交流人口拡大に期待も“認知度”低く…
札幌市にある札幌丘珠空港に設置されていたのは、新潟空港を拠点とする格安航空会社トキエアのカウンターだ。
今年3月に国土交通省から航空運送事業の許可を得て、新潟・札幌丘珠線の就航を目指すトキエア。
国内線における航空会社の新規参入は、大手傘下や外資系を除けば14年ぶりで、期待を寄せるのは新潟県民だけではない。
札幌丘珠空港ビルの菅原直樹総務部長は「北海道圏と新潟エリアの方々が結ばれるということは、本当にマーケットとして非常に大きい」と話す。
本州のほか、道内5つの空港を結び、地元民の足としての役割が大きい札幌丘珠空港。
利用者数は、新型コロナウイルスの感染拡大時を除き増加傾向で、新潟とつながることでさらなる交流人口の拡大が期待される。
菅原総務部長は「北海道は飛行機の経験がやっぱり多いエリアなのかなと思う。当たり前になっているので、飛行機への抵抗感は全くない。『いつから就航ですか?』『予約はどのようにされますか?』という問い合わせが当社に入ってきているので、やはり新潟に行きたいという方々は非常に多いと思う」と話す。
そこで、丘珠空港を利用する人にトキエアについて聞いてみると…
(Q.トキエアは知っている?)
利用客:
聞いたことはあるけど、正式なものは分からない。私も仕事上、新潟へ行くことがあるので、できれば使いたいとは思う
(Q.新潟と丘珠がつながることは知っている?)
利用客:
知らなかった
(Q.トキエアという会社名、聞いたことは?)
利用客:
ないですね
道内でのトキエアの認知度はまだ低いようだ。また、新潟の印象を聞いてみると…
利用客:
雪が多いとか、”きりたんぽ”とか。あ、これ秋田でしたっけ?間違えた…。 あんまり分からない
菅原総務部長は「北海道も広いから、北海道民も北海道で少し満足しているところもある。札幌の方がまず新潟の魅力を知って、おいしいもの、観光も含めてもっともっと認知できれば、トキエア・新潟県の認知度も上がってくる」と話した。
“W輸送”に期待「新鮮な食材手に入る」
こうした中、就航を応援する動きもある。8月、札幌市のホテルで新潟フェアが開催されていた。
札幌パークホテルの舟橋裕司統括総料理長は「新潟の食材と北海道の食材を交流させることで、お互いの食文化をもう一回見つめ直して、さらなる交流の発展を促したい」と開催の狙いを説明する。
新潟の食材を使った料理や日本酒を提供し、就航より一足先に新潟の魅力を堪能できるイベント。ランチでは新潟のナスと枝豆に北海道のベーコンを使ったパスタが提供された。
舟橋総料理長は「枝豆はやっぱりおいしい。ちょうど私が行ったとき初物だった」と笑顔を見せた。
今年5月に新潟で食材選びをし、その魅力を実感したという舟橋総料理長。期待を寄せるのは、トキエアが目指す旅客と貨物のW輸送だ。「サザエやブリ、そういった食材はやはり新潟のほうが優れていると思う。新潟の食材は我々が手に入れるときも、一回、東京に入ってしまうので、ダイレクトに届いて、鮮度がよくて価格的にも非常にメリットを感じている」
度重なる就航延期… PR不足も課題に
当初、「新潟フェア」は6月末とされていた就航予定に合わせて、7月に行う計画だったという。
しかし、国による審査の遅れなどを理由に8月10日・下旬と度々就航予定が延びたため、フェア自体も8月に延期。さらに、台風の影響で8月下旬の就航もかなわず、先行きが不透明なままフェアは終了してしまった。
こうした状況に、新潟県とPR活動を進める札幌市の小澤宏亘空港担当課長は「就航に期待をしている皆さんからは、やっぱりがっかりしているというようなご意見もいただいている。PRという部分も遅れているので、これをどのように改善していくかというのは一つ課題だと思う」と話した。
食や雪など北海道とアピールポイントが似ている新潟県。道民が魅力を感じるのは新潟の歴史や文化だと小澤空港担当課長は話す。「古町とかもあると思うので、北前船とかそういった歴史もしっかりPRしていきたい。これが一つのきっかけで経済の活性化とか、あるいは文化的な交流とかが生まれてくるので、やはりしっかりと路線をまず安全につなげていただきたい」
県を越えて期待を背負うトキエア。就航準備は最終段階に入ったと言うが、利用客の確保に向け、新潟をいかに売り込むのか、そのPRには課題が残っている。