福島の水族館 バショウカジキ求め佐渡へ
佐渡市相川地区達者の沖合に向かう漁船。狙うのは、水揚げの最盛期を迎えている「バショウカジキ」だ。中には、体長2m~3mの大物も。
こうした中、大物には目をくれず、漁師たちにまじって小型のバショウカジキを探していたのは、福島県の水族館「アクアマリンふくしま」のスタッフ。
飼育展示部の藤井健一上席技師は「世界中の他の水族館では展示されたことがない。背びれを広げると、とても美しい魚なので、子どもたちに見てもらいたい」と話す。
絶滅危惧種に指定されているバショウカジキ。アクアマリンふくしまは、2018年から佐渡市の越前水産の協力のもと、バショウカジキを捕獲している。
将来的には人工ふ化を目指しているが、捕獲と輸送にも高いハードルがある。藤井上席技師は「体表がすごくデリケートなので、丁寧にとらないと傷ついてしまう。漁師さんに意見をいただきながら、網の改良とか、取り上げ方とか、みんなで意見を出し合いながら、工夫してやっている」と話す。
一方で、協力する漁師・越前水産の庄司洋平大船頭は「捕獲は大変難しいということだったので、ぜひ協力したいなと。最初から僕は乗り気だった」と、この仕事を粋に感じていた。
捕獲難しいバショウカジキ 展示にも苦労
この日は、大粒の雨が打ち付ける中での漁だったが、1mほどの生きたバショウカジキの捕獲に成功した。
藤井上席技師は「これからトラックに積み込んだり、また福島まで長い距離。安心して戻れるように頑張る」と、気を引き締める。
港に戻り行われたのは、大型トレーラーに慎重に移し替える作業。しかし、このあと、トレーラーの中でバショウカジキが衰弱しているのが確認されたという。
2018年からアクアマリンふくしまのチームに加わっている佐渡市・尖閣湾揚島水族館の元館長、佐藤義寿さんは「水槽に入れて、なんとか年を越す。年を越せば、1年もってもらいたい。水族館はその繰り返し」と展示後の難しさについて口にしていた。
9月21日も早朝から捕獲に臨んでいたアクアマリンふくしまのスタッフと漁師たち。
バショウカジキ漁は10月上旬まで。佐渡の海を舞台にした水族館の挑戦は続く。