
北朝鮮による拉致被害者・横田めぐみさんの父・滋さんが亡くなって、6月5日で5年です。母・早紀江さんが3日に開いた会見で取り出したのは、滋さんが大切にしていたクシでした。
■拉致される前日…めぐみさんが父・滋さんに贈った“クシ”
【めぐみさんの母・横田早紀江さん】
「(心境は)どんなと言われても変わらない。ただ悔しい。解決できない悔しさ」
横田滋さんが亡くなり6月5日で5年となるのを前に、現在の心境を「悔しい」と振り絞った妻・早紀江さん。
その早紀江さんが3日、会見場で取り出したものがありました。
【横田早紀江さん】
「このクシ、お父さんに『オシャレした方がいいよ』とめぐみちゃんがプレゼントしたクシ。もうボロボロになっている。ここの皮がめくれちゃって、どこにでもあるクシだけど、お父さんは大事にしていた。いつもポケットに入れて」
45歳の滋さんの誕生日にめぐみさんが渡したプレゼント。滋さんの誕生日は、めぐみさんが北朝鮮に拉致される前日、11月14日でした。
【横田滋さん(2012年)】
「めぐみがいなくなった前日が私の誕生日。『お父さんもっとおしゃれに気を付けてよ』なんて言って、携帯用のクシを持ってきた。そんなことにまで気が回るようになったのかなと思っていたら、その次の日にいなくなったので」
■日朝首脳会談に意欲も…政府の動き見えず「焦りだけが募る」
娘の帰国を願い、全国を飛び回り訴え続けた滋さんが87歳でこの世を去って6月5日で5年。89歳になった早紀江さんは毎日、滋さんの写真に話しかけているといいます。
【横田早紀江さん】
「お父さんには『本当にダメだよね。全然分からない、動かない』とイライラしながら、頭をなでたりしながら写真に向かってつぶやいている」
事態が動かない中、5月に開かれた国民大集会で日朝首脳会談への意欲を示した石破首相。
【石破首相】
「何としても突破口を開くべく、首脳同士で率直に話し合い、正面から向き合わねばなりません。北朝鮮に対して、これまで行ってきた様々なルートでの働きかけを一層強めてまいります」
しかし…
【横田早紀江さん】
「救出のために動いてくださっている中身が私たちは分からない。政府の動きを家族が知らされることはなく、焦りだけが募っていく」
■「こんなになるまで…」めぐみさんに伝えたい“滋さんの思い”
今年2月には、拉致被害者・有本恵子さんの父・明弘さんが亡くなり、帰国を果たせていない拉致被害者の親世代は早紀江さんのみに。
【横田早紀江さん】
「私も会えるかどうか分からないと思っている。会いたいけどね」
娘との再会へ時間がないという切迫感を抱えながらも、早紀江さんには、めぐみさんに伝えたいことがあります。
【横田早紀江さん】
「(めぐみさんが)帰ってきたら喜ぶと思う。『お父さん、こんなになるまで(クシを)持っていたよ』と、いつも胸に入れて銀行に通って、とかしていたんだよと言ってあげようと思って、とってある」
めぐみさんにその言葉を届けることで、人生の半分を救出活動に捧げた滋さんの思いに報いたいと早紀江さんは考えています。
最終更新日:Tue, 03 Jun 2025 18:52:41 +0900