初出場狙う東京学館新潟と12回目狙う中越が対戦
甲子園初出場を目指す東京学館新潟と、県内最多タイとなる12回目の甲子園出場を目指す中越の対戦となった決勝戦。
試合は初回、中越が3本のヒットでチャンスをつくると、山井祐希主将のセカンドゴロの間に中越が先制点を奪う。
中越は、3回にも2アウト1・2塁のチャンスで7番・村井がレフト線への2塁打を放ち、4-0とリードを広げる。
喜ぶ観客の中には、2021年時のキャプテン・鷲沢皇源さんの姿があった。
2020年、夏の大会の中止が決まり、涙した当時の選手たち。その後、開かれた独自大会で優勝した。鷲沢さんの代は2021年こそと意気込み、最後の夏の大会を迎えた。
しかし、生徒の新型コロナウイルス感染が確認されたことで、チームは大会を出場辞退。鷲沢さんの代は戦うことなく、高校野球を引退した。
決勝の舞台で戦う後輩たちを目の前に、「一日でも長く大好きな野球をやってほしい」と鷲沢さんは懸命に声を出して応援していた。
大会に出場できなかった鷲沢さんの代を当時1年生ながら見ていたのが現3年生だ。山井主将は試合前にも「出場辞退した先輩たちの思いも背負って頑張りたい」と強い思いを語っていた。
劇的なドラマは終盤に…
4点リードで迎えた5回。初の甲子園を目指す学館が反撃に出る。
8番・森田がピッチャー強襲のヒットで出塁すると、代打・鈴木がセンターオーバーの3塁打で1点を返す。
その後も打線がつながり、1番・佐藤、4番・遠藤のタイムリーヒットで一挙3得点。
試合はその後、両チーム1点を加え、中越の1点リードで9回を迎えた。
中越はこの回からマウンドに上がった学館の4番手・込山を攻め、1アウト満塁のチャンスをつくるが、4番・野本が三振。5番・山井がレフトフライに倒れ、追加点を奪えず。
すると9回ウラ、流れは学館に傾く。1アウトからヒットで出塁した4番・遠藤を2塁に進めると、途中出場の近藤がセンター前ヒットを放ち、土壇場で同点に。
なおも続く、サヨナラのチャンス。ここで、中越はエース・野本が再びマウンドへ上がる。
中越のエースで4番、大黒柱としてチームを引っ張ってきた野本。この日投じた119球目は、森田のバットに当たり、左中間へ落ちた。
2塁ランナーがホームへ返り、東京学館新潟が逆転サヨナラ勝ちで初の甲子園出場を決めた。
“新時代”を作った東京学館新潟 初の甲子園へ
先輩の思いも胸に臨んだ中越ナインは、あと一歩甲子園に届かなかった。
試合後、中越の山井主将は「色んな先輩方からも応援されていたので、本当に申し訳ない」と涙ながらに語った。そして、「本当にあっという間だった。成長できたなと思う2年半だった」と、新型コロナウイルスに奔走されながらも、最後まで戦い切れた夏を振り返った。
一方で、創部40年で甲子園初出場の壁を乗り越えた東京学館新潟。「新時代」をテーマに掲げてきたチームは劇的な勝利で新たな歴史をつくった。
東京学館新潟の八幡康生主将は「甲子園は新チーム当初からずっと目標にしていたので、それが達成できてとてもうれしい。新潟県代表として恥のないように、自分たちの持っている力をすべて出し切って甲子園でプレーしてきたい」と語り、新潟県内79校の思いを胸に初の甲子園に挑む。