

新潟市の動物病院で日々奮闘する獣医師の姿を取材。22歳の超高齢猫の診察から、爪楊枝を誤飲した犬の緊急処置まで、ペットと飼い主に寄り添う獣医師の仕事とは。
■早朝から始まる命のケア

新潟市西区にある「たけペットクリニック」。診察が始まる30分ほど前から、獣医師たちの仕事は始まっていた。
「入院中の動物たちの体温や体重を測って状態を確認したり、検査をする時間」とクリニックの高地毅院長は話す。
この日は肝臓の悪い18歳の犬が点滴を受けていた。動物病院に来る患者の多くが高齢の犬や猫で、獣医師の役割はますます重要になっている。
■言葉を話せない患者との向き合い方

外来診察が始まると、足に異常がある13歳の小型犬がやってきた。
「前足に何か症状が出た時、首に問題がある場合があります」高地院長は慎重に診察し、丁寧に飼い主に説明する。
人間と違い、痛みや症状を直接聞くことができないため、獣医師は触診や反応から判断するのだ。
■22歳の超高齢猫との最期の時間

午後からの診察では急遽、推定22歳の超高齢猫が飼い主に連れられてきた。目は見えず、認知機能も低下している。「この猫は捨て猫だった。20年以上一緒にいる。それだけ一緒にいると子どもを育てたのと同じ。やっぱり最後まで面倒見ないといけない。それは使命です」と飼い主は話す。
飼い主から症状を聞いて検査をすると高地院長は、検査結果を示しながら飼い主に説明をする。「検査でMRIを撮るが、猫の場合は麻酔をしなくてはならない。だが、超高齢のため治療の選択肢が少ない」
超高齢の猫に対して、どこまで検査や治療を行うべきか、飼い主に慎重に話をしていた。
「もしかするとそろそろ寿命というか、最後のお別れのタイミングが来るというのを薄々感じつつ、でも最後まで一緒に寄り添いたいという気持ちを飼い主さんから感じる。お手伝いできることがあれば、しんどくないようにしてあげられるという話は一応した。いざとなったらクリニックに来てもらえたら」
高地院長は動物の命に向き合いながら、飼い主の気持ちにも向き合い寄り添っていた。
■夜間の救急医療を支える使命感

クリニックの診療が終わった夕方、高地院長が向かったのは新潟市中央区の「動物夜間休日センター」
ここは、動物に関する専門学校で、授業が終わった夜間や休日は診療所となる。7年前、高地院長が中心となって立ち上げ、県内の獣医師や看護師が当番制で夜間・休日の診療に対応している。
取材したこの日、受付開始の午後8時半を過ぎると電話が鳴り、一気に6件の予約が入った。
■緊急事態!爪楊枝を飲み込んだ2歳の犬

夜間センターに運ばれてきた2歳の犬。誤って爪楊枝を飲み込んでしまったのだとか。高地院長の処置で飲み込んだものを吐かせ、無事に爪楊枝を取り出すことができた。
飼い主は「夜まで診察があって本当に嬉しかった、ありがたかったです」と安堵の表情を見せた。針やおもちゃ、犬が食べてはいけないチョコレートやブドウ等を飲み込んだとやってくる患者が多いのだとか。
■日付が変わる頃、ようやく一日の終わり

「12時半まで電話受付をして、診察自体は1時で終了」日付が変わった頃、ようやく高地院長の仕事が終了した。
朝から深夜まで、休む間もなく動物たちの命と向き合う高地院長。その原動力を聞いてみると…「治療で治ったと結果が出てくると、自分のやったことが成果として現れたという喜びもある。また、連れてくる飼い主さんが、笑顔になったり、喜んでくれるところにもやりがいを感じる部分が多い」
「根本には、何かしてあげたいとか、使命感みたいなものがあるのではないかと思う」
言葉を話せない動物たちの体調を読み取り、最適な治療を施す。そして飼い主の不安に寄り添い、時には厳しい現実も伝える。獣医師の仕事は、動物と人間の架け橋となる尊い使命なのかもしれない。