新潟市周辺を雪から守る『佐渡ブロック』は実在した! 筑波大学がその存在を証明 きっかけは新潟県出身の学生の体験

新潟市周辺だけ雪が極端に少ない理由として県民の間では昔から「新潟沖にある佐渡が影響しているのではないか?」とまことしやかに語られていた。通称「佐渡ブロック」と呼ばれていたこのウワサを筑波大学計算科学研究センターがデータに基づいて立証した。研究のきっかけになった新潟出身の卒業生に聞いてみた。

日本有数の豪雪地帯である新潟県。しかし県庁所在地・新潟市周辺だけは周辺に比べて意外に降雪が少ないことをご存じだろうか。

Q冬の新潟市のイメージは
街の人:
案外雪が降らない。

Q冬の新潟市のイメージは
街の人:
転勤族が新潟に着任すると、「雪が少なくてびっくり」って、みなさんそういう感想ですね。新潟というと大雪だと思っていたから「少ないね」って。

首都圏では「新潟市も豪雪地帯」と考えている人が多く、雪がそれほど積もらないことをアピールした経験がある新潟市民も少なくないのでは?

去年から新潟市に住む人は:
もともと東京にいたので、ずっと新潟市はすごく雪が積もると思っていたんですけど、思ったほどは降らない。たぶん県外の人は湯沢町と新潟市の印象がが混ざっていて、新潟市でスキーができると思っているのでは。

「新潟市はスキー場が多い湯沢町より北に位置しているから、もっと寒くて雪が多いと思っていた」という声も県外の人からよく聞く感想だ。

新潟市の雪が少ないのは佐渡島がブロックしているから?!

新潟市周辺だけ雪が少ない理由は何なのか…?
昔から県民の間でささやかれているのが「佐渡ブロック」。

日本海からの雪雲を佐渡が壁になりブロック。その結果、新潟市周辺だけが雪が少なくなる現象と言われている。

しかし、あくまでその存在は噂程度でその真偽やメカニズムは十分に調査されてこなかった。

「本当に佐渡ブロックはあった」筑波大学が証明

そうしたなか筑波大学計算科学研究センター(茨城県つくば市)が過去の気象データを検証し「佐渡ブロックは確かに存在する」という研究成果を今年発表したのだ。
(※佐渡島に季節風が吹き付ける事例を対象に調査)

きっかけは気象学が専門の日下博幸教授の研究室に所属していた新潟県出身の学生の体験だった。

矢部優人さん(新潟県加茂市出身):
地元の雪の研究は面白そうだなと思い「佐渡の風下は雪が少ない」という研究をした

加茂市出身の矢部優人さん。大学進学後も新潟の冬について疑問を持っていた。

矢島さん(新潟県加茂市出身):
一般的に新潟市は降雪が少ないと言われているのは新潟県民なら身に覚えがあると思う。その原因について佐渡の影響を明らかにした研究になります。

もし佐渡島が無かったら?

提供 筑波大学 計算科学研究センター

左側が過去の新潟市周辺の降雪量をまとめた資料。新潟市周辺だけ雪が極端に少ない薄い色になっている。

右側はもし佐渡がなかった場合のシュミュレーションデータ。新潟市も他の沿岸部同様に雪がしっかり降っている。

研究によると佐渡の存在により海上から大気への熱や水蒸気の供給量が減少し、新潟市を含む風下の地域の平野の降雪を減少させるのだという。

提供 日本気象協会 tenki.jp 2020年12月17日の雪雲

こちらが「佐渡ブロック」が発生した時の代表的な事例。
佐渡で雪雲が二手に分かれ、新潟市周辺だけを避けるように雪が降っているのがわかる。

矢部優人さん(新潟県加茂市出身):
佐渡島があることで風の影響や水分の供給が失われて、風下では雪が降らなくなるというメカニズム。今までは結構ウワサ程度で「佐渡のせい」と言われていたものが、研究でデータとして出たので、裏付けを得ることができた。

「自然に興味を持ってほしい」

筑波大学大学院を卒業後はIT関連の仕事をしているという矢部さん。故郷で昔から語られていた天気にまつわる噂に関心を持ち地道な研究を積み重ねたことで、新潟県民なら誰しも感じてきた疑問や体験を科学的に証明することにつながった。

矢部優人さん(新潟県加茂市出身):
まずは自然に興味を持つところから始めて、その面白さが一般に伝わってくれれば良い

今回は季節風が佐渡島に吹き付ける事例を対象に調査したため、筑波大学計算科学研究センターでは今後季節風が弱い場合の佐渡島のブロック効果などを課題として挙げている。

毎週日曜午前9:30に放送している『潟ちゅーぶ』では、身近なギモンや気になるウワサを募集中!SNS「#潟ちゅーぶ 」で情報をお寄せ下さい。

■佐渡ブロックの詳しいメカニズムはこちらから(筑波大学 計算科学研究センター)