「鬼畜の所業」約5年にわたり全介助の20代女性に性的暴行…元介護職員の男に検察が厳しく非難 下された判決は懲役14年「人格や尊厳を顧みない犯行」

重度の障害があり、全介助が必要な20代女性に対する準強制性交等の罪など6つの罪に問われている元介護職員の男の裁判。論告で検察側は男の一連の行為は「鬼畜の所業」と非難し、懲役18年を求刑した。一方、弁護側は自首による減刑を認めるべきとし、懲役7年が相当であると主張した。こうした中、新潟地裁が下した判決は懲役14年。最後に裁判員が男に送った言葉とは…
NST新潟総合テレビ

重度の障害があり、全介助が必要な20代女性に対する準強制性交等の罪など6つの罪に問われている元介護職員の男の裁判。論告で検察側は男の一連の行為は「鬼畜の所業」と非難し、懲役18年を求刑した。一方、弁護側は自首による減刑を認めるべきとし、懲役7年が相当であると主張した。こうした中、新潟地裁が下した判決は懲役14年。最後に裁判員が男に送った言葉とは…

■介護職を悪用して20代女性に性的暴行

細海敏也 被告

準強制わいせつ、準強制性交等未遂、準強制性交等、不同意性交等、性的姿態等撮影、不同意性交等致傷の6つの罪に問われているのは、新潟市南区に住む元介護職員の細海敏也被告(44)だ。

起訴状などによると、細海被告は2019年から約4年半の間、重度の障害があり、全介助が必要で抵抗ができない20代女性に対して、デイサービスの送迎時に自家用車を三条市内のパチンコ店の駐車場に止め、その車内でわいせつな行為や淫らな行為を繰り返し、また怪我を負わせ、その行為を動画撮影した罪などに問われている。

初公判で起訴内容についての認否を問われ「間違いありません」と答えた細海被告。

今回の裁判では、細海被告が警察に自首した2023年12月14日の事件以外の事実について、自首が成立するか否かと量刑が焦点となった。

■検察側「鬼畜の所業」 懲役18年を求刑

検察側

被告人質問で「性的欲求と女性の身体に興味があった」と話していた細海被告。

論告で検察側は、抵抗できない状態の女性に対する細海被告の一連の行為について厳しく非難した。

検察側:
抵抗することや明確な意思表示ができない被害者の心情を一切顧みない、自己の欲求を満たすだけの身勝手極まりない犯行であり、回を重ねるごとに犯行をエスカレートさせていった極めて乱暴なもので鬼畜の所業。4年半もの長期間にわたり繰り返し、被害者の尊厳を蹂躙し、被害者の心と体を深く傷つけ、その家族にも自責の念を与えた。

さらに弁護側が主張する“自首”については…

検察側:
警察に自首した際に提出した動画データは削除されており、復元しなければならなかったことや、黙秘をしていたことは真相の解明に何も寄与しておらず、自首は成立しない。

こう話し、細海被告に対して懲役18年を求刑した。

■弁護側「自首による減刑認められるべき」

弁護側

一方、弁護側は無差別的でなかった点に加え、自首による減刑も認められるべきだと主張した。

弁護側:
暴行や脅迫をしていない点や複数の被害者に、無差別的に性的暴行に及んでいない。自首がなかった場合の捜査がどうなっていたかや証拠となるスマートフォンが処分されていたらどうなったかという点から、自首をしてきた細海被告の自首による減刑を認めるべき。

こう話し、懲役7年が相当であると述べた。

■細海被告「一生癒えることのない傷負わせた」

証言台

そして、最後に証言台に立った細海被告は…

細海被告:
私は当時、障害者を介護する立場でありながら、障害者の人権を踏みにじる卑劣な行いを何度も繰り返し、被害者を苦しめ、一生癒えることのない傷を負わせました。もう二度と同じ過ちを繰り返すつもりはありません。被害者と被害者の家族が一生苦しんでいくことを忘れません。本当に、本当に申し訳ございません。心より深くお詫び申し上げます。

■自首は成立すると認定も…

新潟地裁 小林謙介 裁判長

こうした中、新潟地裁で開かれた判決公判。

新潟地裁の小林謙介裁判長は、2023年12月14日の事件以外の事実について自首が成立するか否かという争点に対して、「自首は成立する」と認定した。

しかし…

新潟地裁 小林謙介 裁判長:
被告人が犯行の重要な証拠である犯行状況を撮影した動画等を削除した後に自首したもので、捜査機関はそれらの復元作業を余儀なくされるなどしたことに照らせば、被告人の自首が犯罪の捜査や犯人の処罰に大きく寄与したとまでいえず、自首減軽は相当ではないとした。

■「被害者の人格や尊厳を顧みない犯行」と断罪

争点についてこう説明した上で、介護職を悪用した極めて悪質な犯行だと厳しく非難した。

新潟地裁 小林謙介 裁判長:
約4年半もの長期間にわたり、介護職として被害者を自動車で送迎する機会を利用し、被害者が障害のため抵抗したり、被害を申告できないことに乗じて犯行を繰り返したことは卑劣である。自身の性欲の赴くがままに被害者の身体を弄び、さらにはその様子を撮影し、後で使用するため動画を編集するなど、被害者を性欲のはけ口としてしか見ていない。その人格や尊厳を顧みない犯行であった。被害者は何ら抵抗できないまま多数回にわたり、その都度、性的自由を著しく侵害されたほか、精神的にも大きな苦痛を被った。被害者の親族が厳罰を求めるのも当然と言える。介護職の立場を悪用し、職業倫理に反して犯行を繰り返した点も看過しがたいものと言える。

こう断罪した一方で、自首が成立していること、被告人がスマートフォン等の動画データを削除した経緯はあるものの、それらを隠さずに捜査機関に提出するなどしたことが事案の真相解明に寄与したと認められることに加え、事実を認め反省の態度を示していることなどを考慮した結果、細海被告に懲役14年を言い渡した。

最後に裁判員からの言葉が読み上げられた。

「本件のことにより被害者や被害者家族は一生苦しみ続けます。刑の服役中も含め、一生真摯に反省して、二度と繰り返さないようにしてください。今回の法廷で謝罪文などについては積極性に欠けるものだったと思います。積極的に気持ちも行動もして、反省してほしいです。自分自身で自分を律してコントロールしてほしいです。強い気持ちで自立心を持って生きてほしいです」

最終更新日:Sun, 09 Mar 2025 20:00:00 +0900