『猛暑』『水不足』から一転… “トリプル台風”が発生 秋の“台風シーズン”どうなる?気象予報士に聞く『異常気象』の理由

記録的な猛暑が続き、観測史上最も暑い夏となった2025年。残暑も厳しい一方で、ゲリラ雷雨などによって記録的な大雨を観測する地点も見られている。また、9月、10月は1年で最も台風の接近が多い季節…秋の台風シーズンの注意点などを石黒菖気象予報士に聞いた。

猛暑から一転…記録的な大雨に 秋は台風シーズン

Q 観測史上最も暑い夏から一転、各地で大雨になっている理由は

今年は夏の高気圧が例年よりも強い状況が続いた。梅雨の時期でも続いた日差しの影響で、海面水温も平年より高くなっている。海は一度温まると冷めにくいという性質があるので、9月現在も日本海の海面水温は例年のこの時期よりも約3℃高くなっている。海面水温が高いと雨雲の元となる水蒸気の供給が多くなるので、より雨雲が発達し、激しい雨や雷雨をもたらす積乱雲が発達しやすい

 

Q なぜ秋に台風が多くなるのか?

台風は海面水温が26℃~27℃で発生する。先述したように海面水温は一度温まると冷めにくいという性質があるので、秋の時期でも夏の日差しで台風が発生する海面水温の高さが維持されている。また、台風は自分で進路を決めることができないという特徴がある。日本の南の海上にいるときは夏の高気圧の縁を回る風に流される。夏の時期は高気圧がドンと本州付近を覆うことが多いので、台風が発生しても近づきにくいという特徴があり、高気圧が台風をブロックする。ただ、秋の時期になるとだんだんと夏の高気圧の勢力が弱まり、本州への張り出しを弱めていく。そうなると台風も本州付近に近づきやすいという特徴がある。

秋の台風の特徴・今年の特徴は?

Q 秋の台風の特徴

秋の時期は夏の暑い空気と秋の涼しい空気がせめぎあう時期なので、本州付近では秋雨前線が発生しやすい。台風が近づいてくると、この前線に向かって暖かく湿った空気を送り込むので台風が近づく前から、もくしくは台風が離れていても大雨をもたらすことがある。また、台風は本州付近までやってくると、上空の偏西風に流されて東に進みやすいのだが、夏と比べて秋は偏西風が強いので夏よりも速いスピードで本州に向かってくる可能性もある。

Q 今年の特徴と10月以降も注意が必要か

今年は台風1号の発生が観測史上5番目の遅さとなった。ただ、その後は平年を上回る数の台風が本州に接近しており、発生が遅い=台風の数が少ないというわけではなさそう。特に今年は夏の高気圧の勢力が弱まる時期が平年より遅い&海面水温が平年より高いので、いつもよりも遅い時期でも台風の進路に目を向けていく必要がある

異常気象が続く要因?「PJパターン」とは

Q 雨かと思えば猛暑になったり…なぜ気候が安定しないのか

夏の高気圧が強いのが1番に挙げられる。今年の夏の特徴に「PJパターン」というものがある。PJパターンとは太平洋(pacific)と日本(Japan)の頭文字をとったもの。これは太平洋・フィリピン近海の海面水温が平年よりも高いことで、ここで対流活動が活発になる。そうなると、上昇した空気が日本の南の海上で下降気流となって夏の高気圧の勢力を強める。この高気圧が張り出せば猛暑となる要因にもなり、また前線がやってくれば高気圧の縁を回って暖かく湿った空気を送り込む力も強くなり、前線を刺激しやすい。

Q 今後の注意点は

記録的な空梅雨から一転、9月は秋雨前線や台風の影響で、全国的に記録的な大雨になっている。9月24日現在もまだ夏の空気と秋の空気がせめぎあっている状態で、秋雨前線による雨の降り方には注意をしてほしい。また、現在、台風18号、19号、20号が発生している。それぞれ本州には大きな影響はない見込みだが、今後発生する台風やその進路には注意が必要。

石黒菖 気象予報士(ウェザーマップ所属)

NST News タッチ(毎週月~金・午後6時9分~/新潟県内放送)に出演。気象予報士・気象防災アドバイザー・防災士の資格を持つ。富山県出身、趣味はちいかわ・ランニング・ドライブ