

新潟県長岡市に暮らす高校生の石原花音さんは中学2年の頃、学校へ行くことが辛くなり不登校になった。辛い時期、言葉にならない感情を子どもの頃から好きだった絵で表現してきた。そんな石原さんの個展が、新潟県長岡市で開かれた。石原さんの創作活動や個展の様子を取材した。
■17歳の初個展

ノスタルジーとファンタジーが入り混じったような世界が、画面いっぱいに広がっている。近づけばまた別の世界が現れ、見る者は思わず前のめりになる。
「見飽きない、何回も見たくなる」
観客のそんな声が、会場に静かに響いた。
2025年12月、新潟県長岡市摂田屋にある発酵ミュージアム米蔵で、一人の高校生の個展が開かれた。作者は長岡市に暮らす高校生の石原花音さん17歳。
「今回が個展が初めてで、自分でも感動している」と感慨深い表情を浮かべた。

画用紙を埋め尽くすように、細いペンで緻密に線が描き込まれた作品の数々。
石原さんは、大きな絵でも画用紙の隅から描き始め、描きながら世界を広げていくという独特の創作スタイルをとる。
「端から描いていって、描きながら何描こうかなっていうのは決めていく感じです。喜び以外に不安など前向きではない感情も絵にしている」
■学校へ行けなくなった中学生

石原さんが絵を自分を表現する手段として描き始めたのは、中学校に通い始めてからのことだった。
「中学2年生のはじめから、順位とか点数とか数字だけで人を見ていいのかなみたいな思いもあって、それでなんか行けなくなりました」

点数や順位で評価される学校の仕組みに強い違和感を覚えた石原さんは、やがて学校へ行くことが辛くなり、不登校になった。
母親の留美子さんにとっても、それは「すごく切ない」時間だったという。そんな娘のほっとできる時間が絵を描くことだった。
子どもの頃から好きだった絵を、気分転換に描き始めた石原さんは、やがてそこに感情を注ぎ込むようになっていった。
「学校に行けない思いとか、その言葉にならないような感情を絵に表していました」
■「もっと花音さんの絵が見たい」個展の実現

絵に力を注ごうと、石原さんは通信制の高校に進学した。
そして25年春、転機が訪れる。発酵ミュージアム米蔵を運営するミライ発酵本舗の神林美夏さんが、石原さんの作品を目にしたことで初めての個展が実現した。
神林さんは「どんどん絵の中にストーリーがあるというか、純粋に私がもっと花音さんの絵を見たいっていうのも、結構大きかったと思います」と語る。
石原さんも「絵で表現できることが、すごい自分にとって大切なことなので、それで認められるというか、それが一番うれしかったです」と笑顔を見せた。
緻密に描き出す世界が広がるように、少しずつ石原さんの心も前に進み始めた。
母の留美子さんも「笑顔が多くなり、生き生きしている」と娘の変化を実感していた。
■中学の担任との思いがけない再会

個展の会場には、思いがけない再会も待っていた。
石原さんが中学生のときに担任だった中村浩士先生が会場を訪れていたのだ。
中村先生は「すごいね。このスケール感を聞いてはいたけど、初めて見たので圧倒されました」と石原さんに声をかけた。
不登校だった教え子が絵に込めた思いを目の当たりにして、先生は静かに言った。
「自分でちゃんと進んでたんだなっていうのを、見て感じることができてうれしいなと思います」
■「学校行かなくなってなかったら、こうなってなかった」

個展の後日、石原さんの自宅には孫の肖像画を依頼した女性が訪れた。
絵を受け取った女性は、孫の顔の雰囲気まで捉えた仕上がりに「本当によくできてるのがうれしい。うれしい、本当にうれしいよ」と涙を浮かべた。

娘のこれまでの道のりを留美子さんはこう語る。
「あのときは辛かったけど、学校行かなくなって…そうなってなかったらこうなってなかったから、結果的にほんとよかった」
つまずいて立ち上がる…
「描き続けててよかったなって思うのと、これからも描いていきたいなって思っています」
痛みを知る線が描き出す世界は、優しさと喜びを静かに伝え続けている。
最終更新日:Thu, 02 Apr 2026 05:00:00 +0900



