「ふのりって、海藻なんですか?」——長野で育ち、そばには慣れ親しんできた女性が、新潟で初めて出会った“へぎそば”。その一杯に詰まっていたのは、知らなかった食文化と、ちょっとロックな人生の選択でした。
開店前から行列、へぎそばとの出会い
長野から新潟へ引っ越してきたばかりのNGT48中田麻実さんは、ある人気そば店に向かっていました。長野県出身で、これまで数えきれないほどのそばを食べてきた彼女ですが、新潟の「へぎそば」は初体験。開店前の店先にはすでに車が並び、期待が高まります。
店内に案内され、運ばれてきたのは、木の器「へぎ」に美しく盛られたそば。「見てください、このツヤを。本当に美味しそう」と目を輝かせながら、箸を手に取ります。ひと口すすった瞬間、思わず声が漏れました。「長野で食べたそばより本当にツルッツルしてて、それでいて風味も良くて、すっごい美味しいです」と中田さんは話します。
食感の秘密は“ふのり”という海藻
その驚きの食感の秘密は、つなぎに使われている「ふのり」という海藻にありました。ふのりは、青森県の北半島で年に一度しか収穫されない希少な海藻で、十日町や魚沼地方では織物の糊付けにも使われてきた素材です。
「だから緑っぽいんですか?」と彼女も納得の様子。そばのつなぎとしてふのりを使うことで、独特のツルツルとした喉ごしと、しっかりとした歯ごたえが生まれるのだそうです。新潟のそば文化の奥深さに、思わず「ふのり、覚えておきます」とつぶやきます。
天ぷらとの相性も抜群
そばと一緒に提供されたのは、サクサクの天ぷら。エビの天ぷらを抹茶塩でいただくと、「エビがプリップリで、衣がサクサクでもう最高です」と中田さんは笑顔を見せます。
へぎそばの繊細な味わいに、天ぷらの香ばしさと塩味が絶妙にマッチし、食事の満足度をさらに高めてくれます。
“ロックな選択”と“ふのりを使った選択”
中田さんは、かつて歯科衛生士の専門学校に合格していたものの、別の道を選びました。「これが人生だなって思った。やりたいことを貫き通すのがいいかなって」。その選択を“ロック”と表現する彼女の言葉には、迷いのない強さがありました。
新潟で出会ったへぎそば。その一杯には、食文化の違いだけでなく、自分の選択を肯定する力が込められていたようです。「ふのりをそばに混ぜてみようと思った、その発想が最高にロックなんですよね」と語る中田さんの言葉は、まるで自分自身に言い聞かせているようでした。