「マラソン大会のキャッチコピーを」“チャットGPT”が10秒で10個のアイデア!行政導入に3つの可能性【新潟市】

神奈川県横須賀市や茨城県つくば市が先行して導入するなど、対話型AI「チャットGPT」は行政の仕事でも存在感を示し始めている。新潟市は6月、チャットGPTを使った業務を試験的に開始。わずか10秒で10個のキャッチコピーが生み出されるなど、職員からは驚きの声が上がった。

チャットGPTの回答に驚く職員

新潟市の中原八一市長が定例会見で発表していたチャットGPTの試行利用。

新潟市 中原八一 市長:
チャットGPTには課題もあるが、できることも大変多い。課題を徐々に小さくしていって、有効活用していける部分を広げていくという意味では、役所も躊躇せず試行的にやっていく意義は大きいのではないか

チャットGPTの試行利用は、全庁から手を挙げた約200人の職員(83課の20代~50代)により行われる。

試行初日の6月12日には、新潟市役所で報道陣にデモンストレーションとして、チャットGPT導入の様子が公開された。

新潟市役所

デモンストレーションでは「市主催のマラソン大会のキャッチコピーを10個考える」という業務を依頼。

すると、わずか10秒で10個のキャッチコピーが提案された。

1.「未来へ疾走せよ! 新潟マラソンで元気を育もう」
2.「太陽の下、新潟で爽快走行! みんなで汗を流そう」
3.「新潟の陽光が背中を押す! 元気に駆け抜ける未来へのマラソン」

などと続く。

チャットGPTの回答

新潟市デジタル行政推進課職員:
あっという間に10個挙がってびっくりしているし、私たちが思いつかない視点でも回答を出してくれるので便利だと思う

新潟市デジタル行政推進課職員

この職員は「チャットGPTが提案したキャッチコピーの一つ、『走り抜けよう新潟の太陽と未来への架け橋』の中の“架け橋”というフレーズは自分では思いつかない…」と驚いた様子だ。

 

同時に「他のイベントで似たようなキャッチコピーがすでに存在していないかどうか」を調べることで、著作権の侵害を防ぐ必要があると確認した。

続いて、チャットGPTにマラソン大会の参加者を募る文章を作成してもらう。すると今度は、20秒以内で文章案が作成された。

新潟市デジタル行政推進課職員:
人間が作ったら、これだけで半日費やすこともあると思う。たたき台としてはすごいなと思う

新潟市デジタル行政推進課職員

新潟市は個人情報を入力しないこと、AIの学習機能をオフにすることを徹底し、懸念される情報の流出は防ぐ方針だ。

“チャットGPT”で行政に3つの可能性

人工知能に詳しく、新潟市の試行利用にアドバイザーとして携わる事業創造大学院大学の黒田達也副学長も、行政がチャットGPTを導入する上で重要なのは情報管理だと強調する。

事業創造大学院大学 産官学連携担当 黒田達也 副学長:
チャットGPTは「オープンAI」という民間の会社のサービス。行政は市民のプライバシーの情報や行政間の機微情報を持っているので、それらが流出しないように細心の注意を払う必要がある。横須賀市やつくば市がかなり積極的にチャットGPTを採用しているので、そういったノウハウは自治体同士で共有化されていくのではないか。とは言え、情報は現場から漏れるので、それぞれの現場でも十分に研究して徹底することが重要。そうしないと、様々な予想外の問題がおこる危険性もある。また、生成AIが発展すると、その分、フェイクデータも出てくる恐れがある。人間の目でデータの真偽を最終チェックすることが肝要

また、黒田副学長はチャットGPTを行政が活用することの可能性を3つのポイントで語った。

事業創造大学院大学 産官学連携担当 黒田達也 副学長:
なんと言っても様々な業務の効率化が図られる。まずは、文章の作成が楽になる。多少、事実が違っていたり誤変換があったりするが、そこは職員がチェックして修正すれば短時間で文章を作成できる。これまでの半分、あるいは4分の1の時間で行政文書が作れるというのは大きい。ただ、行政特有の言葉の言い回しがあるだろうから、用語を学習させて自治体向けのチャットGPTにカスタマイズしていく必要はある。そうすれば、どんどん学習していくので、スピードも早くなるし、間違いも少なくなる

〈2〉アイデア出し

事業創造大学院大学 産官学連携担当 黒田達也 副学長:
チャットGPTは幅広いデータベースから様々なアイデアを出してくれる。「行政サービスでこんなことをしたい」という大まかな質問でも、10項目くらいポイントを出してくれるので「こんな発想もあったのか」と驚くこともあるだろう。行政の持つ情報・感覚だけではなく、多様な価値観・多様な情報から幅広い知見を集めることができる。庁舎にいながらにして、そうした情報と触れあえるのは利点

〈3〉将来的には市民の窓口に?

新潟市の試行利用は内部事務に限って行われているが、黒田副学長は将来的にチャットGPTが市民サービスに直接携わり、力を発揮する可能性があると話す。

事業創造大学院大学 産官学連携担当 黒田達也 副学長:
市役所には市民から様々な要望・質問が寄せられると思うが、一つ一つ市役所職員が対応するのは時間がかかる。最新のチャットGPTは、音声を文章化し、その文章を要約して整理できるので、市民の要望をカテゴリー別にまとめることができる。そうすれば、職員が介在しなくても、24時間にわたって市民の声を受け入れることができる。また、判然としない質問が寄せられとしても、市民を色んな係にたらい回しすることなく、適切な係に直接つないでくれる可能性がある

行政のDX導入「温かく見守って」

黒田副学長がチャットGPTの行政使用の成功において、もう一つ挙げたポイントは「市民の見守る姿勢」だ。

事業創造大学院大学 産官学連携担当 黒田達也 副学長:
日本人は、行政のやることは完璧であるべきだと思いがちだが、チャットGPTが本格的に導入されれば、文章の中に多少の間違いを目にすることも出てくるかもしれない。そこは批判するばかりではなく、市役所がリスクをとってDX化にチャレンジしていることを応援する姿勢を持って、温かく見守っていくことも必要だと思う

チャットGPTの導入は、行政の仕事の質を高め、市民生活の向上に寄与するものとなるのか…新潟市は年内いっぱいをめどに試行利用を続ける。