結成10周年の劇団 舞台を通して青春を!“部活”をテーマに奮闘「子どもたちに疑似体験を」

障害がある人もない人も、みんなで輝く舞台をつくりたい…結成10周年をむかえた新潟市の市民劇団を取材した。今回、披露される舞台のテーマは“部活”。テーマ設定の背景には、特別支援学校にはない“部活”を舞台を通して疑似体験してもらいたいとの思いが込められていた。

劇団は“部活”の疑似体験の場

2023年9月の公演に向けて練習をしていたのは、障害がある若者と保護者を中心にした「劇団わくわく」だ。

団員:
みんなを喜ばせる演劇を見せられるように頑張りたい

2013年の結成から、毎年1年をかけてオリジナルの舞台を完成させてきた「劇団わくわく」は2023年、10周年を迎えた。

劇団わくわく 代表 後藤行子さん:
愛情とか思いやりを全部ひっくるめて“わくわくファミリー”という感じ

劇団わくわく 代表 後藤行子 さん

劇団をファミリーと表現する代表の後藤行子さん。その言葉の重みは練習の中にあった。

舞台の転換で小道具を準備したり、舞台の袖で役者の出番を管理したり、時には緊張する役者を励ますことも。

自分の子どものことだけでなく、みんなで協力して舞台を完成させるのが「劇団わくわく」だ。

親の団員:
自分の子だけでなく、ほかのお子さんのことも考えて、ということができれば、子どももつながっていけるし、親同士もつながっていけるから、より暮らしやすい世界になるかなと思う

公演で披露する演目「青春!山の下学園」は高校のバスケットボール部員が成長していく物語。脚本は、団員で障害がある子どもの親でもある坂詰慎次郎さんが書き上げた。

坂詰慎次郎 さん

坂詰慎次郎さん:
特別支援学校には部活がないので、子ども達に疑似体験を…部活があったらこんな風に過ごしたのかな、こういう青春時代があったのかな…とか感じてほしい

劇団は家庭以外で支え合う場

主役を演じるのは自閉症の近藤弘基さん(29)、バスケ部キャプテンで心臓の病気を抱えた難しい役だ。

近藤弘基 さん

近藤弘基さん:
私ではなく、バスケ部のキャプテンそのものに感じられる演技をしたい

自宅でも団員の母親・珠美さんと稽古を重ねる近藤さんは、市内にある会社で清掃業務をしながら劇団の活動を両立している。

自宅で稽古をする近藤さん

近藤弘基さん:
仕事は厳しいといえば厳しいが、自分で表現できる場所があることがうれしい

近藤弘基さんの母・珠美さん:
一年かけて演目を仕上げるので、観客とは違った感動を、スタッフとして見られるのが楽しい瞬間

近藤さんの母・珠美 さん

その成長を多くの人に発信する劇団わくわくの舞台は、世代や立場を越えて表現を楽しむイベント「あしたの星」の中で披露される。その前日には障害児などの子育て経験者によるトークショーやライブ演奏も行われる予定だ。

演奏の練習風景

そこに参加する障害児心理学が専門の新潟大学の有川宏幸教授は、家庭以外での活動の重要性を指摘する。

新潟大学 有川宏幸 教授

新潟大学 有川宏幸 教授:
障害児を持つ親にとって、自分が亡くなったとき、子どもがどう生きていくか不安だと思う。家庭以外の活動が豊かになると、なにか楽しく暮らしているかもしれない、という想像力を働かせることができ、不安が低減する。この活動のひとつの意味ではないか

そんな「劇団わくわく」には2023年1月、木村健さんとその子どもがファミリーに加わった。

木村健さん:
ダウン症の子どもが生まれたときは、心配だった。この劇団でいろんな人が成長していく姿を見て、これから先も楽しく暮らせそうだなと思う

木村健さんと子ども

劇団わくわく 代表 後藤行子さん:
私たちも歳とるし、子どもたちも大きくなるし、その時に頼れる仲間がいるのが一番いい、お互いに支え合って生きていけたらと思っている

物語のラストにはバスケットボールならではの、観客も役者も予測できない展開が待っている。

坂詰慎次郎さん:
最後に、雌雄を決するのにフリースローをするが、その場で入れば勝ち、入らなければ負け!ガチンコ勝負!

はたして勝敗はいかに!?劇団を通して、それぞれの青春が輝いている。