【田中角栄 #1】元首相が人生で最も緊張した「新潟県人会」での挨拶…その理由とは?約50年の時を経て振り返る田中角栄×山岡荘八

1974年9月、内閣総理大臣に就任して約2年を迎えた田中角栄氏が、全国から武道館に集まった新潟県人大会で語った「五つの大切なこと」と「十の反省」。戦後、日本が物質的には成長したものの、精神的には未熟だと指摘される中で、田中氏が国民に、そしてふるさとの人々に示そうとした人間の条件である。
第65代内閣総理大臣 田中角栄氏

1974年9月、内閣総理大臣に就任して約2年を迎えた田中角栄氏が、全国から武道館に集まった新潟県人大会で語った「五つの大切なこと」と「十の反省」。戦後、日本が物質的には成長したものの、精神的には未熟だと指摘される中で、田中氏が国民に、そしてふるさとの人々に示そうとした人間の条件である。
当時、大河小説『徳川家康』で知られ、新潟県人会の会長でもあった作家・山岡荘八氏と真剣に語り合った田中氏。約50年の時を経て、田中氏が当時語っていたことをシリーズで振り返る。(全6回/1回目)

■「五切十省」という言葉に込められた思い

作家・山岡荘八氏

山岡荘八:
「実は私、あなたに県民大会でお会いした時、『五切十省』という話が出るとは全然思っていなかったんです。もう少し固い政治の話が出るんじゃないかと。全国から新潟県人が集まっていましたからね。あの時、あの話をされた時に本当にびっくりしたんですよ。」

田中角栄:
「ちょうど総理大臣になってから約2年ですしね。30年近い代議士生活を続けてきて、武道館がいっぱいになった。全国に散らばっている新潟県人という、その真ん中に立った時には、一番緊張しましたよ」

田中氏は、武道館で原稿を読んだことに驚いた人もいたと振り返る。しかし、それは「最も真面目な姿勢」で、心の底から激励してもらっている新潟県人の前では「嘘も言えない、大きなことも言えない」という覚悟の表れだった。

田中角栄:
「あれは、私の一生を通じての最大の感激でしょうな。だから一番小さい声で話したんです」

■「五切十省」ーー人間の条件としての普遍性

東京・砂防会館にて収録

その新潟県人会で田中氏が話していたのが、「五つの大切なこと」と「十の反省」を意味する「五切十省」についてだ。

山岡荘八:
「これは別に、我々が総理に言われるまでもなく、人間の条件なんですね。世界どこの国でも同じだろうと思うんですよ。なるほど、こういう話が今日出てくるとは思わなかったな、と。」

山岡氏は、「五切十省」が単なる政治的メッセージではなく、個人の生活にも当てはまる普遍的な価値だと受け止めた。「俺はいくつやっているかな?」と自問し、「人間が本当に反省もできるし、明日を考えられるんだな」と感じたという。

田中角栄:
「戦後、家憲とか『何々訓』とかいうものが受け取られにくい時代になった。頭でっかちで物質的には大きくなったけれど、精神的には全く未熟だと言われている。そこで、お互いの生活の中で、夫婦でも兄弟でも、集落の中でも、小学校や中学校の日常の生活の中でも、必要なものを『大切』とか『反省』という素直な言葉で表せないかと考えたんです」

田中氏は、「五切十省」をきっかけとして、政治の責任の中で精神的な価値を果たしていかなければならないと語った。

動画の本編はコチラ

最終更新日:Sat, 27 Dec 2025 19:00:00 +0900