【新潟】“ミスターアルビ”本間勲氏が語るCB稲村隼翔発掘の舞台裏「オファーの手応えは正直無かった」

「てっぺん」を目指して戦った2024年シーズンを終えたアルビレックス新潟。目標のタイトル獲得には届かなかったものの、JリーグYBCルヴァンカップではクラブ初の準優勝に輝いた。このようなクラブの躍進のウラには、選手の活躍を支えるチームスタッフの尽力がある。今回は、新戦力の活躍でチーム力向上を図る強化部の本間勲氏を取材。現役時代にはアルビのキャプテンを務め「ミスターアルビレックス」とも呼ばれた本間氏の現在の仕事や、活躍が目覚ましい稲村隼翔をスカウトした経緯、裏方としてチームを支えるやりがいについて聞いた。
NST新潟総合テレビ

「てっぺん」を目指して戦った2024年シーズンを終えたアルビレックス新潟。目標のタイトル獲得には届かなかったものの、JリーグYBCルヴァンカップではクラブ初の準優勝に輝いた。このようなクラブの躍進のウラには、選手の活躍を支えるチームスタッフの尽力がある。今回は、新戦力の活躍でチーム力向上を図る強化部の本間勲氏を取材。現役時代にはアルビのキャプテンを務め「ミスターアルビレックス」とも呼ばれた本間氏の現在の仕事や、活躍が目覚ましい稲村隼翔をスカウトした経緯、裏方としてチームを支えるやりがいについて聞いた。

■"ミスターアルビ"の現在は強化部でスカウト

強化部スカウトの本間さん

新潟県胎内市出身の本間勲氏は、2000年に当時J2だったアルビでプロデビューした。

2003年にはJ2優勝・J1昇格に貢献し、2007年からはキャプテンも務め、サポーターからは「ミスターアルビ」の愛称で親しまれた。2017年限りで現役を引退してからは、アルビのサッカースクールのコーチを務めたほか、2020年からは強化部のスカウトとして活動している。

本間氏は「基本的に新人と高校生・大学生を見ているので、そういう大会やリーグ戦がある場合はそちらに行っています。学生なので、春休み、夏休みっていうのは長い期間外に出て試合を見ますが、普段のスケジュールだと基本的には土日の試合が多いので、土日外行って試合を見て戻ってくるっていう形のスケジュールが多いですかね」と現状について話す。

日本全国を飛び回り、将来有望な選手を探して回るなか、選手のどのような点を見ているのだろうか。

「特徴のある選手っていうのは、ぱっと目に入ってきますし、あとはその選手が今のチームにとってプラスになるのか。チームに必要なのか、チームのやり方と合う特徴なのかっていうところを考えた中で、その選手を追っていくかどうするかと考えることが多い」

■来季加入の稲村を発掘!出会いはスカウト1年目の秋

稲村選手

2025年シーズンの加入が内定していて、2024年シーズンは特別指定選手としてピッチに立ったDFの稲村隼翔も、本間氏がスカウトした選手の一人だ。

「稲村は自分がスカウトになって初めて見に行った時にまだ高校生だったが、自分がスカウトを始めたタイミングが年の終わりくらいだったので、11月くらいに見に行きました。高校の前橋育英の試合を見にいったときが最初で、『左利きで長いボール蹴れて、まだ線は細いけど面白い選手だな』っていう印象があったなかで、東洋大学への進学が決まっていますという話を聞きました」

その後、本間氏が稲村のことをマークするようになったのは大学に入ってからのことだった。

「稲村が2年生のときに東洋大学の試合見にいったときに、『左利きのセンターバックの稲村』っていうので高校のときに見ていた選手が試合に出るようになったんだなっていうところで試合みるようになったというのがスタートのところですかね」

そして、貴重な左利きのセンターバックがチーム編成のなかでも必要だということになり、オファーを出すこととなった。

「チームのやっている、ボールをつなぐというところに彼の特徴がフィットするんじゃないかなと。あとは長いボール蹴れるっていうところが大きいですね。短いパスだけじゃなくて長いボールが出てくると相手も守りづらくなるというところもあるので」

