新潟県医師会広報委員会の協力でお伝えしている『医師に聞く』。今回は高齢者の心不全について。年齢のせいと見逃しがちな心不全の症状。普段からできる予防策や必要な検査などについて医師に聞いた。
重大な病気につながる恐れのある症状“心不全”とは?
現在、日本人の死因の1位を占める“がん”。次いで多いのが心臓病を含めた循環器系の病気だ。中でも高齢者が気付きづらく、重大な病気につながる恐れのある症状が“心不全”である。
新潟大学循環器内科学分野の猪又孝元(いのまた・たかゆき)主任教授は「心不全は病名ではなく状態名。裏を返すと、そういう状態をきたす原因がたくさんあり、その原因ごとに色々な状況が生まれてくる」と話す。
普段、私たちの体の中では心臓がポンプの役割を果たし、酸素や栄養分を含んだ血液を全身に送り届けている。

しかし、心不全になると何らかの異常でそのポンプ機能が低下。体全体に十分な栄養分を送り出せなくなってしまうのだ。
ただ、こうした状態に気づくことが高齢者の場合は難しいという。
“年齢”のせいでは…高齢者が気付きづらい心不全の症状
心不全のメインの症状は息切れだが、仮に息切れと感じた場合、若い人よりも年のせいだと思う高齢の方が多い。そのため、どうしても心臓が病気というふうに思いがたいところが一番の問題点なのである。
そもそも、症状として表に出るまで時間がかかるという特徴がある心臓の障害。
高齢者の場合、心不全の症状が出ても年齢のせいではないかと考え、認知しづらく、病気の発見が遅れてしまう事もあるのだという。
また、心不全になると息切れのほかに体がむくむ、体重の増加などの症状も見られる。
猪又教授は心臓の病気について「ある時点を超えると病気の進行が0から一気に100になるみたいな特徴がある。しかし、100になった時点では命取りになっているような場合も。本当は水面下では動いているが、そこは高齢者の場合は余力も少ないために、なかなか回復が望めない場合も多い」と話す。
日頃の“運動”で心不全を予防
発見が遅くなればなるほど回復が難しくなる心臓の病気。
予防のために私たちが日頃から気をつけることはいくつかあるが、中でも特に重要となるのが“生活習慣病”に気をつけることだ。
生活習慣病そのもの自体をきちんと管理していくと同時に、運動することが非常に大切になる。運動機能というのは、心臓機能と関係ないようだが、全て密接に関係しているのだ。
猪又教授によると、7000歩~8000歩を目安としたウォーキング、また軽い筋力トレーニングなど、目安として心拍数110までの運動が好ましいということだ。
その際、ふくらはぎの筋肉をしっかり鍛えるということを意識するといいという。

ふくらはぎは、心臓の状況を安定させるための非常に重要な筋肉。日常生活を送る中でかかとを上げ下げするだけでも十分な予防につながる。
“早期発見”が重要!検診やかかりつけ医に相談を
仮に心不全の症状が出ても、近年、治療の方法や選択肢は広がってきているというが、常に健康への意識を持ち、検査などで早期発見をすることが重要だ。
中でも患者の血液を採取して行うBNP検査が推奨されていて、心不全の診断や重症度が数字で分かることから、有効な治療のためにも実用的で信頼できる方法の一つなのである。
病気になって初めて慌てるというのが常だが、心臓の病気は悪い意味でも決着が早いので、早く見つけることが重要だと話す猪又教授。検診やかかりつけの先生に相談するなど常にアンテナを張る必要がある。
また、本人のみならず周りの家族がきちんと声がけをすることも第一歩として大事な心がけだ。
少しでも体の不調を感じたらそれは心不全のサインかもしれない。自分は大丈夫と油断せず、早期発見と予防を心がける必要がある。









