人力で約8トンの土を固める!
長岡場所が開かれる前日の午前10時前、会場で始まったのは土俵づくり。ホールの中央には土が盛られ、職人などスタッフがならしていた。
巡業の場合、土俵は木製の枠に土を盛り、つくられる。その量は約8トン。
相撲部屋に所属し、相撲興行の業務を専門に担う「呼出(よびだし)」を中心に土をならし、踏んで固めるが、もちろんそれだけではない。
出てきたのは、「小タコ」と呼ばれる専用の道具。
記者が持ち上げてみると…「両手でもずっしりと重みを感じる。これを細かく、上げ下げして土を固めていくということで大変な作業」と、その大変さを実感した。
土俵を何往復もして平らにしていくと、続いては「大タタキ」という道具を使い、力いっぱい土を叩き、さらに引き締めていく。
汗がにじみ、疲れの色が見えてくるが、呼出の正男さんは「やわらかいと足をケガしてしまうので、これが一番重要な作業」と話し、入念に土を固めていた。
土俵際では“フレアボトル”が活躍
しっかり土が固まると、次は土俵の境界線をつくる俵を円を描くように埋めていく。土俵際の攻防を支える重要な作業のため、ぐらつきなどがないよう正確に埋めなければならない。
ちなみに、ここで俵の形を整えたり、その周りを固めたりするために呼出たちが持っていたのはフレアボトル。正男さんは「バーテンダーが練習に使う瓶。本当はビール瓶だけど、グリップも持ちやすくて良い」と話す。
形や大きさが丁度良いとしてビール瓶を使うのが伝統だが、最近はより頑丈なバーテンダー用のフレアボトルを用いることもあるそうだ。
こうした職人の工夫や努力の末、午後3時、土俵づくりがほぼ完了。翌日には、この土俵を舞台に力士がぶつかり合う。
日本相撲協会の小野川親方(元北太樹)は「本当に手作り。機械的なものじゃなくて、昔から同じ作り方をしている。そういう職人の技が詰まった土俵なので、そういったところも見てほしい」と話していた。