インラインアルペンで世界選手権へ
長岡市を拠点に小学生から高校生までが所属する「長岡アルペンジュニア」。
冬の間はアルペンスキーを練習しているが、オフシーズンになるとスキー板を縦一列に車輪が並んだインラインスケートに履き替え、“インラインアルペン”の練習に励む。
アルペンスキーで国体の県代表選手だった長岡アルペンジュニアの高橋祐一ヘッドコーチは「夏のアルペンスキーの練習として、インラインスケートを取り入れた。バランス感覚を子どものうちに養うことは大事」と話す。
「ポールの手前で足を押すことで体が前に進み、スピードアップができる。橋本さんはそこがきちんとできている」と高橋ヘッドコーチが実力を評価するのは、帝京長岡高校1年の橋本朋弥さん(15)だ。
「インラインスケートはスキーのように長くないので、少しの前後のバランスで転んだりする。バランスのトレーニングになる」と話す橋本さんは、7月にスペインで開かれたインラインアルペンの世界選手権で、2人が同時にスタートし着順を競う「パラレルスラローム」のジュニア部門に日本代表として出場。
地元スペイン代表選手に勝ち、決勝へと駒を進めたのだ。
往復40kmを自転車で…「時間を無駄にしない」
7月16日朝、自宅から練習場所にしている長岡市営スキー場までの約20kmの道を自転車で向かう橋本さんの姿があった。自転車で通う理由について、橋本さんは「自転車は心肺機能や脚力をつけるためにやっている。海外の選手に身体能力で追いつくためには、少しでも時間を無駄にしないようにしないと勝てない」と話す。
橋本さんがスキーの練習として初めてインラインスケートに触れたのは小学3年生のころ。はじめは高橋ヘッドコーチの腕につかまり、立つのがやっとの状態。
当時については「何回やっても転んで。ずっと転んでいた」と話す橋本さん。高橋ヘッドコーチも、橋本さんが「世界で戦う選手になるとは全然思わなかった」と笑って話す。
そんな橋本さんがインラインアルペンで日本代表に選ばれるまでに成長できた理由は、その努力にあると高橋ヘッドコーチは話す。
「今も毎日、朝6時から雨の日も練習している。努力も才能の一つだと思う」
橋本さんは小学生から高校生になる今もほぼ毎日、学校が始まる前にインラインスケートの練習をしている。
練習のため、仕事の前に練習場所まで車で道具を運ぶのは父・一範さん。「朝の練習は習慣になっている。終わると私は会社に行き、息子は自転車で学校に行く」とすでに2人の日課になっているようだ。
世界選手権ではパラレルスラロームのジュニア部門で決勝まで進出。橋本さんはイタリアの代表選手と優勝を争った。惜しくも決勝では敗れたが、世界選手権で銀メダルを手にした。
次の目標は「シニアで金メダル」
練習に励む長岡アルペンジュニアの仲間たちに銀メダルの報告をした橋本さん。仲間たちも「メダルを見てすごくかっこいいと思った」「朋弥さんも頑張っているので、私も頑張らなきゃなと思った」と橋本さんの活躍に刺激を受けているようだ。
7月30日にはラトビアで開催されるワールドカップに出場する橋本さんだが、自分の練習は後回し…年下のチームメートを積極的に指導していた。「僕の練習はコーチが時間を削って教えてくれていた。その分、僕も小さい子に教えてあげたい」とその理由を話す橋本さん。
父・一範さんも「教えることで自分の理解が深まることもある。そういう点では、他の子どもたちに教えるということは、技術への理解を深めるのに非常に役立っていると思う」と話す。
インラインアルペン日本代表チームの現役選手でもある高橋ヘッドコーチは「ジュニアでの銀メダルなので、ぜひシニア部門で世界一、金メダルをとっていただきたいなと」と橋本さんのさらなる飛躍に期待を寄せている。
アルペンスキーとインラインアルペンの二刀流で世界へ!世界大会での「金メダル」を目指す橋本さんの挑戦は続く。