子育て助ける「ファミサポ」
新潟市中央区にある保育園。夕方になると、多くの保護者が続々と我が子を迎えにやってくる。
その中で、2人の女性が3人の子どもを見守る姿があった。
女性のうち、一人は3人の子どもの母親。もう一人は、「ファミリーサポート」の提供会員だ。
ファミリーサポート・通称ファミサポは、子どもの送迎や見守りをお願いする「依頼会員」と子どもの世話をする「提供会員」をマッチングする自治体の支援事業で、新潟県内20の市町村で実施されている。
新潟市で夫とともに、2歳の長女と生後7カ月の双子の女の子を育てているAさん。
夫妻の実家はともに新潟市外にあり、頻繁に助けを求めることが難しいため、週に1~2回ファミサポを利用している。
依頼会員 Aさん(3児の母):
きっかけは双子を出産したこと。やはり外からのサポートが必要かなと思って、ファミサポに相談に行った。オムツひとつを替えてもらうだけでも、ミルクをあげてもらうだけでもありがたい。ちょっと何かしてもらうだけでありがたい
新潟市のファミサポは、保護者がいないときの利用を基本としているが、Aさんは双子がいることから特例として、提供会員と一緒に見守りをすることが認められている。
ファミサポの利用にかかる料金は市町村で異なるが、新潟市では、依頼会員が提供会員に支払う謝礼は平日1時間700円。
ファミサポ実施市町村の佐渡市も提供会員への謝礼は1時間700円だが、依頼会員の負担は400円で、差額は市が助成している。
いずれも、ベビーシッターよりうんと安価だ。
Aさんの子育てをサポートする提供会員は古俣桂子さん。大学生・中学生・小学生の3人の子どもの母親でもある。
(Q.提供会員になろうと思ったきっかけは?)
提供会員 古俣桂子さん:
もともと子どもが好きで、お子さんと関わるような仕事ができたらいいなと、ずっと思っていた
新潟市の提供会員は、救命救急や児童福祉などに関する3日間の研修を受けたあと、正式に登録される。
依頼会員である3人の子どもの母親・Aさんは、古俣さんがサポートに入る日の心境を噛みしめるように語った。
依頼会員 Aさん(3児の母):
心の余裕がだいぶあるし、とても心強い
その言葉を聞いた古俣さんには笑みがこぼれる。
提供会員 古俣桂子さん:
すごくうれしい。やっていたことが実ったというか、ちょっとでも助けになればいいと思い、始めたことなので
依頼に対し提供会員が不足…
Aさんと古俣さんを結びつけたファミサポだが、課題もある。
新潟市の依頼会員と提供会員の登録数(2023年3月末)を見ると、子育てをお願いする依頼会員が2524人いるのに対し、支援する側の提供会員は427人。
依頼会員の中には緊急時に備えて登録だけを行い、実際にサポートを依頼していない人も多いため、登録数の違いを単純に比較することはできないが、提供会員が潤沢にいるとは言えない。
新潟市では、依頼に対して提供会員が見つからないケースが月に25件ほど生じている。
また、新型コロナ禍の3年間は人との接触を避ける必要があったことから、提供会員の登録数が伸び悩んだという。
新潟市こども政策課 大谷道佳 課長:
色々なニーズに応えるためには、提供会員の数がもう少し増えてほしい
新潟市以外の自治体も、その多くが提供会員の不足を課題として抱えている。
サポートだけではなく子育ての相談も
ファミサポは、お迎えや預かりといった実際の手助けに加え、提供会員が依頼会員の子育ての相談役と成り得る点にも魅力がある。
子どもたちのお迎えまでの時間、Aさんと古俣さんが話題にしていたのは、子どもの「抱っこ」についてだった。
提供会員 古俣桂子さん:
うちの長男は歩かなかったので、ずっと抱っこだった。ベビーカーも嫌いだし
依頼会員 Aさん(3児の母):
キツイ!
提供会員 古俣桂子さん:
出かけるときは歩かせることを諦めて、最初から抱っこしていた。その子が大学生になれるから大丈夫ですよ
提供会員の子育て経験そのものが依頼会員への大切なアドバイスとなっている。
「助け合い」で子育てしやすい地域に
古俣さんが保育園のお迎えに同行したこの日、Aさんは長女のリクエストに応えて、いつもより遠回りをして家路に着いた。
依頼会員 Aさん(3児の母):
ベビーカーを押してもらうだけでも負担が違うし、お散歩も自由がきくのでありがたい。長女の行きたい方向に行かせてあげることができてよかった
提供会員 古俣桂子さん:
お子さんの笑った顔を見ていると、こっちもやりがいを感じるし、提供会員をやっていてよかったなと思う
かつては、隣近所で行われていた助け合いを現代で可能にするファミサポ。
提供会員の増加でファミサポが活性化することは、子育てをしやすい地域づくりにつながっていくはずだ。