クマ出没特別警報を発表するも相次ぐ被害
新潟県内で相次ぐクマの出没。
新潟県が10月、クマ出没特別警報を発表し、警戒を呼びかけたが、11月6日には新発田市で40代の男性がクマに顔と背中を引っかかれ、重傷を負うなど事態は深刻だ。
被害防止のため集落で緊急点検
そんな中、柿の木にはクマの鋭い爪の痕が残るなど、クマの痕跡が見られる長岡市栃尾地域で集落緊急点検が行われた。
この点検は、クマの出没が相次ぐ地域の状況を把握して、今後の被害防止に役立てようと、長岡市が実施したもので、栃尾地区の2つの集落で見回りが行われた。
集落を歩くと、民家の菜園にクマの足跡が。クマは夜中に現れたとみられていて、当時、防犯用のライトが点滅したという。庭の所有者は「防犯用の電気がパッとついて…嫌だ」と語る。
この女性はクマを恐れ、深夜早朝の外出を避けているという。「朝は7時近くまで新聞を取らない」
すでにクマが頻繁に現れた形跡も
11月8日までに新潟県内ではクマの目撃・被害件数は合わせて1130件報告されていて、長岡市栃尾地域では10月末までに62件に上っている。
長岡市農林水産部の佐々木秀俊課長は「柿の実がなりっぱなしという部分がある。早めの収穫処分をしていただきたい」と注意を促す。
「果樹」の処分に注意!
佐々木課長も話す、注意点の一つが「果樹」。
2023年はクマのエサとなる木の実が凶作で、県をはじめ、行政はクマのエサとなる柿の実などを処分してほしいと呼びかけているが、地権者の同意がないと果樹の処分ができないため、地域も苦慮している。
補助金活用呼びかけるも…整備進まず
放置された柿の木には、クマが頻繁に現れた形跡があった。
クマが柿の木の枝を集めて作る「クマ棚」と呼ばれる足場も。地元の区長は「すでにクマの縄張りになっているのではないか」と今後の出没を懸念する。
また、北荷頃集落では、耕作放棄地の増加でクマが身をひそめられるヤブが広がり、行動範囲がさらに広がる恐れもあるという。
佐々木課長は「対策としては柿の木の伐採。ヤブ払いへ協力していただきたい。市の補助金を使いながら、ぜひ一緒に対応していければ」と話す。
長岡市は果樹の伐採やヤブの整備に補助金を出し、地域ぐるみの対策を呼びかけているが、区長は「長岡市の方に申請しているのだが、そういう制度を今後もっと拡充していただければありがたい」と要望する。
というのも、北荷頃集落では3年前から柿の木の伐採に補助金を利用しているが、補助額は1つの地区につき、年間5万円と決まっているため、整備が進まないのが現状だ。
クマは雪が降るまで寝ない⁉気象状況も影響
さらに、ことしは心配な点もある。
クマは本来、11月下旬ごろには冬眠に入るはずだが、長岡技術科学大学の山本麻希准教授は「エサがない時は、ずっとエサを探して寝ない」とクマの出没の長期化を懸念する。
加えて、この長期化に気象状況も影響を及ぼすと指摘する。「なかなか雪が降らないと、いつまでも諦めきれずに寝ないクマが出ることもある。ことしは暖冬・少雪と言われているので、最初の雪がドンと降るまでは、しばらくクマの出没は警戒したほうがいいと思う」
まだまだ緩めることができないクマへの警戒。さらなる被害を予防するため、地域と行政が一体となった対策が必要といえそうだ。