さです。

6月15日(土)は長岡市で最高気温35.4℃、新潟市秋葉区で最高気温35.3℃と、6月にも関わらず今年初の猛暑日(35℃以上)になりました。この先7月にかけても気温が平年よりも高くなる傾向なので、この先の蒸し暑さも気が抜けません。

 

Q 新潟県内は雨がほとんど降っていない。今年の梅雨入りは遅い

確かに梅雨入りは全国的に平年よりも遅れています。
梅雨入り発表は地方ごとに発表されるんですが、新潟県内は北陸地方になるので北陸地方の梅雨入り発表になります。余談ですが、新潟が北陸地方になるのは他の富山県、石川県、福井県と気候が似ているからです。知っておくとちょっと自慢できるかも知れません…!

 

例年、北陸地方の梅雨入りは6月11日ごろなので、すでに一週間以上遅れています。
石黒独自予想によると、北陸地方の梅雨入りは6月22日頃と見ています👀

お天気を分析中

梅雨入りが遅いからといって降水量が少なくなるわけではありません。
過去には梅雨入りが遅れたにも関わらず、平年よりも雨量が多くなった年もあります。

ちなみに梅雨入りが平年より11日遅れた沖縄地方も、那覇市で1時間に94.5ミリの猛烈な雨が降り、6月の観測史上最大となりました。

梅雨入りが遅いのと雨の量、また梅雨明けの遅さなども関係性はないです!

 

今年の梅雨は晴れれば暑い!雨が降れば強い!のようなメリハリ型になるかもしれません。新潟県内も大雨となる可能性は十分にあります。

梅雨を告げるタチアオイ(魚沼市)

梅雨を告げるタチアオイ(魚沼市)

Q 梅雨の時期には“線状降水帯”という言葉をよく聞くようになりましたね

線状降水帯=災害級の大雨ととらえてほしいです。
局地的に災害級の大雨をもたらす現象です。

新潟県内に線状降水帯が発生した2022年8月3日~4日かけては村上市・関川村・胎内市を中心に記録的な大雨となり(3日~4日の総降水量が関川村下関で568.5ミリ、村上市高根で413ミリ)大雨特別警報が発表されました。

線状降水帯が予想された場合には半日前に予測情報が出ますが、これが今年から大きく変わりました。

2022年8月3日の雨雲レーダー

2022年8月3日の雨雲レーダー

 

 

今までは予想情報が地方ごとに出されていました。

新潟県内であれば「北陸地方で線状降水帯が発生し、大雨災害発生の危険性が急激に高まる」といった内容だったのですが、それが今年からは地方ではなく、「新潟県」など地域をしぼって情報を出すことになりました。

より危機感を持って雨への備えることができるようになりますね。

ただこれだけは覚えて頂きたいのが、
「線状降水帯=災害級の大雨」でも、「災害級の大雨=線状降水帯」ではありません。

線状降水帯だけ気をつけていれば大丈夫というわけではなく、線状降水帯でなくても大雨になる場合もあります。予測情報が出た時点で、線状降水帯が発生していてもしないなくても、ほとんどの場合大雨になるので事前に備えることが大切です。

Q 石黒気象予報士にとって身近な「気象」が題材のドラマ「ブルーモーメント」もいよいよクライマックスですね

1話ごとに発生する気象現象や災害は異なりますが、どの現象も実際によく起こるものなのでドラマを見る時はいつも緊張します。専門用語も入っているので気象予報士から見てもとてもリアルに感じます。

例えば8話で山下智久さん演じる晴原柑九郎が熱雷(強い日差しが原因で起こる雷)を水蒸気観測で予想していましたが、あの機械も実際の天気の研究で使われているものなんです。

特にドラマを見て「わかる!」と思うのが、その場にいる人への危機感の伝え方です。
ブルーモーメントでは度々住民の方に避難を呼びかけるシーンが登場します。

私も普段天気を伝える上で、新潟県内の方の命を守りたいという使命を持っています。どう伝えたら1番伝わるか、備えてもらえるか、自分のことだと思ってもらえるのか、と頭を悩ませています。

 

8話では他にも、出口夏希さん演じる雲田彩が気象予報士試験に合格したという話があって、彼女の成長も日々感じられるように、ブルーモーメントを見て、「天気のこと」や気象予報士という資格に興味を持ってもらえる方が増えるといいなと思います。

気象に詳しい方もそうでない方もハラハラドキドキと考えさせられるドラマだと思います!放送回も残りわずかですが、最後まで目が離せないです!

一方で、ドラマタイトルの「ブルーモーメント」は日の入り直後や日の出直前に空が青く見える現象ですが、実は今の初夏の時期は、ぜひ夕日も見て欲しいです。

この時期は、段々梅雨が近づいている影響で、空気中に水蒸気が増えてきています。

水蒸気が多い時は太陽の光(紫・藍・青・緑・黄・だいだい・赤)の中でも、特に赤色が散乱(光が様々な方向に広がること)されるため、空が鮮やかな赤色になるんです。

よく晴れた日よりも、少し雲が広がっている日の方が赤く染まった雲を楽しめます。

ブルーモーメント 6月4日午後7時半ごろ NST本社から撮影

夕日 6月17日午後7時すぎNST本社から撮影

夕日 6月17日午後7時すぎNST本社から撮影

 

ぜひ日の入り前は空を見上げてほしいです。
この時期ならではの幻想的な空が見られるかもしれません。

毎週水曜日10時から放送のドラマ「ブルーモーメント」は残すところあと2話。SDMが総力をあげ、厳しい気象現象にどのように立ち向かっていくのか目が離せない。