■“ミスを怖がらない”ことがオファーきっかけの1つに

日本中を飛び回る間で新潟での練習を見学する本間さん

稲村の大きな特徴でもある左足からの長いフィード。通ればチャンスを生み出すことができるが、そのパスを奪われれば一転してピンチを生んでしまうことになる。

「長いボールを蹴れる選手っていうのはたくさんいるんですが、どうしてもミスが出てしまうと次やらなくなってしまうというのがあります。ですが、彼の場合はミスしても次のミスを怖がらずに同じ状況でも同じボールをトライできる。そこは彼の一番いい部分じゃないかなって思っていますね」

この”ミスを怖がらない”特徴があったことも、オファーを出すことになった大きな理由だという。

「ミスを引きずってしまうと、ビルドアップだけじゃなくて守備のところでも迷いも出てしまうと思いますし、そうすると相手にとっては楽になってくると思うので、もし寄せにいってかわされたとしても次寄せにいって、逆に奪いきるっていうそれくらいの気持ちがないといけないと思うので、そういう強い気持ちを持った選手だなとは感じていますね」

■「このチームで満足せず上を目指して欲しい」

本間勲さん

さらに、稲村が他の選手からアドバイスを素直に聞き入れる点も、本間氏は好感を持っていた。

「サッカーやる中でどこかで壁にはぶち当たるかなとは思うんですね。そのときにどう乗り越えるかって自分でいろいろ考えることも必要ですし、人から言われたことを自分で理解してプレーに表現していくかってところも大事だと思います。次のプレー、自分の成長につなげていくっていう繰り返しができる選手がどんどん伸びていくと思っているので、そういう能力はすごく高いんじゃないかなと思いますね」

そんな活躍目覚ましい稲村だが、オファーを出したとき、本間氏は内心、不安な状況であったとも語ってくれた。

「キャンプも呼んでいて、自分たちがやっているサッカーに対しての共感っていうのはすごくしてもらえているなと思っていました。ただ、オファー出したときに、すぐに決めてもらえるなっていうような手応えは正直なかったです」

待つこと1か月ほど。稲村選手からオファーを受けるとの回答があった。

「長引かずに決めてくれてよかったっていうのはありますね。声かけて返事返ってくるまでっていう期間は、僕自身嫌な時間といいますかね、早く連絡来ないかなとはいつも思うので。キャンプで新潟のサッカーに魅力を感じてもらえていたとは思っていたので、思ったよりも時間かかったなっていうのはありますけど。逆に安易に決めるんじゃなくて、しっかり考えて『このチームでやりたいと強くしっかりと考えて決めてくれたんだろう』と思っています」

本間氏のように、「ミスターアルビ」と呼ばれるような選手を目指してほしいかと尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「いや、そんなことはないです。このチームで出ることで満足せず上をどんどん目指していってもらいたいなと思いますし、このチームから日本代表に入るような選手に育っていってもらいたいなと思っていますね。ほかのチームに行って日本代表っていうパターンは何回か過去にもありましたけど、このチームから日本代表に入って、新潟というよりも日本を代表するようなセンターバックになってもらいたいなと思っています」

■“金の卵”発掘がスカウトのやりがい

稲村のようにピッチで活躍選手を発掘することがスカウトのやりがいと話す本間氏。今後も金の卵を発掘するべく、全国各地を奔走する。

「自分は主に新人を担当しているので、自分がとった選手が活躍するっていうのはすごくうれしいですし、逆に責任感もあります。チームとしても若い選手が出てくることによってチーム内の競争も高まるし、全体のレベルも高まってくると思うので、しっかりといい選手をこれからもとってそういう選手が活躍するというところでチームの力になれたらなと思います。ひとりでも多くピッチ上で活躍できる選手を全国飛び回って探していきたいなと思っています」

最終更新日:Mon, 30 Dec 2024 20:00:00 +0900