ある日の新潟駅南口の夜。緑色のネオンで縁取られたトゥクトゥクが、まるで異国の街角から抜け出してきたかのように道路を走っている。車体には「日本一周」の文字。運転席には緑色の髪をした若い男性の姿があった。彼の名は「緑ともや」。TikTokフォロワー11万人を抱える旅系インフルエンサーだ。
アンチコメントをきっかけに始まったこの日本一周の旅は、今や彼の人生そのものとなっている。月収は最大350万円、平均でも100万円。SNSでの発信を生業とし、トゥクトゥクという乗り物に全てを懸ける27歳の若者は、なぜこの道を選んだのか。新潟駅前で偶然出会った彼に、その素顔と夢を聞いた。路上で次々と声をかけられる様子からは、SNSを超えたリアルな人気も感じられた。旅を通じて人々を笑顔にしたいという彼の想いは、どこまで届くの
だろうか。
アンチの一言が人生を変えた「トゥクトゥク日本一周」の始まり
「きっかけはTikTokライブやってて、僕のアンチ、言うたら嫌いな人が『お前トゥクトゥクで旅してみろや』みたいな感じで言ってきて。おっしゃ!やったるわ!って始めたのがきっかけですね」
緑ともやは、そう屈託なく笑いながら語る。TikTokでライブ配信をしていた時、心ない視聴者からの挑発的なコメント。多くの人なら聞き流すか、傷つくかもしれないその言葉を、彼は人生を変えるチャンスに変えてしまった。
すぐに行動に移した彼は、大阪のトゥクトゥク販売店を調べ上げ、現地へ直行。「全部緑で」というオーダーメイドで車両を発注した。緑色へのこだわりは徹底している。名前も「緑ともや」、リスナーからの差し入れも全て緑。SNSで活動する上で「普通すぎても覚えられん」という思いから、自分に色をつけることを意識したのだという。
2025年2月にトゥクトゥクが届き、同年3月から本格的に日本一周をスタート。ただし梅雨の時期は雨が多いため、1ヶ月だけオーストラリア縦断ヒッチハイクに挑戦するなど、柔軟に活動の場を広げている。
300万回再生のドッキリ動画、月収最大350万円の「適当」戦略
TikTokでの初投稿は、母親へのドッキリ動画だった。「それが300万再生いって、これヤバ!みたいな。TikTokやっていけるわみたいな」と当時を振り返る。
その後も「適当にやってた」という彼のスタイルは、むしろSNS運営の教科書を覆すものだ。「SNSやってる人で再生数とかいいね数とかで悩む人多いですけど、僕は適当にやってたんで」と語る姿からは、数字に囚われず楽しむことの大切さが見えてくる。
気になる収入について尋ねると、「月ほんまにバラバラすけど、大体100万円ぐらいはあるかな。マックスだと350万円ぐらいです」と明かした。TikTokでの広告収入やライブ配信の投げ銭、企業案件などが主な収入源だ。
毎日夜は街中でTikTokライブを配信しながら視聴者と交流する。この日常的な発信が、安定した収益を生み出している。「やめられんすね、ほんま」という言葉には、この生活への満足感が滲んでいた。
路上で次々と「緑ともやさんですよね?」─リアルでも実感する人気
新潟駅前での取材中、驚くべき光景が繰り広げられた。わずか数十分の間に、次々と通りすがりの人々が声をかけてくるのだ。
「なんかYouTubeでちょっとたまに流れてくるんで」と話す親子連れ。「長岡のライブ見たもん」というファンの女性も。
緑ともやは誰に対しても気さくに対応し、求められればサインや写真撮影にも快く応じる。「Tシャツやっけ? なんでもいい?」とサインを求められると、「あ、いいよ」と笑顔で応える。この気取らない姿勢が、SNS上だけでなくリアルでも人々を惹きつける理由なのだろう。
「高速も90キロ出せる」─トゥクトゥクという選択の意外な実用性
「お仕事は?」という素朴な質問に、緑ともやは即座に答える。「お仕事はもうトゥクトゥクです」
トゥクトゥクといえば、タイなど東南アジアで見かける三輪タクシーのイメージが強い。日本の道路を走れるのか、という疑問に対しては、「あ、全然。もう高速も乗れますし。90キロぐらい出るし、全然」と自信満々だ。
実際、道路交通法上も問題なく、普通自動車免許で運転できる。オープンエアの車体は季節の風を直接感じられ、旅の臨場感を高めてくれる。同時に、街中で圧倒的な存在感を放ち、SNS映えも抜群だ。
「だから名前も緑ともやっていう名前やったり」と語るように、緑のトゥクトゥクは彼のブランディング戦略の核心部分でもある。移動手段でありながら、看板でもあり、コンテンツでもある。この三位一体の機能が、彼の活動を支えている。
残すは東北・北海道、そして最終ゴールの兵庫県へ
「あと残すところこれから東北、北海道、でまた東北帰ってきて関東、中部、関西で僕の住んでる兵庫県」
日本一周の旅は、着実に進行している。すでに多くの都道府県を回り、各地で人々との出会いを重ねてきた。新潟でのこの日も、旅の途中の一コマだった。
興味深いのは、彼が単なる観光ではなく、各地で生活者としての視点を持っていることだ。毎晩街中でライブ配信を行い、地元の人々と交流する。差し入れを受け取り、励ましの言葉をもらう。SNSを通じてつながった人々が、実際に会いに来てくれる。
「○○県の皆さんはよかったら会いに来てください」というメッセージを発信し続けることで、各地にファンコミュニティが生まれていく。これは従来の旅とは全く異なる、双方向性を持った新しい旅のスタイルだ。
「旅系インフルエンサーで1番になりたい」─緑ともやが描く未来
「最終的なゴールは何ですか?」という問いに、緑ともやは迷わず答えた。
「シンプルに旅が好きっていうのとSNSやるのがすごい好きなんで。旅系インフルエンサーで1番になりたいっていう夢を掲げてて」
彼の目標は明確だ。ただフォロワー数を増やすことではない。「旅系と言えばなんか緑ともややんね」と言われるような存在になること。そして、その影響力を使って社会に何かを還元することだ。
「もっと旅人が増えたりとかで、旅を通していろんな人が笑顔になったりとかしたらなんかハッピーやなみたいな」という言葉には、彼なりの社会貢献の形が見える。旅の楽しさを伝え、人々の行動を後押しし、その結果として世の中がより楽しくなる。それが彼の描く理想だ。
27歳の若者が、アンチコメントをきっかけに始めた挑戦は、今や一つのライフスタイルとして確立されつつある。SNSという武器と、トゥクトゥクという個性的な乗り物を手に、彼は自分だけの道を切り開いている。
インフルエンサーという言葉が一般化した今、その在り方は多様化している。オフィスで戦略を練るのではなく、路上で風を浴びながらリアルタイムに発信する。数字に囚われず適当にやりながら、結果として大きな収益を生み出す。計画より行動を優先し、失敗を恐れず前に進む。
あなたは、アンチの挑発を人生を変えるチャンスに変えられるだろうか。そして、自分だけの「色」を見つけ、それを貫き通す勇気を持っているだろうか。
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