過疎化進む地域の“里の駅” 交流通して再発見した魅力も!「苔がお金になるとは…」

新潟県胎内市の過疎化が進む里山の集落で、地域の人が協力して運営する「里の駅」がある。そこでは、住民が持ち寄った野菜などが販売されている。地域を少しでも元気にしようという取り組みを取材した。

販売する商品は住民が持ち込み

山の自然に囲まれ、270人ほどが暮らす胎内市坂井集落。

坂井集落 坂上良夫 区長:
坂井集落の人口は100人くらい減った。昔は370人くらい暮らしていた

胎内市坂井集落

坂井集落の区長・坂上良夫さん(69)。

坂井集落 坂上良夫 区長:
何か仕掛けをつくらないと、集落が暗くなっていく

坂井集落 坂上良夫 区長

ある日曜日の朝、坂上区長が手にしていたのは…

坂井集落 坂上良夫 区長:
これは苔。今は世の中、非常に忙しいものだから、苔を見て癒やされてもらおうと販売している

坂井集落の入口では、日曜日の朝に野菜などを持ち寄る住民の姿が。

住民:
朝、収穫したもの。おいしいですよ

6年ほど前に始まった坂井集落に暮らす人たちが日曜日の午前に育てた野菜などを持ち寄って販売する「里の駅いちべえ」。

「里の駅いちべえ」

住民:
いっぱい作るけど、食べられなくて余ってしまうので安くする

値段は商品を持って来た人が自由に設定。

午前9時、開店時間になると新鮮な野菜を求めてお客さんが詰めかける。

客:
その日にとれたものが販売されているのでおいしい

客:
やっぱり安い

接客する増子キミイさんは80歳。

増子キミイさん

増子さんの畑に案内してもらうと…

増子キミイさん:
水がきれいなので、野菜がおいしくなる

増子さんの畑

トマトにナスやタマネギ・サヤエンドウなど、増子さんは春から秋まで里の駅で販売する野菜が途切れないよう育てている。

増子キミイさん:
皆さんに喜んでもらえるといいなと思って。そのためにいっぱい作る

増子さんの畑

増子さんは積極的にお客さんに話しかけ、時には調理方法も伝授。

増子キミイさん:
これは味噌汁がいい

袋いっぱいに買い物をしてお値段は?

客:
これで600円!安い

増子キミイさん:
若い人と交流するのが楽しい

苔を商品化!「お金になるとは…」

区長の坂上さんと一緒に苔を見る女性は集落に眠る宝を教えてくれた人。

朽網裕子さん:
胎内市には苔がたくさんあることを知って、商売ができるんじゃないかと考えた

朽網裕子さん

2021年まで地域おこし協力隊として坂井集落に暮らしながら活動してきた朽網裕子さんは、2018年に苔を育て商品化する事業を集落の人と立ち上げた。

坂井集落 坂上良夫 区長:
苔なんて田んぼや山に行くといっぱいある。苔がお金になるとは夢にも思わなかった

区長が案内してくれたのは、苔を育てている圃場。集落に暮らす6人で「坂井苔人」として造園業者などに販売している。

朽網裕子さん:
苔が売れると、「これも宝になる」という夢が地域に出てくる

パン店はじめた女性 住民もお手伝い

一方、「里の駅いちべえ」に車でやってきた小貫佳余さんは荷台にパンを並べ始めた。

坂井集落 坂上良夫 区長:
2年間、地域おこし協力隊として頑張ってくれた。本人がパン店をやりたいということで

小貫佳余さん

小貫さんは2023年1月まで坂井集落に暮らしながら地域おこし協力隊として活動。5月から念願のパン店を移動販売という形で実現した。

小貫佳余さん:
坂井集落はすごく元気がある。いちべえも自分たちの力でやっているので、そこを見習っている部分もある。私も負けずに頑張っているよと

パン店で袋詰めを手伝うのは集落に暮らす76歳の中村徹さん。

小貫佳余さん:
坂井集落のお父さんという感じ

中村徹さん:
人が引っ越してくると、にぎやかでいい

袋詰めを手伝う中村徹さん

小貫佳余さん:
何かをしに行こうと思っていたのに、結局もともと住んでいる人たちに元気や優しさをいただくことが多い

地域の食材生かした食事も

地域の人と外からの人が交流する場には魅力がもう一つ。

坂井集落周辺で栽培されるソバを提供する「そば処いちべえ」を併設。

「そば処いちべえ」

地元産のソバはもちろん、山菜や野草の天ぷらで集落の自然を味わえる。

ドクダミの天ぷら、その味は?

客:
クセがなく、さっぱりしておいしい

ドクダミの天ぷら

地域の宝を探して磨いて…

坂井集落 坂上良夫 区長:
まだまだ坂井集落には資源があるので、集落の人が元気になるような新しいものを見つける

地域の人が喜んで参加する仕掛けをつくり、地域の外の人にも楽しんでもらう。里の駅では、協力し合う心に笑顔が広がる。