液状化で1m近く沈み込んだ電柱
新潟市中央区女池3丁目。ある通りに入ると、住宅が傾いたり道路がうねっていたりと、一部に大きな被害が出ている。
本来、目線よりも高い位置に設置されているはずの電柱の住所表示は、地面の近くまでずれ込んでいて、電柱が1m近く沈み込んだことが分かる。
傾いた家…「住んでいて気分が悪い」
住民の佐藤和義さん(85)は、液状化によって自宅が傾く被害に遭った。
自宅の中を見せてもらうと、ふすまの立てつけがゆがみ、支えがないと外れてしまう。
和室を歩くと畳が沈み、その振動で戸棚の中の物が上下に揺れた。
「住んでいて気分の悪さを感じる」と話す佐藤さん。60年前の新潟地震でも同じ場所で液状化被害に遭っている。
「困ったなと思う。この年になって地震に遭ってしまって…。何とか住むことはできるが、今後については独立した子どもたちにも相談しないといけない」と、ため息をついた。
「盛土造成地」危険度は上から2番目…
女池3丁目を含む、女池新栄町第一自治会の久保田富夫会長が、この土地の成り立ちについて教えてくれた。
「私は、ここに住んで60年以上になるけれど、ここは“池の埋め立て地”。だから液状化しやすい。1964年の新潟地震のときも相当すごかった」
久保田さんは住民から能登半島地震の被害について聞き取りをし、地図にまとめていた。
女池3丁目地内では、1月上旬までに少なくとも15棟が罹災証明書の発行を申請したと見ている。
池の埋め立て地だという女池3丁目。
国交省が作成した「液状化しやすさマップ」を見ると、女池3丁目を含む新潟市中央区の広い範囲が“盛土造成地”としてピンク色と黒い点で示されている。危険度は上から2番目の「3」だ。
被害が大きかった理由は「砂の盛り土」
新潟市の場合、この盛土造成地には特有の事情があった。
新潟大学災害・復興科学研究所の卜部厚志教授は、「新潟市の『液状化しやすさマップ』で『盛土造成地』として示されているところは、田んぼのところに“砂”を入れて宅地にしたことを示している」と話す。
なぜ、砂なのか。卜部教授は「新潟市中央区や西区は砂丘地で砂がたくさんある。そのため、新しく土地をつくる際には、緩い地盤の所に砂を入れている。入れた砂の部分が地震によって液状化する可能性は非常に高い」と続けた。
“砂の盛り土”ד池の埋め立て地”に被害集中
新潟市の中でも盛土造成地として示された地域は広くある。それでも、なぜ、中央区では女池3丁目などごく一部の地域に被害が集中したのか。
卜部教授は「かつて池だった土地は盛り土をいっぱいしている。池だった所に砂を入れると砂の層が厚くなって、その分、被害が大きくなったと言える」と指摘。
また、「20年以内に建てられた住宅では地盤に液状化対策を施している場合がある」と前置きした上で、「今後、能登半島地震以上の揺れに見舞われた場合は、盛土造成地のより広い範囲で液状化被害が起きる恐れもある」と警鐘を鳴らした。
「砂の盛土」と液状化の関係性を知った上で、自宅が「液状化しやすさマップ」のどのエリアに該当するのか、より細かに確認する必要がある。