赤い橋を渡ると、突如として視界が開けた。深い緑に囲まれた山々の懐に、モダンな佇まいの建物が姿を現す。新潟県長岡市が誇る名湯、蓬平温泉の老舗旅館「和泉屋」だ。新潟市から車でわずか1時間。NGT48大塚七海が明治時代から続く温泉旅館で、美肌の湯と評判の温泉を体験取材した。
「長岡の奥座敷へようこそ」温泉情緒あふれる玄関先で
玄関に足を踏み入れると、「いらっしゃいませ」と温かな声が迎えてくれた。和泉屋の案内役、田崎さんだ。
「私どものお宿、蓬平温泉は長岡の奥座敷として親しまれている温泉地でございます」
モダンな館内を案内されながら、田崎さんは語る。「県内外から多くのお客様にお越しいただいています。特に冬は雪深い地域ですので、雪見風呂を楽しみにいらっしゃる方も多いんですよ」
日帰り入浴も可能だという。4時間たっぷり滞在できるので、温泉はもちろん、館内でのんびり過ごすこともできる。
まるで「小さな宮殿」8名まで泊まれる特別室を潜入ルポ
エレベーターで3階へ。南館特別室「楓」に案内された瞬間、その広さに息を呑んだ。本間(和室)から次の間、そして洋室まで一続きになった贅沢な造りだ。
「この部屋は2世帯でお使いいただけるようなお部屋になっております」と田崎さん。
窓際に立つと、季節の移ろいを感じさせる山々の風景が目に飛び込んでくる。驚くべきことに、部屋は一周できる構造になっている。「お子様がよく走り回っています」という言葉に、試しに一周してみると、まさに「鬼ごっこ」が楽しめそうな広さだ。
岩造りの露天風呂で出会った「美肌の湯」の秘密
取材のハイライトは、貸切露天風呂「やま野」だ。岩造りの露天風呂に足を踏み入れると、周囲の緑が目に優しい。愛らしいたぬきの置物が、どこか温かな雰囲気を演出している。
湯に手を入れた瞬間、独特のとろみを感じた。「今日のお湯はぬめりがあります。とろみがいつもより強いです」という言葉の意味が、身をもって理解できる。
この蓬平温泉の泉質は「アルカリ性単純硫酸冷鉱泉」。一般的な温泉と大きく異なる点は、そのpH値の高さにある。pH値が7の中性の温泉や、低いpH値の酸性温泉とは違い、高いpH値を持つアルカリ性のこの温泉は、美肌効果が特に高いという。
露天風呂に浸かりながら、硫黄成分が含まれているはずなのに、その匂いがほとんどしないことに気づいた。代わりに感じるのは、心地よい湯の温もりと、周囲の木々のさわやかな香り。
「やま野」以外にも「星の湯」「月の湯」など、様々な温泉を用意しているそうだ。それぞれに趣が異なるという温泉を、時間の許す限り巡ってみたくなる。
温泉通も唸る「究極の入浴法」を伝授
取材中、温泉を120%楽しむための秘訣も教えていただいた。それは意外にも、入浴前のお茶の時間だという。
「温泉に入ると気づかないうちに汗をかいています。脱水症状を防ぐために、入浴前の水分補給がとても大切なんです」
なるほど。お部屋でいただく一服の茶は、単なるもてなしではなく、理にかなった温泉旅館の知恵だったのだ。
長岡の奥座敷と呼ばれるこの地で、150年以上もの間、人々を癒してきた温泉の歴史に思いを馳せる。美肌効果抜群の名湯と、心温まるおもてなし。蓬平温泉は、現代を生きる私たちに、本当の贅沢とは何かを静かに語りかけているようだった。