1982年(昭和57年)11月15日に上越新幹線が開業して、2025年で43年。開業当日の新潟駅では盛大な式典が開かれ、NSTでは上りの一番列車が出発する新潟駅ホームとコンコース広場、列車内、長岡駅、大宮駅ホームを生中継でつないだ番組を放送した。NSTのアーカイブから懐かしい画像とともに上越新幹線開業を振り返る。
■上越新幹線基本計画決定 約10か月後に工事開始
1971年(昭和46年)1月に上越新幹線の基本計画が決定され、その年の11月には湯沢町と群馬県高崎市で上越新幹線の工事の起工式が行われた。
湯沢町で行われた起工式では、当時の亘新潟県知事が鍬入れを行い、工事の安全と無事を祈った。

工事着工から6年目の1977年(昭和52年)に、小千谷市の全長約8.6キロの魚沼トンネルで初めてレール敷設工事が始まった。軌道は枕木を使わず直接コンクリートの上にレールを敷く「スラブ軌道」がとられた。

山岳トンネルとして当時は世界一の長さだった大清水トンネルは1973年(昭和48年)5月に工事がスタート。全長約22キロの大清水トンネルは、当時の日本のトンネル掘削技術の粋を集めて工事が行われ、6年目の1979年(昭和54年)1月に貫通した。
上越新幹線は新潟-大宮間の約4割がトンネルであることから「モグラ新幹線」とも呼ばれていたという。
■新幹線車両が新潟に試験走行
1980年(昭和55年)10月には雪に対する走行テストに備え、上越新幹線の車両の第一陣が新潟港から7.5キロ離れた新幹線車両基地に大型トレーラーで運ばれた。
運搬作業の終わった車両は新潟車両基地で組み立てられ、一か月後の11月には新潟-長岡間に試験電車が走った。

試験電車にはたくさんの測定計器が積み込まれ、開業に向けた様々なデータが集められた。
新潟駅を出発した試験電車は新潟市を抜けると徐々にスピードを上げ、最高速度は110キロに達した。営業速度の210キロに到達したのは試験走行から約1か月後の12月だった。
■上越新幹線最大の難関 “雪の克服”
上越新幹線は雪の克服が最大の難関といわれていた。
1973年(昭和48年)から実験が行われていたが、この頃はまだ雪克服の目途は立っていなかった。
翌1974年(昭和49年)に消雪システムが開発されて雪克服の目途が立った。
降雪検知器で各地域の雪の量を知ることができ、雪が降ることによってボイラーで温められた水が自動で散水され雪を溶かす。

雪を溶かした水はほとんどが再び貯水槽に集められ再利用される仕組みだ。
新潟県内が大雪に見舞われた1980年(昭和55年)の冬、試験列車で雪克服のための試験が行われた。
■最後まで難航した“中山トンネル”
国鉄では開業に向けた準備が着々と進められてきたが、最後まで難航したのが群馬県の中山トンネルだった。
14.857キロの中山トンネルは1972年(昭和47年)2月に掘削作業を開始。だが、1974年(昭和49年)と1979年(昭和54年)の2回にわたる異常出水と軟弱地盤のために、世界でも難しい工事だった。山岳トンネルとしては異常出水は珍しく、トンネルのルートを2回も変更した。

掘削作業を開始して以来、1981年(昭和56年)の12月23日にようやくトンネルは貫通した。軌道やすべての工事が終了したのは上越新幹線開業の年の6月になってからだった。
■工事開始から11年かかりようやく全通
1971年(昭和46年)の工事開始から11年かかり、上越新幹線開業の年の4月に新潟-大宮間270キロのレール全てが繋がり締結式が行われた。

締結式は用地買収の遅れから最後まで工事が残されていた埼玉県伊奈町の東高架橋で行われた。こうしてレールが一本に結ばれた上越新幹線は、この年の7月から新潟-大宮間で試運転が始まる。
■「新幹線ギャル」がPR!82年11月15日朝に 一番列車が出発
開業の準備が着々と進んでいた新潟駅では、オーディションで選ばれた「新幹線ギャル」と呼ばれる女性たちが上越新幹線の事前PR活動をしていた。「新幹線ギャル」たちは開業セレモニーに携わったり、案内役としても働いていた。
当初の計画では1978年(昭和53年)に開業される予定だった上越新幹線。
オイルショックや国鉄の財政難等で何度も開業日が伸び、同時開業の予定だった東北新幹線から遅れること約半年、総工費1兆7千億円をかけて着工から11年経った1982年(昭和57年)11月15日に待望の開業を迎えた。

新潟駅発の一番列車、上りあさひ190号は、14番ホームから朝6時45分に大宮に向けて発車。一方、大宮駅でも一番列車の下りとき301号・午前6時35分発の出発式が17番ホームで盛大に行われた。
1962年(昭和37年)に上越線に登場し、高崎線を経由して4時間40分で新潟-上野間を結んでいた在来線「特急とき」は廃止され、「とき」という名称だけが上越新幹線に引き継がれた。
■東京駅乗り入れからどんどん便利になる上越新幹線
1985年(昭和60年)3月に上越新幹線は上野駅へ乗り入れ、1991年(平成3年)6月に東京駅へ乗り入れを開始。
昭和初期の新潟-上野間は上越線の急行列車で7時間10分。
昭和中期に新潟-上野間は上越線「特急とき」で4時間40分。
そして現在、新潟-東京間は約1時間30分だ。
列車車内座席のコンセントやWi-Fiが使えるようになり、切符やICカードをかざすことなく通過できる「顔認証改札機」の実証実験が11月に新潟駅と長岡駅で始まった。どんどん便利になる上越新幹線に期待だ。
(新潟ニュースNST編集部)










