嗅覚使い活躍!訓練重ねる“災害救助犬”
かけ声とともに林の中へ走り出す1匹の犬。吠える先にいたのは、隠れていた傷病人役の人だ。
十日町市で行われていたのは、「災害救助犬」による行方不明者の捜索訓練。
災害救助犬十日町の高橋隆之隊長は「阪神淡路大震災のときに外国から相当の救助犬が来たり、東日本大震災のときもかけつけたりしていた」と話す。
消防などの要請を受けてボランティアで活動する災害救助犬は、嗅覚を使って災害により、がれきや土砂の中に閉じ込められた人のほか、遭難者などの捜索に携わる。
その称号を得るには、1歳ごろから訓練を重ね、適性検査や審査に受からなければならない。
「災害救助犬十日町」には、現在、災害救助犬3匹やその訓練犬などが在籍している。
日々訓練を行い、人の匂いを頼りに、がれきの中でも人がいることを感知する。飼い主は「この訓練が生かされて、できるだけ早く行方不明者を見つけられたらいいと思っている」と話す。
中越地震で災害救助犬の必要性を実感
一方、こうした訓練に隊員たちが力を入れるきっかけとなったのは、2004年10月23日に発生した中越地震だ。
高橋隊長は「あれから19年というのは、本当に早い。自分の中でも“あの災害”は忘れることはできない」と当時を振り返る。
最大震度7を観測し、十日町市も大きな被害に見舞われた。「犬の保護施設をつくろうということで、テントを7張りから8張り立てて、家族は避難所。犬は私どもの保護センターということで対応させていただいた」
被災者である隊員たちに活動要請はなかったが、一つの映像が鮮明な記憶として刻まれた。崖崩れの現場で当時2歳の男の子が92時間ぶりに助け出された「奇跡の救出」だ。
警視庁から派遣された警備犬が現場で吠えて生存を突き止めたことによるもので、隊員たちは災害への備えと災害救助犬の必要性を改めて実感したという。
高橋隊長も「もどかしいというか初めてのこと。自然災害に対応した活動の捜索要領を勉強し始めたのが、中越地震後の大きな変化」と語る。
中越地震後、訓練では災害時を想定したものに重きをおくようになり、中には2016年の熊本地震などで活動した隊員も。
育成にかかる費用… 大きな負担に
一方、活動に対し、国の補助などはなく、通常の世話に訓練費なども合わせると、1匹あたり1年で100万~200万円程の負担がかかっているのが現状だ。
それでも、隊員は活動を続ける。「やはり行方不明者の家族の犬が発見した場合の喜びというか、これに勝る私どもの感動というかそういうのが忘れられない。少しでも役に立てれば」