90歳で初の大会出場「楽しむ!」
新潟市西区にあるスイミングスクール。
ゆっくりと大きく腕を回し、水面を捉えていくのは、太田雅子さん(90)だ。
「子どものころはプールなんてないから、海で泳いでいたの」と話す太田さんは、遠泳が得意で1日に1000mを泳ぐこともある。
「県マスターズスイミングフェスティバル」に初めて出場することを決めた太田さんの出場種目は、90歳以上の部の100m自由形と50m平泳ぎ。
大会出場に備え、個人レッスンを受けてきた。
太田雅子さん(90):
ターンでみっともないのは嫌だなと思って、教えていただいた。そこが、ちゃんとできればいいなと思っている
90歳で大会に初出場することについて聞くと、舌を出すおちゃめな表情を浮かべながら、答えてくれた。
太田雅子さん(90):
ここ(90歳)までくると、友達はみんなあの世だから…。そういう年なんだよね。それなら「できるだけ楽しもうよ!」と思っている
一方、87歳の宝住絹子さんは、水泳が生活の柱となっている。胸にあるのは、2021年に亡くなった夫から送られた言葉だ。
宝住絹子さん(87):
毎日ダッシュスイミングスクールに通っているから、主人が「お前はダッシュが好きなんだな」、「俺が死んでもダッシュだけはやめるなよ」と言っていた。それで去年は大会に出た
2022年、85歳~89歳の25m背泳ぎで36秒57の大会新記録を樹立。今回は同種目のほか、25m自由形に出場する。
宝住絹子さん(87):
去年より1秒でも早ければ一番だけど、満足に向こう岸まで行って、タッチできるのを願っている
大会では「魚のように泳ぐ!」
3歳違いで、姉妹のように思い合っているという2人。
太田雅子さん(90):
自分でやってきたはずのものをちゃんと人前でできればいいわね!
宝住絹子さん(87):
大会を前に習ったのは、「魚のように泳ぐ」ということ!
「魚のように…、魚のように」と声を合わせ、水をかく仕草をしながらイメージを膨らませていた。
2人の大会結果は
迎えた大会当日。87歳の宝住さんは、85歳~89歳の25m自由形で32秒55(2人中2位)。
2022年、大会新記録を打ち出した25m背泳ぎでは、37秒17(2人中2位)。
2022年のタイムには及ばなかったが、亡き夫との約束から出場を決めた「県大会」という大舞台で自分の力を出し切った。
そして、出場した女性選手で最高齢だった太田さん(90)は、100m自由形で3分22秒80(グループ1人中1位)の大会新記録を樹立。
50m平泳ぎは2分11秒05(グループ1人中1位)で、こちらも大会新記録となった。
さらに、その頑張りを讃えられ、太田さんには「努力賞」が贈られた。
年齢にとらわれることなく「魚のように泳いでみたい」と、あくまで自分のために泳ぎ続ける太田さんと宝住さん。
水しぶきをあげながら人生を楽しむ姿は、まぶしいほどに輝いていた。