限界集落をバージョンアップ!
山あいに25世帯51人が暮らす新潟県胎内市大長谷集落。畑で仕事をしていたのはこの集落に暮らす武藤千代さん(83)だ。
武藤千代さん:
大長谷集落はあまりに山の中で、若い人はみんな出て行く
大長谷集落は住民の半数以上が65歳を過ぎ、共同生活が困難になりつつある“限界集落”だ。
2023年9月、武藤さんをはじめ集落に暮らす女性が公民館に集まり、紐にカラフルな布を付ける作業をしていた。
これは大長谷集落で初めて開かれる「フェス」で飾られるということだが…?
Q.「フェス」という言葉を知っている?
集落の人:
フェスなんてわからない
「フェス」という言葉に馴染みの少ない大長谷集落の人たち。
実は、大長谷集落でのフェスを企画して会場を彩る旗・ガーランドの制作を依頼したのは、新潟市中央区に暮らす渡辺和輝さん(26)だ。
渡辺和輝さん:
子どもの頃から「ぼくのなつやすみ」というテレビゲームが大好きで、田舎の風景に関心がある。限界集落という土地でも人は集められるはず。
渡辺さんが初めて主催する「オオナガタニ2.0フェス」。
渡辺和輝さん:
今までの大長谷を1.0とみなして、今回のフェスを通して2.0にバージョンアップできれば
若い人たちの協力で「フェス」実現へ
この日、渡辺さんは集落の人にフェスの一部を味わってもらおうと、村上市の職員で元力士の臥牛山さんを招いた。
フェスで販売するちゃんこ鍋を一足早く集落の人に味わってもらう。
集落の人:
美味しい
大長谷区長の羽田又男さん(76)も笑顔でちゃんこ鍋を味わう。
羽田又男さん:
ちゃんこ鍋はフェスの目玉商品になると思う
試食に集まった住民は高齢者ばかり。限界集落の現実だ。
羽田又男さん:
若い人が住むまででなくても、ちょくちょく足を運んでくれるだけでも嬉しい
10月9日、胎内市にあるドライフラワー店で開かれたイベントに、コーヒーを販売する渡辺さんの姿があった。
渡辺さんは店舗を持たずにイベントや許可を受けた場所でコーヒーを販売する事業を展開。初めて主催するフェスは、これまでに出店した場所で出会ったキッチンカーの業者などに協力してもらい実現した。
青空に大長谷集落の女性たちが作ったガーランドが彩りを添えた2023年10月14日。「オオナガタニ2.0フェス」当日だ。
渡辺和輝さん:
大長谷集落を彩りたい
住民の3倍に当たる150人の来場を予想する渡辺さんだが、区長の羽田さんには不安も…。
羽田又男さん:
はたしてどういう人が来るのか…集落の人は戸惑っているところもある
限界集落の住民の20倍の人が!
シャボン玉パフォーマンスに飲食や雑貨の販売…限界集落でのフェスが始まった。
集落の人:
あんまり人が多くてたまげたわ!
集落の外から多くの人が訪れたフェスの来場者は、想定を大きく上回り、住民の約20倍・1000人を超えた!
臥牛山さんによるちゃんこ鍋は、行列が出来るほどの人気に!
集落の人もみんなでちゃんこ鍋を味わって笑顔!
渡辺和輝さん:
いろんな出店者さんたちがSNSで拡散してくれたり、想像以上だった
開場前に不安を話していた区長の羽田さんが、渡辺さんに歩み寄って…
羽田又男さん:
これは“限界集落”じゃない!
渡辺和輝さん:
これこそ、今までの1.0から2.0にバージョンアップした集落を、一日だけ見せられたと思う
賑やかな限界集落は、一瞬だけ…
渡辺和輝さん:
大長谷集落が変化しようとするときの、小さな一歩にはなったと思うので、今年は成功だと思う
限界集落に外からの風が混ざって生まれたフェスは、優しい一日だった。