茶畑を守る男性は茶摘み歴2年目
商業的な茶の産地としては、全国で最も北に位置する村上市。5月、新茶の摘み取りが行われていた。
中村達男さん:
村上茶は北の北限で育つので、限界のおいしさを出してくれる
こう村上茶の特長を話してくれたのは中村達男さん(62)。実はまだ、茶摘み歴2年目の駆け出しなのだとか。
中村達男さん:
私は新参者。叔父がずっと茶畑を守ってきた
村上市瀬波で明治元年から緑茶の製造・販売をしている「北精園」。
2022年6月に中村さんの叔父から茶畑の一部や店舗などを買い取り、廃業寸前だった事業を引き継いだ。
中村達男さん:
引き継いだ事業は利益がほとんどなく、赤字のような状況だった
ペットボトルの緑茶が普及し、新型コロナウイルスの影響で仏事が縮小するなど贈答品としての需要も減る中、叔父の茶づくりを見てきた中村さんには湧き上がる思いがあった。
中村達男さん:
うちの茶畑を私が守らなければどうなるんだろうと思って
中村さん支えるモデルとIT企業の娘2人
女性:
今までのパッケージがこれなんですけど、今の人のライフスタイルを考えると…
事業の立て直しへ、新しいパッケージを導入することに。提案をする2人の女性は?
中村達男さん:
私の娘たち
歯科衛生士をしながらモデルもしている長女の春菜さんとIT企業に勤める次女の綾夏さんが創業150年以上の店に新しい風を吹きこむ手助けをしている。
中村さんの長女 春菜さん:
62歳の父親がいつまでも挑戦する気持ちを忘れない。すごくエネルギッシュな父を尊敬して手伝いたいと思った
そもそも中村さんは、店舗のタイル工事を請け負う会社の代表。
中村達男さん:
店舗の工事が新型コロナウイルスの影響を受けて減った。お茶屋のことを少し考えられる時間になった
建設関係の仕事が減る一方で、村上茶の事業を引き継いだ中村さん。
2年目の新茶の摘み取りには長女の春菜さんも仕事の合間を縫って手伝ってくれるが…
中村さんの長女 春菜さん:
ああ、ビックリした!虫が突然来たので
春菜さんは虫が苦手。それでも父親を応援したい思いがあった。
(Q.娘と一緒に仕事ができるのはどう?)
中村達男さん:
う~ん、まぁまぁ、はい…
中村さんの長女 春菜さん:
絶対うれしいはずなのに。「うれしい」と顔に書いてある
摘み取った茶葉はすぐに製茶工場へ。機械の使い方も業者から教わり、中村さんが使いこなす。
できたばかりの新茶は?
中村達男さん:
おいしい。北限の厳しい自然の中で育った茶葉にだけある甘みだと思う
娘たちは「新たな新茶の顔」開拓へ
それぞれ仕事を持ちながら父親を支える長女と次女も新茶で何やら。
中村さんの長女 春菜さん:
どんな感じでハチミツがとけていくのか見てみたい…
2人はフレーバーやミルクなどを加え、新しい緑茶の楽しみ方を研究。SNSでの発信や体験会を開くなどして新たな顧客の開拓を目指して活動している。
中村さんの次女 綾夏さん:
父はおいしいお茶を目指して工場に立っている。娘だからできる視点で新しい日本茶の顔を開拓する
村上のお茶文化を未来へ
中村さんが話を聞いていたのは、村上の歴史を研究する地域の人。
地元の歴史を研究 小嶋幸一さん:
昔の資料にも「お茶はお金を稼ぐ大事な手段」だったと
北前船を研究 小嶋三郎さん:
歴史を望んで来る観光客も多いと思う。観光客が増えると活性化につながる
中村達男さん:
歴史とどういうふうな立ち位置でここの茶畑が育ってきたかというのを振り返って、この先、守っていければいい
伝統文化を守る父親と新しい挑戦を楽しむ娘たち…北限の厳しい環境で育つ茶葉は今年も甘く優しい味わいだ。