「デートレイプドラッグ」その手口は…
8月1日午前、白髪混じりの長髪の男が法廷に現れた。
「準強制性行等」など、5つの事件・4つの罪で起訴されている、東京都八王子の会社員・須藤浩志被告(48)だ。
起訴状などによると、須藤被告は2019年11月、東京都立川市の居酒屋で20代の女性に睡眠作用のある薬を混入したアルコール飲料を飲ませて抵抗できない状態にし、ホテルに連れ込んでみだらな行為した罪などに問われている。
須藤被告による事件の被害者は4人。いずれも20代の女性だ。須藤被告は自身の年齢を10歳以上若く偽った上で、マッチングアプリを通じて女性たちと知り合っていた。
事件は2019年と2021年に計4回発生していて、いずれも睡眠作用のある「ゾルピデム」を混ぜたアルコール飲料を女性に飲ませていた。いわゆる「デートレイプドラッグ」だ。
起訴された事件以外にも…検察側「再犯の恐れ大きい」
1日の公判では、論告と最終弁論が行われた。
検察側は須藤被告の犯行について、「女性の人格や尊厳を踏みにじる、卑劣極まりないもののほかなく、極めて悪質である」と主張。須藤被告があらかじめホテルを予約していたことや、睡眠薬を用意していたこと、取り調べの中で、起訴された事件以外にも犯行を繰り返していたと須藤被告が供述したことから、「計画的かつ常習的な犯行」と主張した。
また、それぞれの被害者は、被害時の様子がフラッシュバックしたり、体調不良で出勤できなくなったりするなど、精神的・肉体的なダメージを受けていることから、その結果は重大であるとした。
一方、起訴前に犯行を否認したり黙秘したりしていたという須藤被告について、検察側は、規範意識が欠如していて再犯に及ぶ恐れは大きく、改善更生への道は遠いと主張。現在、全国でデートレイプドラッグの被害が多発していることを受け、「一般予防の見地からも厳罰をもって臨む必要がある」と訴えた。
そして最後に、検察側は「被告人の刑事責任は非常に重いというべきであり、自らの罪の重さを自覚させるとともに、相当長時間、矯正施設に収容して、徹底した教育を行うことが必要である」と話し、懲役18年を求刑した。
これに対し、弁護側は「被告人は公訴事実を現時点で全て認めた上で反省している」と訴えた。
また、今回の事件は、新型コロナウイルス禍で在宅ワークが多くなっていた中、出張などが自由にでき、家族などの目につかない時間の確保が容易だったことから起こした犯行であると主張。
感染禍も収まり、会社に通勤するなどして時間が管理されるようになれば、犯行を行うことは難しくなるほか、須藤被告の兄が今後生活を監視すると約束していることからも、再犯を防止する効果は期待できるとした。そして、被害者の一人には被害弁償を行っているとし、寛大な判決を求めた。
最終弁論後、裁判長から証言台へと立つよう促された須藤被告。最後に何か言いたいことがあるかと問われると、須藤被告は「この度は、私のせいで被害者の方々を深く傷つけてしまったことに申し訳ない気持ちでいっぱいです。ただただ、深くお詫びしたい気持ちでいっぱいです」と絞り出すような声で話した。
判決は、9月8日に言い渡される予定だ。