酒米高騰に地域医療…地方の課題にどう対応?酒蔵支援や佐渡市外に通院する患者への補助金など…9月補正予算案の総額68億円規模に「物価高騰などに支援」【新潟県知事会見・詳報】

新潟県は9月25日、9月補正予算案を発表した。総額68億3900万円のうち、約8億8000万円はエネルギ-価格・物価高騰の影響を受ける事業者への支援に充てられた。この中では、新潟県が誇る「日本酒」を製造する酒蔵への支援など、酒米価格高騰の影響を配慮する事業も盛り込まれている。

9月補正予算案について

25日に開かれた知事会見で、9月補正予算案についてコメントした花角知事。

「9月30日から始まる県議会で9月補正予算案を提出する予定。内容について簡単に確認すると、総額は68億3900万円。その考え方として、まずは近年のエネルギー価格・物価高騰の影響を受けている事業者等への支援。2つ目は、この夏の渇水や8月初めの大雨等に対応した災害対応に要する経費。3番目は、当初予算編成後の事由による緊急性のある事業だということ」

「新潟の大きな魅力」酒蔵の酒米購入支援に3億7000万円を計上

9月補正予算案には、酒米の高騰の影響を受ける酒蔵支援に、約3億7000万円が盛り込まれた。2025年産の酒米価格は2024年産の1.5倍に高騰。県は、60キロあたり3500円程を上限に、県内でとれた酒米の購入金額の一部を補助する。その理由についても知事会見で以下のやりとりがあった。

花角知事:

「酒造業界から本当に強い要望があった。また、新潟清酒は県の最も重要な魅力の1つだと思っている。大事にしていきたい産業でもある。そこは、必要な支援をしっかりしていこうと思っている」

Q山形県なども酒米高騰を受け酒蔵を支援。支援のタイミングについて

「新潟が様子を見ていたわけではないが、検討が進んだのが、このタイミングだということ。2025年産と2024年産の購入価格の差を支援していくという発想は多くの県に共通していると思うが、どのくらいの予算規模になるになるか…新潟はとにかく酒蔵が多いし、特定名称酒、吟醸酒などがが非常に多い県。特定名称酒に関して言えば日本一の生産量。そういう意味で、色んな予算の金額や検討をした結果が今のタイミングということだと思う」

Q加工用米の価格高騰について

「色んな要望を聞いているが、加工用米に関して言うと色んな支援手段はある。政府の備蓄米も放出されている。その中で、直接の支援は酒米にはない。そういう意味で、今回、酒蔵に対しての支援を補正予算に盛り込んだ。ただ、これは未来永劫、こういう支援の形をとっていくことは難しいと思っている。いずれ自立…つまり、購入価格を酒蔵が許容できる金額に上げていくことが必要なんだと思う。生産者もこれだけ主食用米が上がっていると、酒米を作ろうという意欲が落ちてしまう。そこのところの激変を調整する・緩和するのが今回の支援制度。やはり当座の間の支援だと思う」

佐渡総合病院ががん患者のための放射線治療終了へ患者の交通費補助に約200万円

また、JA新潟厚生連が運営する佐渡総合病院が、2025年度末でがん患者に対する放射線治療を経営上の理由から終了する。これを受け、9月補正予算案では、島外に通院する患者の交通費の補助事業として、約207万円を盛り込んだ。

花角知事:

「(放射線治療を行うための)移動に時間とコストを使うところを支援していく。分娩施設の集約が進んでいる中で、出産・分娩のために離れた市町村に所在している分娩施設に行かなくてはいけない方への支援なども始まっているが、発想としては同様のものだと思う」

Q医療の地域差について

「地域による差については、例に出すのは恐縮だが、村上市も非常に広く、旧朝日村や旧山北町などに住んでいる方は、分娩施設にアクセスしようとするとかなりの時間を要する。そこは大なり小なり、自分のすぐ横に常に病院があるわけではないので一定程度の不便さはある。特に時間、お金がかかる例はある。離島について言えば、自分の足では動けず、船が必要になるということで、アクセス上の困難…困難というものではないかもしれないが、時間とコストがかかるという中、そこは佐渡市と一緒に支援していこうということだと思っている。先ほどから申し上げている通り、分娩施設等ですでにやってきていることなので、離れているところに治療に行かなければならない方々への支援は、今後もどういう事態が起きるか分からないが、同じ発想で支援していきたい」

Q離れていても安心して医療が得られる環境について

「まさにそういう環境を作っていきたいという中で、その対策の一環。現実には離島に限らず、不便な地域に住んでいる方がいるのも事実。質の高い医療を安心して受けられる環境を構築していかなければならないと思っている」

鳥獣保護管理法改正を受け市町村の訓練・防護用具購入に約500万円

25年9月、鳥獣保護管理法が改正され、クマなどが出没した際に市町村の判断で市街地で猟銃を使用することが可能になった。これを受け、訓練の実施費用など安全な現場対応への支援として、9月補正予算案には500万円あまりを計上している。

花角知事:

「クマ被害については、新潟にとどまらず全国で被害が増えている。鳥獣保護管理法が改正され、緊急時には市街地でも猟銃が使えるようになった。それを受けて、適正な管理を進めなくてはいけないという思いはある。特にイノシシは、どんどん生息域が北上していて、かつてはイノシシが住めなかった雪国でも温暖化の影響か増えている中で、農業被害が非常に増えている。2024年度の数字が出ているが(2024年度イノシシによる農業被害額:約1億2400万円)、ここは早急に対応しなくてはいけないと思っている」

9月補正予算案や柏崎刈羽原発の再稼働問題などを議論する9月県議会は、9月30日に開会する。